大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・18『加盟校活動報告・4・大阪府立○○高校』

2014-06-26 08:44:38 | 小説4
大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ 
Vol・18『加盟校活動報告・4・大阪府立○○高校』

      

 今日は府立○○高校にお邪魔しました。
 ○○高校は、戦後○○市に府立高校が一つもないことを地元の人らが心配しはってできた、府立高校としては戦後できた学校です。
 ○○高校は、連盟が、まだ研究会というてたころに、副会長さんが出た学校でもあります。

 ※:浪速高等学校演劇研究会=連盟の前身で、運営は全て生徒でやっていて、会長は酒呑童子高校の校長さんでしたが、実際に組織を動かしていたのは、生徒だけで行われる総会の選挙で選ばれる副会長以下の生徒の役員でした。加盟校は50校ほどでしたが、当時の大阪の高校は今の半分ほどしかなかったんで、組織率そのものはあんまりかわりません。

「先生は、地区の役員校やってはるんですね?」
「はい、ちょっとでもお役にたてたらと思いまして。また、勉強にもなりますからね」
「失礼なこと言うようですけど、建前やのうて本音のとこ聞かしてほしいんですけど」
「本音いうと?」
「先生とこ、三年前から部員ゼロでしょ。せやのに連盟に加盟してはるのはなんでかなあと、不躾ですけど思うんです」
「噂には聞いてたけど、真田山は直球やなあ……」

 この間、先生は怒りもせんと、静かに言葉を選んではりました。

「難しい言葉で言うとアイデンティティーかな」
「あ、レーゾンデートルのことですね」
「あは、君らの方がむつかしい言葉知ってるねえ(笑)」

 ここで、また先生は黙った。思慮深い印象が強まる。

「むかし、高校野球の大阪大会で、応援賞もろたことがあるねん。野球部そのものはボロボロの一回戦負けやったけど、応援に来る生徒の数やら、底抜けに明るい応援が評価されてね。うちの生徒は、そういう可能性を持ってると思うねん。もちろんホッタラカシでは出てけえへん。衝動としては持ってると思うねん。その衝動に形と方向つけてやるのが僕の仕事やと思うてる」
「で、生徒がいてへんまま連盟に入ってて、その衝動に形と方向つける道はみつかりました?」
「こんなこと言うたら、年よりくさい思われるかもしれへんけど、こういうことは、直ぐに成果が出てくるもんとちゃうと思うねん。何年かやってるうちに身についてくることもあると思う。じっさい連盟の会議やらコンクールの仕事してて、アドバイスしてもらえることもあるしね」
「先生とこはθ地区やから、御手毬高校とか、京橋学院高校が実力校やと思うんですけど、そういう学校から得られることがある言うことですか?」
「そういうとこからもあるし、他の学校見て参考になることもあるよ」
「失礼ですけど、具体的には、どんなとこですか?」
「……地区は違うけど、連盟の運営委員長の先生の不屈の精神は見習うとこがあると思うた。うちと一緒で部員ゼロからの出発やったけど、夏の間に東京まで生徒連れてワークショップ受けに行って、そこのメソードで、そこそこの芝居作ってコンクールに出てはった。僕は面白い芝居やと思うたけど」
「あ、あれあたしらも観ました。感想は先生とはちがいますけど」
「どんな感想持ったんかな?」

 ちょっと言葉に詰まったけど、言いかけたことなんできちんと言うのが礼儀やと思うた。

「あたしらは、あれは芝居やないと思います。あれは、役者に一定の条件だけ与えといて即興で反応させるエチュ-ド、あるいは、エクササイズです。野球の試合でピッチングやら守備練習見せてるようなもんで、あれは観客に失礼やと思いました。ほんで、舞台に立った子らも、兼業部員……最初は、それでもええと思うんですけど、あの子らコンクール終わったら、さっさと演劇部辞めてしもて、実質は、現在部員ゼロやと聞いてます」
「手厳しいなあ(笑)」
「ちょっと話題は変わりますけど、先生は夏の講習会行かはるんですか?」
「一応は、そのつもりやけど」
「あれ、役にたつと思います?」
「なんか、いちいち引っかかってんねんな」

 先生真顔になってきたけど、あたしは続けました。

「一日だけ運転の講習受けた人の運転する車に乗る気持ちになります?」
「ちょっと、問題のすり替えのように思う」
「先生は、社会科ですよね」
「うん、いま日本史Aと現代社会やってる」
「日本史の授業一年分を一日でやれ言われたら、どないです?」
「いや、せやから、そういうのと講習会はちゃうて」
「どないちゃいますのん?」
「一つは、大勢みんなでやることに意義がある。普段はしょぼいクラブでも大勢でやったら、目に見えへんエモーションを感じられる」
「それて、ほとんど宗教団体ちゃいます? 演技やら劇作は、ほとんどマンツーマン指導でやらんと身に付かへん言うのが、常識です」
「それはやな……」
「ひところ、日本中の学校で『宿泊学習』が流行りました。いま高校でやってるとこほとんどありません。時間と労力だけとられ、結局は一年の学年はじめの大事な時間を無理して、普段の生徒指導が疎かになって、宿泊学習で皮肉なことに生徒に乗り越えられて、手におえんようになるからです。連盟の講習会は連盟が連盟として機能してることを見せるパフォーマンスです。本気で育てよ思うたら、週に一遍でも集めて一年通して指導することです。連盟の中には気ぃついてる人もいてます。せやけど口に出しては言いません。自分で猫の首に鈴を付けるのは嫌ですから」
「君なあ……」

 もう止まらへん。

「それに、ホンマのとこは、連盟にそんな指導ができる先生が居てないからです。本選の芝居の出来見たら分かります」
「ほんまに、なんにも得るもんは無いと思うてんのん?」
「一つだけあります」
「なにや?」
「反面教師……です」

 内容を鑑みて、今回は学校名を伏せさせていただきました。

 文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ) 
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