大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 105『茶姫 信長のクラスに入る』

2023-01-27 11:41:17 | ノベル2

ら 信長転生記

105『茶姫 信長のクラスに入る』茶姫 

 

 

「みんな、お早う。今朝は、まず転校生を紹介するところからね。入ってちょうだい」

 

 先生の言葉はたった三秒で終わって、手招きされる。

 入り口を入って、教室のみんなに尻を向けないようにしてドアを閉め、前を向いて一礼。

 カクカクと音がしている、先生が見かけによらない力強い筆致で―― 曹 茶姫 ――と書いてくれた。

「じゃ、簡単に自己紹介してちょうだい」

 教壇に上がってさらに一礼、ほんの四寸あまりの教壇なのだが、新参者が高いところから挨拶すると言うのは面映ゆい。

 三国志では、新参者が壇と名のつく高みに登って挨拶するなどあり得ないことだ。

 七つの歳で、公的に初謁見する時、兄の曹操は三跪九拝の礼をわたしに強いた。

 ほんの昨日までは「兄上、負けたのだからお馬さんになりなさい!」と双六の罰ゲームを命じると「敵わねえなあ(^_^;)」と言いながら、でも喜んでわたしを乗せて子供部屋を走っていた。それが、十何段だかの壇の上から見下ろして「面を上げよ」って言われるまで顔を上げることもできなかった。

 次兄の曹素は、あまりに緊張しすぎて小便を漏らしていたぞ。

 扶桑と言うのは、なんと垣根の低いことか。

「学園との両属になりますが、今日からお世話になります。先生が書いてくださった名前でお分かりだと思いますが、わたしは、三国志は魏の曹操の妹です。もとより、三国志は扶桑の宿敵。様々な思いがあることでしょうが、しばらくの間、いっしょに机を並べることを許していただければ幸いです」

 少し深く60度の礼。三国志では同輩よりも微妙に上に対する礼だ。

 少し狎れすぎたか…………やはり礼は教壇から下りてすべきだったか?

 

 …………なんだ、この戸惑いの空気は?

 

「少し硬いよ、茶姫」

 窓側の列から声が上がる。チラ見すると、双ヶ岡で赤備えの軍団を引き連れて出迎えてくれた武田信玄だ。

 肉置き(ししおき)のいい健康女子は、甲冑を制服に着替えても押し出しがいい。

「制服着たら、同じ仲間なんだからさ、気楽にいこうよ。信長なんか「今日から世話になる、織田信長だ」だけだったぞ」

「ム、『よろしくな』も言ったぞ」

「ハハ、そうだったか。まあ、その程度でいいさ」

「そ、そうなのか、痛み入る(;'∀')」

「それよりも……」

 メゾソプラノのいい声は上杉謙信か。

「信玄は『サキ』と呼んでいるいるけど『チャキ』とも読めるし、まあ『チャヒメ』はないだろうけど、なんと読んだらいいのかしら?」

「国では『チャア ジェン』だったけど、扶桑の読み方でいいです」

「チャアジェン……なんだか、丹下チャジェンと言ってしまいそうだ」

「アハハ、信玄さん、丹下佐膳なんてレトロなギャグかましても分からないわよ( ´∀` )」

「もとはと言えば、先生がルビを振らないからだ」

「ごめんごめん、わたしは、ずっと『曹さん』て読んでたから。テヘペロ」

「あ、先生のテヘペロは……」

「ちょっと、苦しいぞ」

「ムゥ、先生、まだ二十代です!」

 アハハハハ(((((((´∀`)))))))

 学院への転入は、ほのぼのと笑いの内に進む。

「席は、そこ、松平元康さんと雑賀孫一さんの間ね」

「元康、茶姫さんに鍛えてもらえー」

「ぼ、ぼく……(#'∀';)」

 信玄にからかわれて赤い顔をするジミ子、元康って?

「元康イジメたら、撃つよ」

「フフ、孫市、わしは倅の勝頼とはちがうぞぉ」

「雑賀の鉄砲衆は千丁だわよぉ」

「俺の鉄砲隊は三千丁だぞぉ」

「フン、うちは射程距離も命中率も上だもん」

「一度、二人で勝負しろ(^▽^)」

 パチパチパチ

「なんか、盛り上がってきたわねえ!」

「あ、先生、もう座っていいですか(^_^;)」

「ああ、ごめんごめん」

 ノリの良さそうなクラスだ。

 ちょっと心配だったけど、愉快にやっていけそうだ。

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(劉備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟

 

 

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RE・乃木坂学院高校演劇部物語・97『発覚!』

2023-01-27 07:08:48 | 青春高校

RE.乃木坂学院高校演劇部物語    

97『発覚!』 

 


