大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・382『週刊朝日休刊の話題』

2023-01-20 15:16:14 | ノベル

・382

『週刊朝日休刊の話題』さくら    

 

 

 ハ~~~~

 

 お祖父ちゃんがため息ついた。

 なんちゅうか、すでに穴の開いてた風船の口が開いて、盛大な割には勢いのない空気が漏れたような。

「どないしたん、お祖父ちゃん?」

 風呂上がりなんで、頭をガシガシ拭きながらお祖父ちゃんの向かいに座る。

「週刊朝日が無くなんねんて……」

 そう言いながら、うちの後ろを顎でしゃくる。

 振り返るとテレビがユーチューブのモードになってて――「週刊朝日」5月末で休刊――というハッシュタグ。

「え、朝日て、週刊になってたん!?」

 うちは、休刊の文字よりも週刊いう単語にショック!

 年々発行部数が減って経営が苦しいとネットで言われてた朝日新聞、うちは、お寺やけど、珍しいことに朝日新聞はとってない。

 まあ、新聞なんて読まへんけどね。それでも、朝日が大新聞とかクオリティーペーパーとかいうもんや言うことぐらいは知ってる。ネットで、よう言うてるしね。

 その朝日新聞が日刊を止めて週刊になってたいうことに驚いて、その週刊でももたへんようになって、五月からは、とうとう休刊するんか! とビックリしたわけ。

「違うわよ、週刊誌の朝日」

 入れ替わりにお風呂に行こうとしてた留美ちゃんが、あまりのアホさに足を止めて教えてくれる。

「週刊誌のくせにヌードグラビアとか無い週刊誌でなあ」

 缶ビール持って、テイ兄ちゃんが現れる。一本をお祖父ちゃんに渡してテイ位置(お祖父ちゃんの斜め横、定位置と掛けてます)に収まる。

「ほら、女子には檀家さんから貰た水羊羹、どうぞ」

「お、愛い奴じゃぞ諦一は(^▽^)/」

 小さなプラスチックの竹筒に入った水羊羹をくれる。

「せやなあ、電車の中でも広げられる安心の週刊誌やった。お祖父ちゃんが子どもの頃は100万部ぐらい出てたんや」

「お祖父ちゃん、読んでたん?」

「うん、時どきなあ。手軽に話題を拾うのにはええ週刊誌やったさかいなあ」

 坊主は、檀家参りやら法事の時には、話をせなあかん。檀家さんにもいろんな人が居てはるさかい、薄く広く話ができならあかんのやそうです。

「諦一は、しゃべくりのネタとかは、どこで拾うてくるんや?」

「ああ、市政だよりとか、回覧板とか」

「へえ、意外やなあテイ兄ちゃん(^▽^)。ネットのエロ記事とかやと思てた」

「アホか、檀家さんとこで、さくらに言うようなネタで喋れるか」

「あ、ひどいなあ、うちらにはセクハラの下ネタばっかり言うてたわけか」

「面白がって聞いてるのはダレやねん!?」

「あの、週刊朝日で、印象に残った記事はどんなだったんですか?」

 従兄妹同士のエゲツナイ話になる予感がしたのか、軌道修正を計る留美ちゃん。ええ子や(^_^;)。

「せやなあ……倭寇の置き土産とか」

「倭寇って、海賊の倭寇ですよね」

「うん、倭寇がな、中国の南岸とか朝鮮の海岸沿いとかで仕事した後に残していきよるもんがあってん」

「ああ――倭寇参上!――とかの落書きとかじゃないですか? 暴走族とかの落書きをネットで見たことありますけど、けっこう面白かった!」

 留美ちゃんは、意識的か無意識か話題を合わせようとしてる。ええ子や(^_^;)。

「いや、それがなあ、巨大なウンコやねん」

「ウ、ウ〇コ……(=゚Д゚=)」

「ウン、倭寇が去って、船着き場に行くとなあ、大きなぶっとい大蛇がとぐろ巻いたようなウンコが残っててな。こんなごっついウンコ残すのは、どんなごっつい人間やねん!? と、みんなが恐れおののく!」

「アハハハ」

「なに、それ、お祖父ちゃん(≧∇≦)」

「ワハハ、それがなあ、ふっとい竹筒にみんながひり出したウンコを詰めてなあ、ムニュムニュって押し出してこさえるんやてえ」

「あ、こんなふうにか、お祖父ちゃん!」

 ムニュムニュムニュ!

 テイ兄ちゃんは、竹筒を持って水羊羹を押し出しよった!

