タキさんの押しつけ映画評
『攻殻機動隊 ARISE 3』
これは悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。
毎度 この作品の映画評を書くのは難しい。
士郎正宗の原作をご存知無い方には、なかなかご理解いただけないからで、それだけ原作の世界観は緻密かつ広く、どこか一カ所をすっ飛ばしても置き去りにされてしまいます。
何も考えず、そのまま受け入れて下さい……とは言いにくい作品なのです。
従って、物語世界を知っている者同士のオタク語りになってしまいます。アニメ作品として、新しい試みや、多彩な表現など、見るべき点は多数ありますが、やはり世界観を共有できてこその楽しみです。こればかりは、ARISEシリーズ1から見るだけでは判りません。せめて、漫画原作“攻殻機動隊1”からのご参加をお願いします。(原作には「1.5」「2」の二冊が他にありますが、とりあえず、これは今の所無視で構いません)
さぁて、原作世界に繋がるエピソードは本作でほぼ出揃いました。
素子は未だに公安9課の外注コンサルタントですが、トグサを除くフルメンバーで攻勢部隊を結成(資金はどうしてるんでしょうねぇ)、逆に9課荒巻に売り込んでいる気配。荒巻からは「メンバーが一人足りない」と指摘されている(荒巻の指摘の根拠が解りにくい)
水絡みのテロ(石油の次は水っていう掴みも、アニメの新視点ではなく、91年の原作世界に登場している)や刑事の爆殺、死んだ筈のテロリストの復活などなど、従来のハードボイルドミステリー仕立てには成っているが、本作のデッカい支柱は素子のロマンス。 原作においても、素子は様々な相手(女性相手も有る)と絡んでいるが、その行為は「たとえ義体であっても、自分は人間なのだ」と確認する為の偏執的行為に見えていた(実にさりげなく、当たり前に描かれてあるだけに、かえってそう感じる。幼児期からずっと義体である彼女~この辺はテレビアニメ「STAND ALONE COMPLEX ①」~には、この欲求は生身の人間以上に強迫観念的です。
少女時代に淡い(しかし、忘れがたい)純愛経験が有るだけに、彼女が求めるものは「心の触れ合いと無条件の信頼関係」SEXの快感は生身の人間以上なので、水に飢える砂漠の旅人のように求めて止まない。本作では、その素子の恋が重要なファクターとして描かれている。義体であるが故の相手の肉体的(?)条件と共通の興味、心の触れあわせ方が語られる。
本作の底にはもう一つ、「人魚姫」の設定が流れている。海の中から陸の世界にこがれ、本当に人間になる為には愛する王子の命を奪わねばならず、果たせずに海の泡と消えて行く。当然、人魚姫は素子、王子は恋人・ホセとしれるが、いかにして究極の選択を迫られるかは本作のストーリーテリングの見せどころです。ただ、この設定は二重に成っていて、ホセは素子の恋人ではあるが、同じように義体……と言う事は、彼も素子と同族であって「陸の王子」たりえない。 ならば、「陸の王子」は一体誰なのか? これが意外や、殆ど生身・既婚・子持ちの
あの人なんだと気付いて「ははぁ~ん」と納得が行きます。
この点、士郎正宗の設定に元々あったものなのか、ウブカタトウのオリジナルなのかはちょっと判断しかねます。おそらくウブカタトウの読み込みなんだと思っています。
この設定、バトーの恋愛経験なんかも見てみたいと思うのですが……思いっきりギャグ漫画にしないと、こりゃあ悲惨な話になりそうですね。バトーが同志愛を超えて、素子を想っているのは周知の事なので、出来ればこれを叶えてやりたい所ながら、物語の先では素子はNETの中に入ってしまう。バトーはどこまでもストイックに心を閉じるしかないんでしょうかねぇ。NET世界での素子の心理ってのは変化したのでしょうか? あくまでも「人間という存在」にこだわりがあってほしいとは思っています。
今シリーズにも「意志を持つA.I.がたびたび登場します、後の「人形使い」登場の布石とも見えます。人間・全身義体・人工知能のせめぎ合いも、本攻殻ワールドの重要なファクターですね。
本作に501部隊のクルツという女性が登場しますが、これがシリーズ②に出てきたA.I.に良く似ています。何か繋がりが在るんでしょうか。素子が引っ越して来た部屋の風景、新浜市の新旧市街の描き分けなど、画から読み取れる情報も多く、尋常ならざる作り込みを感じます。攻殻ワールドへの深い思い入れを全編に感じます。一回や二回見たからといって、到底全て汲み上げられないでしょう。
てな訳で、作画には殆ど文句ないんですが、一点気になったのが目元の影の描き方、リアルに見える部分とやり過ぎに見える所がありました。影の在り無しで人物の性格が急変するように見える所がありました。 後、何故かサイトーが、よく居眠りしてるのは、なんでなんですかねぇ?
