大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・139『洛陽号大爆発!』

2023-01-04 13:23:36 | 小説4

・139

『洛陽号大爆発!』お岩  

 

 

 ドッカーーーーーーン!!

 

 最後の中華弁当が売れてたところで大爆発が起こった!

 台にしていたビールケースが吹っ飛んで、弁当を運んできたワゴンもあさっての方角を向いてひっくり返ってしまった。

「もおおおお、洗濯したてを着てきたのにぃ!」

 巫女服の袖と袴がベロベロになったハナが文句を垂れる。

 なんの爆発か理解するのに数秒かかった。

 ドッグの洛陽号が定位置よりも50メートルほど後ろにずれて、少し左舷に傾いて黒煙を上げている。

「店長、洛陽が爆発したんすよ!」

「見に行こう!」

「ガッテン!」

 瓦礫を飛び越え、破片を踏みしだきながらドッグの際を目指す。

 ウゥゥゥゥゥゥゥゥ! ウゥゥゥゥゥゥゥゥ! ウゥゥゥゥゥゥゥゥ!

 サイレンが鳴り響き、手すきの工員やロボットがドッグに向かい、ドローンが状況把握のために頭の上を過ぎていく。

「わ、めちゃくちゃだ!」

 洛陽号はバルバスバウのところが使用済みのクラッカーのように弾けてささくれている。

 その衝撃で艦尾方向に動いて、ドッグのゲートにしたたかに艦尾をぶつけてしまっている。

「店長、人が倒れてるよ!」

 ドッグの底には、壊れた人形のようになって数十人の工員や技術者、ロボットが転がっている。

 鉱山事故に慣れている西之島の人間やロボットは、すぐには事故現場には踏み込まない。事故の状況を把握しなければ、二次災害の危険があるからだ。

「あ、あいつら!」

 それを知っているから、ハナやドッグの工員は、うかつには近づかない。その中で、ドッグの中に降りようとしている奴らが居る。漢明から派遣されている技術者たちだ。

「いま、近寄っちゃダメだ!」「现在不可以靠近!」

 日漢両方の言葉で忠告が飛び交う。ためらって立ち止まる者もいるが、二十人ほどが聞かずに下りていく。

「あいつらを止めろ!」

 仕方なく、監督が叫び、耐性のあるロボットたちが下りていく。

 

―― まずい! ――

 

 同じ思いがしたのは、長年島の鉱山で働いてきた者の勘だろうね、大事故の直前には全身の毛が逆立つような予感がすることがある。

 ドッゴオオオオオオオオン!!

 さっきの倍ほどの大爆発が起こり、目の前が真っ赤になる。

 とっさにハナを庇って地面に身を投げる!

「…………、………………!」

 予見していたので気絶することは無かったけど、耳が聞こえない。

 繰り返してくれた口の形から「店長、大丈夫っすか!」ということが分かる。

「ここにいちゃマズい、食堂の方に帰るよ!」

「ガッテン!」

 

 食堂に戻るころには本格的な救助が始まっていた。

 

 食堂の前を、落盤事故の時と同じ装備で人もロボットも駆けていく。

『ドッグで爆発事故! 手すきの者は直ちに救助装備を持って、ドッグに急行してください! ドッグで……』

「社長が自……で……て……っす!」

「え?」

―― 社長が自分で放送してるっす! ――

「責任感強いからねえ、社長は……ん?」

―― え? ――

「ハナ、いまのEEG(脳波)通信だろ?」

「え、あ……!」

「なんだ、そうだったのか」

「ああ、なんかどっちでもいいかなって(^_^;)」

 むろんどっちでもいいことだ。

 昔の感覚で言えば、東京人だと思っていた友だちが、実は東京弁の上手い大阪人だった程度の話だ。

 ハナは、サバサバしているようで案外シャイな性格なのかもしれない。

 

 しかし、洛陽号の壊滅的な爆発は、落ち着きかけた日漢、西之島の関係をさらに難しいものにしていった。

 

※ この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)        地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)         児玉元帥の友人         
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)         西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)         西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)   今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王