「ちょっと、風呂上がりの女の子にするような話じゃありませんよ」

 伯母ちゃんが怒ります。

 うちは、お腹抱えて笑ったんやけど、留美ちゃんは真っ赤な顔して俯くだけでした。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか       さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
  • 江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)  
  • さくらをとりまく人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん)
  •   

 

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くノ一その一今のうち・36『初代だからこそ』

2023-01-20 09:30:43 | 小説3

くノ一その一今のうち

36『初代だからこそ』 

 

 

 あ、三村先生!?

 

 服部課長代理と他人の距離を空けてお茶を飲んでいると監督が飛んできた。

「あ、見つかっちゃった(^_^;)」

 白々しく頭を掻く課長代理。

「来られるんでしたら車を用意しましたのに」

「あ、いやいや、気まぐれですから」

「え、ソノッチもいっしょだったの?」

「え、いえ、自分はお茶を買いに来ただけで……」

「こちら『吠えよ剣』の脚本を書いていただいてる三村紘一先生だよ。すみません、まだ新人なもので。まあやの付き人の風間そのです。ごあいさつ!」

「え!?」

 ほんとうにビックリした! なんで課長代理が脚本家!?

 

 理由は課長代理の車の助手席で聞いた。

 なんで、みんなと別行動になったかと言うと、課長代理、いや脚本家の三村紘一が「甲府の周辺を見ておきたいので、助手を貸してもらえませんか?」と監督に頼んで、まあやがOKしたから。

 わたしも、しっかり聞いておきたかったしね。

 

「まあやは、我が徳川物産の最大の存在理由だ」

「ですね、豊臣の血筋を守ることが第一だと社長もおっしゃってました」

「そのためには、まあやの生活そのものをコントロールすることが望ましい。まあやの出るドラマを書けば、まあやの生活の半分以上を掌握できる」

「他にも書いてるんですか?」

「ああ、ペンネームは他にもある」

 ペンネーム? ひょっとして服部半三もペンネーム?

「『吠えよ剣』は今年に入ってからだ、企画は、俺が持ち込んだ」

 そうなんだ、『吠えよ剣』は、ツ-クール26回の企画で、今度の山梨編からツークール目に入るはずだ。

 二つ聞きたいことがあった。

 なんで……聞こうとしたら、車は高速を降りて、三叉路にさしかかっていた。

「どっちにするか……?」

「え、行先決まってないんですか?」

 車は、三叉路を前に路肩に寄って停まってしまった。

「甲府市内か善行寺か……」

「善光寺は困ります! 長野県に行ってしまったら離れすぎです」

 あくまでまやのガードなのだ、そういつまで離れているわけにはいかない。課長代理のくせに何を考えているんだ。

「修業も足りんが勉強も足りんやつだなあ、甲府の近くにも善光寺はあるんだ。ナビを見てみろ」

「え?」

 ……あった。

 ナビの画面をスクロールすると、甲府の東に善光寺という駅とお寺がある。

「信玄が、本家の善行寺からご本尊と宝物をかっさらって作った寺だ。本家善光寺への尊崇の現れと言われているが、あの信玄坊主が、そんな動機だけでやると思うか?」

「あ!?」

「そう、信玄の埋蔵金だ……」

 今度の『吠えよ剣・山梨編』は、千葉周作が幕府から信玄の埋蔵金を探るように言われ、龍馬とさな子を派遣するという話なんだ。

「ほんとうに、あるんですか、埋蔵金?」

「ああ、木下(まあやの鈴木家と並ぶ豊臣の本流)の方でも探りを入れてる。海外進出を目論んでいるんだ、金はいくらあっても足りないだろう」

 草原の国で出し抜かれたのは、ついこないだ。あれだけのことをやるんだ、課長代理の言う通りだろう。

「一つ聞いていいですか?」

「なんだ?」

「なぜ『吠えよ剣』の千葉道場の師範は周作なんですか? 史実では弟の千葉定吉のはずですが」

「ああ、それなあ」

 そこのところがいい加減だから、まあやは、さな子が周作の娘だと勘違いしていたんだ。

「俺は、初代が好きなんだ」

「は?」

「ガンダムとか、AKBとか、みんな初代は伝説めいてかっこいいだろ」

「え?」

 カッコいいが理由? なんか中学生みたいだ。

「豊臣家も初代の秀吉が偉いんだ。徳川家は家康、織田家は信長だろう」

「ええ、まあ……でも、課長代理は十何代目かの服部半蔵じゃないですか」

「俺は、服部半三。ぞうは数字の三だ。家康に取り入った服部半蔵とは違う」

「え、あ……」

 空中に字を書いてみる、蔵と……三……確かに違う。

「確かに、俺は服部半蔵の裔ではあるがな。俺からは別の服部家だと思ってる。だから、俺が初代なんだ」

「なるほど……」

「お前も、ほとんど滅んだ風魔小太郎の裔だろう。自分が初代だと思って切り替えろ。切り替えなければ、豊臣も徳川も服部も風魔も先細りだ」

「は、はい……」

「とりあえずは、目の前の善光寺だ……」

 グルンとハンドルが切られると、木立の向こう、要害山を背景にして甲斐善光寺の屋根が見えてきた。

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
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RE・乃木坂学院高校演劇部物語・90『二直目の不寝番』