「……じつはね、何を隠そう、僕は幽霊なんだよ」

 乃木坂さんが、もったいつけて言っても二人はキョトンとしていた。


「いや……だからね(^_^;)」

 乃木坂さんが、壁をすり抜けても。

「「オオ~(゚O゚)!」」

 奥の手で、周りを一瞬で春にしちゃっても。

「「ウワア~(*'▽'*)!」」


 いちおう驚くんだけども、幽霊さんに対する礼を欠いているというか、完全にミーハー。なんだか、マジックショーのノリになってしまった。


「喜んでくれるのは嬉しいけども、なんかねぇ……(´-﹏-;)」

 乃木坂さんは、頭をかいた。

「カッワイ~(*^o^*)!」

 と、夏鈴。

「これで稽古中の、まどかの不信な言動のわけが分かった(T-T)」

 と、納得の里沙。

「そうだ、トラックから材木降ろさなきゃ。乃木坂さん手伝って!」

 わたしまで、あたりまえのように言う。

 材木運びじゃ乃木坂さんの取り合いになった。だって乃木坂さんが見えるのは、わたしたち三人だけ。材木屋のオニイチャンも手伝ってくれるかなあと期待したんだけど、次の配達があるんで荷下ろしだけ。
 三人で運ぶと何往復もしなくちゃならない。かといって、乃木坂さんが一人で運んじゃ、材木の空中浮遊になって大騒ぎになっちゃう。で、乃木坂さんは介添え役。で、乃木坂さんに介添えしてもらうとチョーラクチン。で、取り合いになるわけ。

 運び終わると制服のあちこちに木くず。

「やだあ、冬休みにクリ-ニングしたとこなのに」

「じゃ、これはサービス」

 パチン

 乃木坂さんが指を鳴らすと、ハラハラと木くずが落ちていく。

「わあー、きれいになった! コーヒーの染みまで落ちてる!」

 わたしは素直に喜んだんだけど、夏鈴がセコイことを言う。

「ねえ、こんなことができるんだったら、平台とかもチョイチョイと……」

「ばか、それじゃ訓練にならないでしょうが、訓練に」

「自衛隊でも習ったでしょうが、敢闘精神よ、敢闘!」

 三バカのやりとりをにこやかに聞いていた乃木坂さんは暖かく言った。

「普通には手伝うよ。木を切ったり、釘を打ったり」
 

 それから、タヨリナ三人組と幽霊さんとの共同作業が始まった。
 

 ジャージに着替えるときに、夏鈴が聞いた。

「ひょっとして、着替えるとこなんか見てなかったでしょうね?」

「ないない、最初のは事故だったけど」

「最初のって、なによ?」

 やっぱ見られていたんだ……もういいけどね。

 男手が入ると作業効率が違う。ためしに三六(さぶろく)の平台一枚だけ作るつもりだったけど、一時間で三枚もできた。

 その作業の間、わたし達はしゃべりっぱなし。女を三つくっつけたら姦しい(かしましい)だもんね。って、これは乃木坂さんの感想。さすが旧制中学。

 でも、こうやってしゃべっていると、里沙や夏鈴に乃木坂さんが見えるようになったのが、理屈抜きで分かってくる。

 わたし達も、乃木坂さんも同世代だし、同じ演劇部。それに自衛隊の体験入隊も新学期に入ってからの稽古もずっといっしょだった。同じ空気を吸い……これひゆ比喩だからね。乃木坂さんは空気は吸いません。解説がつまらない? スミマセン。つまり感動を共有して、お互いに近しくなってきたからなのよ。

 でも、これが思いもかけない結果になるとは……だれも想像できませんでした。

 

☆ 主な登場人物

  • 仲 まどか       乃木坂学院高校一年生 演劇部
  • 坂東はるか       真田山学院高校二年生 演劇部 まどかの幼なじみ
  • 芹沢 潤香       乃木坂学院高校三年生 演劇部
  • 芹沢 紀香       潤香の姉
  • 貴崎 マリ       乃木坂学院高校 演劇部顧問
  • 貴崎 サキ       貴崎マリの妹
  • 大久保忠知       青山学園一年生 まどかの男友達
  • 武藤 里沙       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 南  夏鈴       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 山崎先輩        乃木坂学院高校二年生 演劇部部長
  • 峰岸先輩        乃木坂学院高校三年生 演劇部前部長
  • 高橋 誠司       城中地区予選の審査員 貴崎マリの先輩
  • 柚木先生        乃木坂学院高校 演劇部副顧問
  • 乃木坂さん       談話室の幽霊
  • まどかの家族      父 母(恭子) 兄 祖父 祖母
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