 

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宇宙戦艦三笠18[クレアが見せてくれた夢]

2023-01-04 08:46:57 | 真夏ダイアリー

宇宙戦艦

18[クレアが見せてくれた夢]   

 

 


 東郷少尉は、無表情のまま水盃を飲み干した。

 真珠湾で三飛曹で参加して以来生き残った数少ないベテランである。ガダルカナルの攻防に負けて以来、部隊は解隊され、東郷は一人横浜鎮守府に移され、各地から選抜された訓練生の飛行訓練に明け暮れていた。


 訓練生が特攻に使われることは分かっていた。

 基本の操縦技術を教えると、航法や戦闘訓練はおざなりに合格点を付けさせられた。旧式のグラマンならともかく、米軍の主力戦闘機であるF6Fやコルセア、ムスタングなどに太刀打ちできる技術ではなかった。それでも東郷少尉は合格点を出した。次に待ち構えている急降下爆撃や超低空飛行による爆撃訓練に時間を割くためである。

 急降下爆撃は降下角70度でやらせる。普通は、せいぜい60度であるが、それでは米軍の優れた対空火器に落とされてしまう。
 70度でも危なかった。上空500で数秒間80度にさせる。敵の対空砲の最大仰角を超えている。つまり敵の弾に当たらないように突っ込む訓練である。ただ、80度の急降下にゼロ戦は耐えられない。せいぜい30秒が限界である。敵弾の命中率が上がる500メートルで80度にさせるのである。ただ訓練なので、80度は、ほんの数秒で水平飛行に戻させる。10人に1人ほど、低空飛行に向いた者がいて、彼らには低空飛行を教えた。

 東郷少尉たち下級のベテランは気づいていた。敵の対空砲の命中率がいいのは米兵の腕ではなく、砲弾そのものに仕掛けがあるのだと。


 何度か、試しに超低空で敵艦に近接爆撃して気づいた。海面近くに飛んでくる敵の弾は、とんでもない場所で爆発する。さらに海面3メートルほどの高さで飛ぶと、敵弾は射撃直後に爆発した。おそらくは音響に関係した仕掛けがある。海面近くでは爆音は海面に乱反射して爆音が木霊して音源が分かりにくくなる。だから超低空ならば、敵弾に当たらずに接近が出来る。そのために、超のつく急降下爆撃と低空爆撃の訓練に力をいれた。

 本当は、こういう訓練は不本意であった。どちらも爆撃を終えた直後に急上昇し、敵の対空砲火に無防備な腹を晒すことになり、高い確率で撃墜されるからだ。必中を期待できる攻撃方法だが生存の望みは薄い。投弾に成功しても回避のタイミングを誤って敵艦に激突する可能性が高いのだ。でも、彼らには、それを回避する訓練は不要だった。

 そのまま敵艦に体当たりするのだから。

 東郷は、別のベテラン教官といっしょに、飛行長や飛行隊長に意見具申をしたことがある。

「二機一組で低空爆撃を加えます。一機はそのまま爆撃して姿勢を戻して離脱します。もう一機は我々がひき受けます。敵の直前で投弾して真横に振って離脱します。敵は我々に気を取られ、僚機の生還率が高くなります」

「高いと言っても、何度かやるうちには貴様たちも墜とされるぞ」

「体当たりさせるよりは、生還率が高くなります」

「われわれに必要なのは、確実な戦果なんだ。無駄な訓練をやっている余裕も燃料もない。だいいち、そんな砲弾に耳があるような話が信じられれるか」

 東郷の案が採用されることは無かったが、自分で実践し、その名の通り決め弾を出した。

「これをご覧ください」

 東郷は不発の40ミリ弾を出した。

「中に、小さな真空管が入っています。これが米軍の仕掛けなんです。おそらく近接信管……一定の距離になると自爆する砲弾です。これを使われていては、通常の攻撃は通用しません」