さて、本シリーズも9月で終了、④の主要キャラらしき人物も本作に登場しています。さて、一体どんな結末を迎えるのでしょうか。一つの興味は、トグサをチームに加える最終決定がいかにして下されるかであります。
少々寂しい気もしますが、たった今 続きを見たい欲求もあります。ファンなんてのは勝手なもんでありますなぁ。
『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』
7月発売予定。出版社の都合で、また発売が延びました。もうしわけありません。(税込み799円=本体740円+税)
『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』
青雲書房より発売中。大橋むつおの最新小説!
ラノベとして読んでアハハと笑い、ホロリと泣いて、気が付けば演劇部のマネジメントが身に付く! 著者、大橋むつおの高校演劇45年の経験からうまれた、分類不可能な新型高校演劇入門ノベル!
ネット通販ではアマゾンや楽天があります。青雲書房に直接ご注文頂ければ下記の定価でお求めいただけます。
青雲書房直接お申し込みは、下記のお電話かウェブでどうぞ。定価本体1200円+税=1296円。送料無料。
送金は着荷後、同封の〒振替え用紙をご利用ください。
大橋むつお戯曲集『わたし 今日から魔女!?』
高校演劇に適した少人数戯曲集です。神奈川など関東の高校で人気があります。
60分劇5編入り 定価1404円(本体1300円+税)送料無料。
お申込の際は住所・お名前・電話番号をお忘れなく。
青雲書房。 mail:seiun39@k5.dion.ne.jp ℡:03-6677-4351
『攻殻機動隊 ARISE 3』
これは悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。
毎度 この作品の映画評を書くのは難しい。
士郎正宗の原作をご存知無い方には、なかなかご理解いただけないからで、それだけ原作の世界観は緻密かつ広く、どこか一カ所をすっ飛ばしても置き去りにされてしまいます。
何も考えず、そのまま受け入れて下さい……とは言いにくい作品なのです。
従って、物語世界を知っている者同士のオタク語りになってしまいます。アニメ作品として、新しい試みや、多彩な表現など、見るべき点は多数ありますが、やはり世界観を共有できてこその楽しみです。こればかりは、ARISEシリーズ1から見るだけでは判りません。せめて、漫画原作“攻殻機動隊1”からのご参加をお願いします。(原作には「1.5」「2」の二冊が他にありますが、とりあえず、これは今の所無視で構いません)
さぁて、原作世界に繋がるエピソードは本作でほぼ出揃いました。
素子は未だに公安9課の外注コンサルタントですが、トグサを除くフルメンバーで攻勢部隊を結成(資金はどうしてるんでしょうねぇ)、逆に9課荒巻に売り込んでいる気配。荒巻からは「メンバーが一人足りない」と指摘されている(荒巻の指摘の根拠が解りにくい)
水絡みのテロ(石油の次は水っていう掴みも、アニメの新視点ではなく、91年の原作世界に登場している)や刑事の爆殺、死んだ筈のテロリストの復活などなど、従来のハードボイルドミステリー仕立てには成っているが、本作のデッカい支柱は素子のロマンス。 原作においても、素子は様々な相手(女性相手も有る)と絡んでいるが、その行為は「たとえ義体であっても、自分は人間なのだ」と確認する為の偏執的行為に見えていた(実にさりげなく、当たり前に描かれてあるだけに、かえってそう感じる。幼児期からずっと義体である彼女~この辺はテレビアニメ「STAND ALONE COMPLEX ①」~には、この欲求は生身の人間以上に強迫観念的です。
少女時代に淡い(しかし、忘れがたい)純愛経験が有るだけに、彼女が求めるものは「心の触れ合いと無条件の信頼関係」SEXの快感は生身の人間以上なので、水に飢える砂漠の旅人のように求めて止まない。本作では、その素子の恋が重要なファクターとして描かれている。義体であるが故の相手の肉体的(?)条件と共通の興味、心の触れあわせ方が語られる。
