青海チベット鉄道のラサ駅から発車準備のため退避線に入っていた列車が無人のまま動き出した。
列車は、そのまま本線に入り、制御不能のまま隣のラサ西駅を通過、次の馬郷駅手前の急カーブを曲がり切れずに脱線転覆してしまった。被害の割に死者・負傷者はいなかった。
ほとんど同時刻に、ラサ・クンガ空港で整備待機中の貨物機が無人のまま整備ヤードから誘導路に入り、滑走路に入ろうとしていた旅客機にぶつかって大破炎上した。旅客機の方は管制塔から貨物機の接近を知らされていたので、寸前に乗員乗客が避難。これまた、死者・負傷者はいなかった。
チベットの中枢と隣接する秦共和国を結ぶ陸と空の幹線が断ち切られてしまった。
そして、地方政府前で、漢族の若い女性が秦共和国のチベットの不当な支配に抗議する演説を始めた。
すぐに武装警官隊が駆けつけたが、どこからともなく現れた屈強なラマ僧によって、一個小隊の武装警察は全員のされ、武装解除されて縛り上げられた。
ラサ郊外の秦軍駐屯地の弾薬庫と武器庫が同時に爆破された。
直後、駐屯地から二人の女性兵士が現れたかと思うと、上着を脱ぎ、チベットの民族衣装になって演説し始めた。
チベットの中枢と隣接する秦共和国を結ぶ陸と空の幹線が断ち切られてしまった。
そして、地方政府前で、漢族の若い女性が秦共和国のチベットの不当な支配に抗議する演説を始めた。
すぐに武装警官隊が駆けつけたが、どこからともなく現れた屈強なラマ僧によって、一個小隊の武装警察は全員のされ、武装解除されて縛り上げられた。
ラサ郊外の秦軍駐屯地の弾薬庫と武器庫が同時に爆破された。
直後、駐屯地から二人の女性兵士が現れたかと思うと、上着を脱ぎ、チベットの民族衣装になって演説し始めた。
「秦の支配から逃れる時が来た。見よ、燃え盛る侵略者の兵舎を! やっと我々の国を取り戻すときがやってきたのだ!」
この演説を直接聞いている者は少なかったが、SNSで画像が全世界に流れた。
――チベットに独立の狼煙が上がる!――
そんな記事が、世界中の新聞やテレビのトップニュースになった。秦も、その後ろ盾になっている漢も、なすすべも無く混乱するばかりであった。あくる日には秦が漢に抗議するという珍事態になった。地方政府前で演説していた女性が北京市長の娘・林音美と知れたからである。
この事件は、今までの百年以上にわたる抗議運動とは質と水準が違った。チベットと、その外を結ぶ陸と空の幹線は遮断され、駐留していた秦軍と漢の軍事顧問団は、たった二日で無力化された。三日目にチベットは大陸国家からの独立を宣言。大陸五か国の疑心暗鬼が始まった。
「やられたな……」
習大佐は、天壇の司令部で歯噛みした。もう五か国を結び付けているのはシンラだけである。シンラとのパイプを残しておいたことに、辛うじて起死回生の可能性をかけるしかなかった。それに日本がポーカーフェイスで送り込んだ自律式核融合兵器である。日本に送り込んである工作員から「ヒナタというガイノイドで、複数のガードが付いている」という間の抜けた情報だけが上がっている。
「しばらくは内を固めるしかないか……」
「これ以上は藪蛇になるかもしれないわね」
天壇女子中高の制服を着ながら、雪嶺のヒナタが独り言ちた。
「しばらく天壇の女子高生やるのもいいと思ったんだけどね」
春麗のキミが不満げに言う。
「早くしろ、退学届出して、さっさと、この国からオサラバするんだから」
潤沢のスグルが隣室でイラついている。日本で本物の潤沢が捕まっているという噂が流れ始めているからだ。
どうやら潮時であるという点では一致している三人だった。天壇の雲が北京の蒼空をゆっくり流れて行く。
「昔と違って、空だけはきれいになったね」
ヒナタは、これまでの思いを言葉にしただけだったが、スグルには呑気な独り言にしか聞こえなかった……。
ホリーウォー 第一期 完
――チベットに独立の狼煙が上がる!――
そんな記事が、世界中の新聞やテレビのトップニュースになった。秦も、その後ろ盾になっている漢も、なすすべも無く混乱するばかりであった。あくる日には秦が漢に抗議するという珍事態になった。地方政府前で演説していた女性が北京市長の娘・林音美と知れたからである。
この事件は、今までの百年以上にわたる抗議運動とは質と水準が違った。チベットと、その外を結ぶ陸と空の幹線は遮断され、駐留していた秦軍と漢の軍事顧問団は、たった二日で無力化された。三日目にチベットは大陸国家からの独立を宣言。大陸五か国の疑心暗鬼が始まった。
「やられたな……」
習大佐は、天壇の司令部で歯噛みした。もう五か国を結び付けているのはシンラだけである。シンラとのパイプを残しておいたことに、辛うじて起死回生の可能性をかけるしかなかった。それに日本がポーカーフェイスで送り込んだ自律式核融合兵器である。日本に送り込んである工作員から「ヒナタというガイノイドで、複数のガードが付いている」という間の抜けた情報だけが上がっている。
「しばらくは内を固めるしかないか……」
「これ以上は藪蛇になるかもしれないわね」
天壇女子中高の制服を着ながら、雪嶺のヒナタが独り言ちた。
「しばらく天壇の女子高生やるのもいいと思ったんだけどね」
春麗のキミが不満げに言う。
「早くしろ、退学届出して、さっさと、この国からオサラバするんだから」
潤沢のスグルが隣室でイラついている。日本で本物の潤沢が捕まっているという噂が流れ始めているからだ。
どうやら潮時であるという点では一致している三人だった。天壇の雲が北京の蒼空をゆっくり流れて行く。
「昔と違って、空だけはきれいになったね」
ヒナタは、これまでの思いを言葉にしただけだったが、スグルには呑気な独り言にしか聞こえなかった……。
ホリーウォー 第一期 完