大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

REオフステージ(惣堀高校演劇部)138・野球部マネージャーの川島さん

2024-09-01 06:59:47 | 小説7
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
138・野球部マネージャーの川島さん 小山内啓介 





 一時間絞られた上に反省文を書かされて、やっと「帰っていい」と許可が出た。


「ジャンケンしろ」

 え、なんで?

 田淵も同じ表情をしてる。生指部長の大久保先生が『そんなこともわからんのか?』という顔をして付け加える。

「一緒に出たら、またケンカするかもしれんだろうが」

「「あ、ああ」」

 声が揃って、それじゃと向き合う。

「「最初はグー! ジャンケンホイ!」」

 出したのは互いにパー。

「「あいこで、しょ」」

 今度はチョキ同士。

「「あいこで、しょ!」」

 今度はグー同士。

「「あいこで、しょっ!」」

 今度もグー同士。

「おまえら、ほんとは仲良し同士なんとちゃうんか?」

「「それはない!」」

 そのあと、二回やってやっとケリが付いた。

 田淵が先に出て、一分後にタコ部屋を出ることを許される。

 出て驚いた。帰り支度をした生徒たちがゾロゾロ降りてくるのだ。

 おいおい、まだ五時間目が終わったとこやろーが……あ、そうか、PTA総会があるとかで、六時間目はカットやった。

 教室経由で部室に行こうと思ったが、昼飯がまだや。回れ右をして学食に向かう。売れ残りのパンかうどんでも食って部室に行こう。

 ご飯系は売り切れなんでラーメンの大盛りをトレーに載せて奥の席に着く。

 箸立てに手を伸ばすと、放課後の悲しさ、割り箸が一つもあれへん。

 ンガー

 怪獣みたいな唸り声をあげて配膳カウンターまで割り箸を取りに行く。

「はい、割り箸」

 おばちゃんがニッコリ笑って割り箸をくれる。愛想のええおばちゃんや。

 なぜか、おばちゃんの視線を感じながら席に戻る……え、向かいに美人の女子が座ってるやないか。

 あ、評判の野球部マネージャー、三年の川島さんや。

 目が合うと、川島さんは招き猫のような仕草をして、前に座れと微笑みを返してくる。

 言われなくても座る、そこにはオレの大盛りラーメンがあるんやからな……て、川島さんの前にも大盛りラーメンがアンパン付きで置いてある。他のテーブルから調達したのか、ちゃんと割り箸も添えてある。

「さっきは、うちの田淵君が迷惑かけたわね、ごめんなさい」

 姫カットの前髪をハラリとさせて頭を下げる。

「え、あ、いや……」

 演劇部で女子の免疫はできているはずやのに、いきなりのことにおたついてしまう。

「あ、やっぱ、野球部はマネージャーでもしっかり食べるんですね(*´ω`*)」

「え? やだ、わたしじゃないわよ。田淵君、こっち!」

 田淵も――ひっかけられた!――という顔をして観葉植物の横に立っていた。


☆彡 主な登場人物とあれこれ
  • 小山内啓介       演劇部部長
  • 沢村千歳        車いすの一年生  
  • 沢村留美        千歳の姉
  • ミリー         交換留学生 渡辺家に下宿
  • 松井須磨        停学6年目の留年生 甲府の旧家にルーツがある
  • 瀬戸内美春       生徒会副会長
  • ミッキー・ドナルド   サンフランシスコの高校生
  • シンディ―       サンフランシスコの高校生
  • 生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長 谷口
  • 先生たち        姫ちゃん 八重桜(敷島) 松平(生徒会顧問) 朝倉美乃梨(須磨の元同級生) 大久保(生指部長)
  • 惣堀商店街       ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ) ケメコ(そうほり屋の娘)
 


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