本作の底にはもう一つ、「人魚姫」の設定が流れている。海の中から陸の世界にこがれ、本当に人間になる為には愛する王子の命を奪わねばならず、果たせずに海の泡と消えて行く。当然、人魚姫は素子、王子は恋人・ホセとしれるが、いかにして究極の選択を迫られるかは本作のストーリーテリングの見せどころです。ただ、この設定は二重に成っていて、ホセは素子の恋人ではあるが、同じように義体……と言う事は、彼も素子と同族であって「陸の王子」たりえない。 ならば、「陸の王子」は一体誰なのか? これが意外や、殆ど生身・既婚・子持ちの
あの人なんだと気付いて「ははぁ~ん」と納得が行きます。
この点、士郎正宗の設定に元々あったものなのか、ウブカタトウのオリジナルなのかはちょっと判断しかねます。おそらくウブカタトウの読み込みなんだと思っています。
この設定、バトーの恋愛経験なんかも見てみたいと思うのですが……思いっきりギャグ漫画にしないと、こりゃあ悲惨な話になりそうですね。バトーが同志愛を超えて、素子を想っているのは周知の事なので、出来ればこれを叶えてやりたい所ながら、物語の先では素子はNETの中に入ってしまう。バトーはどこまでもストイックに心を閉じるしかないんでしょうかねぇ。NET世界での素子の心理ってのは変化したのでしょうか? あくまでも「人間という存在」にこだわりがあってほしいとは思っています。
今シリーズにも「意志を持つA.I.がたびたび登場します、後の「人形使い」登場の布石とも見えます。人間・全身義体・人工知能のせめぎ合いも、本攻殻ワールドの重要なファクターですね。
本作に501部隊のクルツという女性が登場しますが、これがシリーズ②に出てきたA.I.に良く似ています。何か繋がりが在るんでしょうか。素子が引っ越して来た部屋の風景、新浜市の新旧市街の描き分けなど、画から読み取れる情報も多く、尋常ならざる作り込みを感じます。攻殻ワールドへの深い思い入れを全編に感じます。一回や二回見たからといって、到底全て汲み上げられないでしょう。
てな訳で、作画には殆ど文句ないんですが、一点気になったのが目元の影の描き方、リアルに見える部分とやり過ぎに見える所がありました。影の在り無しで人物の性格が急変するように見える所がありました。 後、何故かサイトーが、よく居眠りしてるのは、なんでなんですかねぇ?
さて、本シリーズも9月で終了、④の主要キャラらしき人物も本作に登場しています。さて、一体どんな結末を迎えるのでしょうか。一つの興味は、トグサをチームに加える最終決定がいかにして下されるかであります。
少々寂しい気もしますが、たった今 続きを見たい欲求もあります。ファンなんてのは勝手なもんでありますなぁ。
『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』
7月発売予定。出版社の都合で、また発売が延びました。もうしわけありません。(税込み799円=本体740円+税)
『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』
青雲書房より発売中。大橋むつおの最新小説!
ラノベとして読んでアハハと笑い、ホロリと泣いて、気が付けば演劇部のマネジメントが身に付く! 著者、大橋むつおの高校演劇45年の経験からうまれた、分類不可能な新型高校演劇入門ノベル!
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大橋むつお戯曲集『わたし 今日から魔女!?』
高校演劇に適した少人数戯曲集です。神奈川など関東の高校で人気があります。
60分劇5編入り 定価1404円(本体1300円+税)送料無料。
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