2023-01-20 05:51:11 | 青春高校

RE.乃木坂学院高校演劇部物語    

90『二直目の不寝番』 

 


 日夕点呼(ニッセキテンコと読みます。ムズ!)

 わたし達の部屋は、たった三人なので見ればすぐに分かるんだけど、そこは自衛隊。

 部屋の真ん中に、三人並んで、名前を呼ばれる。

「仲まどか隊員!」「はい!」

 てな感じです。夏鈴が、声がナヨってしてるんで叱られる

「声が小さい、もう一度。南夏鈴隊員!」

「は……はひ(>Д<)!」

 夏鈴は叱られたことよりも(夏鈴は学校で叱られ慣れています)叱る大空さんの変貌ぶりに驚いてる。やっぱ本職、勤務と休憩時間じゃ百八十度切り替えている。

―― ハハハ、昔ならビンタがとんでくるとこだよ ――

 乃木坂さんが、面白そうに笑っている。隣りの部屋で、忠クンが同じように叱られてる。

 忠クンは、思いと現実のギャップに若干のショックを受けているみたい。

 それから、明日の朝のためにベッドメイキングを習った。

 ベッドの四隅を三角に折り込まなきゃならなかったり、案外ムズイ。でも説明は一回ぽっきり。

 日夕点呼から、就寝までの十五分のうち十分近くがここまでかかった。

 就寝までの数分間の間に西田さんがベッドメイキングのチェックをしてくれた。ほんの何ミリかの折り込みの違いを修正。

「明日の朝もチェックするが、しっかり覚えておくように」

 西田さんは、そう一言残して行っちゃった。男が、女性の部屋に入るのは禁止なんだそうです。


 ここからは、乃木坂さんが夢の中でしてくれたお話です。


 不寝番の二直目に当たった西田さんは、忠クンといっしょに一直目の企業グル-プさんから、不寝番四点セット(懐中電灯、警棒、警笛、腕章)を引き継ぎ、午前零時から二時までの立ち番。忠クンは、不安と寒さから喋りたげだったけど、西田さんは一喝した。

「不寝番は沈黙!」

 庇のあるところだったので、雪だるまになることはなかったけど、体は芯まで冷えて、忠クンは歯の根も合わないくらい震え、昼間の疲れもあって居眠りし始めた。

 バシッ!

 西田さんの平手打ちがとんだ。

「この雪の中、居眠りしたら凍えて死んでしまうぞ……!」

 それから二十分ほどして、西田さんは気配を感じ、懐中電灯であたりを照らした。

「どうかしましたか……?」

「気配がした……」

 しかし、雪の上には足跡一つない。

「気のせいか……」

 次の瞬間、障害走路場に続く道で、はっきり気配がした。十数名の声が切れ切れに聞こえてくる。

 オッチ、ニ、オッチ、ニ、ソ-レ……オッチ、ニ、ソ-レ……

「おまえはここにいろ」

 忠クンにそう命ずると、西田さんは声の方向に駆け出した!

 

☆ 主な登場人物

  • 仲 まどか       乃木坂学院高校一年生 演劇部
  • 坂東はるか       真田山学院高校二年生 演劇部 まどかの幼なじみ
  • 芹沢 潤香       乃木坂学院高校三年生 演劇部
  • 芹沢 紀香       潤香の姉
  • 貴崎 マリ       乃木坂学院高校 演劇部顧問
  • 貴崎 サキ       貴崎マリの妹
  • 大久保忠知       青山学園一年生 まどかの男友達
  • 武藤 里沙       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 南  夏鈴       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 山崎先輩        乃木坂学院高校二年生 演劇部部長
  • 峰岸先輩        乃木坂学院高校三年生 演劇部前部長
  • 高橋 誠司       城中地区予選の審査員 貴崎マリの先輩
  • 柚木先生        乃木坂学院高校 演劇部副顧問
  • 乃木坂さん       談話室の幽霊
  • まどかの家族      父 母(恭子) 兄 祖父 祖母
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