「だからこその、神風攻撃だ!」

 東郷らの意見具申は握りつぶされた。

 そして、昭和20年の8月には、東郷自身にも特攻命令が出された。


 操縦席に入って、人の気配を感じた。


 ゼロ戦は、操縦席の後ろに空間がある。移動の時には荷物置きにもできるロッカーほどの空間だ。そこに人がいたのである。

「き、君は……」

 それは、幼馴染の美智子だった。たしか挺身隊にとられて埼玉の工場に居るはずだった。

 美智子の家は維新までは代々半蔵門の警備が担当の幕臣で、当然ながら伊賀流の使い手であった。長い付き合いだったので、互いの覚悟は分かっていた。離陸するまでは無言だったが、上空に上がり直援機も引き返すと東郷は無線のスイッチを切った。

「右手だな」

「え、両手とも隠してたのに」

 美智子は、ずっと腕を組んだままだ。

「俺の目が誤魔化せると思ったか」

「旋盤に巻き込まれて……」

 美智子が見せた右手には指が二本欠落していた。

「なんでこうなる」

「だから、旋盤に……」

「話を省略するな」

「旋盤に巻き込まれそうになったのよ」

「誰が?」

「隣の子が」

「それを助けようとして指を持っていかれたんだな」

「お蔭で帰郷できる」

「途中奄美大島の脇を通る、30ノットまで落としてやるから飛び降りろ」

「帰郷するって言った」

「忍者の末裔だろ、自分の才覚で東京に戻れ」

「先祖は長嶋の一向一揆で半蔵さまに拾われた」

「なら、伊勢だ。東京よりも近い」

「一向宗の者が帰るところはお浄土だ」

「俺の家は禅宗だぞ」

「わたしが連れていってやる」

「……東京湾で落としておくべきだった」

 
 ピケット艦が近くなると、超低空飛行にうつった。さすがに、それからは無駄口をたたくことも止めて、ひたすら目標になる敵艦を目指した。

 それから十数分後、運よく大型空母への接敵に成功し、海面から3メートルの高さで接近。東郷はセオリー通りに対空射撃を躱して急上昇し、敵の飛行甲板の真ん中に激突し、甲板に並んでいた米軍機の全て道ずれにして敵空母を大破させた。空母は大戦中二度と現役復帰することなく、ビキニの原爆実験の標的艦になって沈んだ。

 同じ夢を、修一と樟葉は観た。

 クレアが見せてくれた時空を超えた二人の運命と約束だった……。

 4人それぞれの過去と想いを載せて、三笠は二度目のワープに入ろうとしていた。

 

 

☆ 主な登場人物

 修一(東郷修一)    横須賀国際高校二年 艦長
 樟葉(秋野樟葉)    横須賀国際高校二年 航海長
 天音(山本天音)    横須賀国際高校二年 砲術長
 トシ(秋山昭利)    横須賀国際高校一年 機関長
 ミカさん(神さま)   戦艦三笠の船霊
 メイドさんたち     シロメ クロメ チャメ ミケメ  
 テキサスジェーン    戦艦テキサスの船霊
 クレア         ボイジャーが擬人化したもの

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RE・乃木坂学院高校演劇部物語・74『奥の院』

2023-01-04 06:12:11 | 青春高校

RE.乃木坂学院高校演劇部物語    

74『奥の院』 

 


 理事長先生は来客中なので、わたしたちは廊下で待っていた。

 通称奥の院。

 事務室、校長室、応接室と続いて左へポキッと廊下を曲がって奥の方。
 普通、生徒はこの廊下に立つこともなく卒業していく。

 待っているだけで緊張しまくり。

 やがて、廊下を曲がって、みごとな禿頭を神々しく光らせながら、とても九十代とは思えない足どりで理事長先生がやってこられた。

「やあ、君たちか。待たせたね。さ、中に入り給え」

 給えだよ給え! アニメ以外で「給え」聞いたの初めて、リアル給え!

 マホガニーのドアを開けて、気安く招き入れてくださった。

 わたしってば、緊張と待ち時間が長かったせいで、部屋に入るとすぐにポケットから施設一覧を出した。

「あ……」

 一覧といっしょに自衛隊のパンフ出して、落っことしてしまった!

 それを、理事長先生が拾ったのだ。

「ほう……君たち自衛隊の体験入隊をするのかい。なるほどね、こりゃ校長さんでも直ぐに返事をしかねるね。なんせ先生や保護者の人たちの中にはいろんな考えの人がいるからね……そうか、君たちはここまで腰を据えて演劇部の再建に思いをいたしているんだねぇ。こうまでして君たちは演劇部を盛り上げようとしているんだ……よろしい、わたしが許可をしよう。校長さんにはわたしから言っておく。校長さんや教頭さんが若ければ一緒に行ってもらいたいところだなあ。うん、しかしよく決心した。まずは誉めておくよ」

「エヘヘ……」

 夏鈴が頭を掻いたもので、引っ込みがつかなくなり、自衛隊の体験入隊が決まってしまった。

 世の中、どこで、なにが、どう転ぶか分からないもんだ。

「あのう、もう一つお願いがあるんですが……」

 里沙が、仕方なく続けた。

「……構わんよ、どうぞ好きなように使いなさい」

 本編の方もあっさり許可が出た。

「ただ……あそこは、時々不思議なことがおこる。まあ、人体に悪影響を及ぼすようなことじゃないがね。一応言うだけは言っとくよ」

 それから理事長先生は、談話室の不思議なことについてレクチャーしてくださった。

 その間、お客さんが持ってこられたというケ-キまでご馳走になった。

 お茶とケーキを運んできた事務のオネエサンにも自衛隊の体験入隊を話しちゃうもんだからもう、わたしたちは腹をくくるしかなかった(`•︵•´) 。

「あ、このケーキを下さったのは貴崎先生だよ」

「え!?」「先生が!?」「先生、戻って来るんですか!?」

 封印していた期待がせき上げてくる。

 理事長先生は、静かに首を横に振った。

「なにか自分の道を探っていらっしゃるようだ。もう乃木高にも教職にも戻らない不退転の決心でおられる。その決心を伝えに来られたんだよ。正直、このわたしも先生の復帰を願う気持ちはあったからね、そういう周囲の期待やら思惑を断ち切るために挨拶にこられたんだ」

 やっぱりね。

 TAKEYONAで先生の決心は見抜いたつもりだった。はるかちゃんも大人の解説してくれて分かっていたつもりだった。でも、心のどこかで期待していたんだ。理事長先生もそう思っていて、そういうものをキッパリと打ち消しに来たんだ。

 里沙と夏鈴はショックな様子だった。TAKEYONAのことは、まだ二人には言ってなかったしね。

「今は、ただ驚いていればいい。いつか貴崎先生の気持ちが、君たちの心の糧になると、わたしは信じている」

 東の窓には気の早いお月様が、良いのか悪いのか分からないわたしたちの運を予言するかのように昇っているのが見えた。フェリペで見たときと違って満月だ。

 覚えてる、夏鈴?

 狼男は満月の夜に……わたしたちも、ひょっとして変身するかもしれないわね。

 

☆ 主な登場人物

  • 仲 まどか       乃木坂学院高校一年生 演劇部
  • 坂東はるか       真田山学院高校二年生 演劇部 まどかの幼なじみ
  • 芹沢 潤香       乃木坂学院高校三年生 演劇部
  • 芹沢 紀香       潤香の姉
  • 貴崎 マリ       乃木坂学院高校 演劇部顧問
  • 貴崎 サキ       貴崎マリの妹
  • 大久保忠知       青山学園一年生 まどかの男友達
  • 武藤 里沙       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 南  夏鈴       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 山崎先輩        乃木坂学院高校二年生 演劇部部長
  • 峰岸先輩        乃木坂学院高校三年生 演劇部前部長
  • 高橋 誠司       城中地区予選の審査員 貴崎マリの先輩
  • 柚木先生        乃木坂学院高校 演劇部副顧問
  • まどかの家族      父 母(恭子) 兄 祖父 祖母
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