大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

馬鹿に付ける薬 014・野営の準備

2024-09-11 13:17:10 | ノベル2
鹿ける 《気まぐれアルテミスとのんびりベロナの異世界修業》

014:野営の準備 




「ここらで野営にしよう」

 
 峠まで差し掛かったところでプルートが立ち止まった。

「あの木陰がいい。前のパーティーが使った石組が残っている」

「でも、まだ陽が高いですよ」

「そうだ、他のパーティーは峠を越えて行くみたいじゃないか」

 ベロナもアルテミスも少し不満だ。

「やつらは普通の道を行く、もう二時間も歩けばアケメネスの村だからな」

「だったらアケメネスの村まで行こうじゃないか、好き好んで野営することもないだろ」

「我々は違う道を行く、ほら、向こうの森だ」

「わざわざ遠回りして森を通るのか?」

「森の中に果樹園があってな。そこでリンゴを仕入れる」

「まあ、リンゴですかぁ(^〇^)!?」

 ベロナは果物には目が無いようだ。

「果物を仕入れてどうする。足が早いし、かさばる。荷物になるぞ」

 二人のリュックとカバンは勇者のそれで相当なアイテムがしまい込めるが無限ではない、まだまだ旅の序盤、いたずらに中身を増やしたくない二人だ。

「ポーションの代わりになる。それに熟れることはあっても腐ることがない、ちょうどこれくらいのリンゴだ」

「まあ、プチトマトかブドウほどにかわいい」

「でも、そんなにいいアイテムなら、他のパーティーも行くんじゃないのか?」

「森にはいろいろモンスターや魔物が出るんでな」

「そうか、それを先に行って退治しておいてくれるってわけか!?」

「様子を見に行くだけだ。儂はガード、旅の主人公はお前たちだ。じゃあな」

「いってらっしゃーい」

 意外な身軽さで駆けていくと、先行のパーティーを追い越して森へ続く茂みの中へ消えて行った。

 石組みを整えていると、一陣の風が吹いてカロンが戻ってきた。


「オヤジ、行ってきたぞ……なんだ、居ねえのかぁ?」


「あ、カロンさん、町までお使いご苦労さまでした」

「お、おお、オヤジは?」

「向こうの森に行ったぞ、明日、森の果樹園に行く下見って言ってぞ」

「ち、そうか」

「カロンさん、これから晩ご飯の用意するんですけど、いっしょに食べて行きませんか?」

「いらね。オレ、いつも一人だから。ほれ、ギルドの登録書とドロップの代金とレシートだ」

「おう、ありがとう……って、手数料が二つあるぞ、一つは手書きだし」

「ああ、オレの分だ。5%格安だろ」

「そんな話聞いてないぞ」

「文句あんのかぁ、これはオヤジも承知の上だ」

「なんだと」

「なんだぁ、やろうってのか!」

「まあまあ、カロンさんにも事情があるんでしょ。四人も弟妹がいるっておっしゃってましたし」

「ち、なんで知ってんだ!?」

「あ、プル-トさんが……」

「クソオヤジが余計なことを……とにかく、オレは行く!」

 グゥ~~~

「ほらぁ、お腹空いてるんでしょ。すぐにできますから、どうぞ(^▽^)」

「おぉ……食ってやらねえこともねえけど、費用はそっちもちだぞ」

「はいはい」

「火おこすぞ」

「お、おお」


 火を起こし、調理になると、意外に呼吸が合って段取りよくできる三人だった。

 
☆彡 主な登場人物とあれこれ
  • アルテミス          アーチャー 月の女神
  • ベロナ            メイジ 火星の女神 生徒会長
  • プルート           ソードマン 冥王星のスピリット カロンなど五つの衛星がある
  • カグヤ            アルテミスの姉
  • マルス            ベロナの兄 軍神 農耕神
  • アマテラス          理事長
  • 宮沢賢治           昴学院校長
  • ジョバンニ          教頭
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REオフステージ(惣堀高校演劇部)148・ミリーの憂鬱

2024-09-11 09:27:14 | 小説7
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
148・ミリーの憂鬱 ミリー 




 ああ……なんやろうねえ……どうでもいいことなんやけど。

 カチャ ガラガラガラ~

 ここのところ部室のカギを開けるのは、わたしの仕事になってる。

 いまの部室は二階の仮部室。

 部室棟が建て替えのために使えんようになって、須磨先輩が使ってるタコ部屋に移ったのが一学期の五月の終わりころ。
 ミッキーが入部して手狭になって、一時期図書室に替わったけど、喋られへんしお茶もでけへんので、本館二階の空き部屋を臨時に使わせてもらってる。

 たいていは啓介が職員室まで鍵をとりにいってるんやけど、ここのところは、わたしの仕事。

 まあ、ええねんけどね。

 ここのとこ、啓介にはカノジョができた。

 一年生の伊藤香里菜とか言うらしい。二学期も終わりに近いというのに、まだ一年生らしい初々しさを残してる、かいらしい子。

「あ、それは恋をしてるからやで(^_^;)」

 セーヤンが言う。

 どうやら、二人が付き合うについては、このセーヤンとトラヤンが後押しというか、多少のきっかけを作った……と睨んでる。

 まあ、ええけど。

 部室に入って、啓介のノーパソを開けてみる。

 カメラを指で隠してエンターキーを押すと、スリープになってるノーパソが点く。

 レイラとかアケミとかいうメイドたちが、思い思いに寛いでるというか準備中。お茶を挽いてるというほどやないけど。

 いっしゅん指をどけたろかと思う。

 指をどけてカメラが活動し始めると、この『グローバルクラブ』は営業中ということになって、カメラの前の人物に気が付いて『お帰りなさいませぇ、ご主人さまぁ♡』とゲームが再開される。で、顔認証でご主人様の啓介やないことが分かると、メイドたちはパニックになって、最悪ゲームオーバーになる。

 ノーパソをそっ閉じしてお茶の用意をしようと思うと、流しの三角コーナーが出がらしのお茶でいっぱい……。

 夏やないから、すぐに臭うということは無いけど、ゴミ箱に出がらしを捨ててゴミ袋の口を結んでゴミ捨て場に持っていく。部室はくつろぎの場やから、きちんとしとかならあかんしね。

 西側の階段を下りて校舎の外に出るとゴミ捨て場への道。西側の階段は渡り廊下の隣で、瞬間、渡り廊下を横切ることになる。

 あ

 視野の端に二つの車いす。

 そうや、このごろ千歳は車いすの男子と話してることがある。相手の車いすは織田とかいう二年生。

 千歳は真面目な子やから、ゴミ袋ぶら下げてるわたしのことに気が付いたら「すみませーん」とか言うて部室に直行しよる。

 階段までは一秒ちょっと。さり気なく歩いて階段を下りる。

 帰りは東の階段を使おう。

 
 ブン!


 ゴミをほる手に勢いがついてしまう。

 あ!

 下手をするとゴミ袋が弾けて悲惨なことになる!……ああ、なんとか無事にゴミ袋は先客の間に収まった。

 やれやれ……部室に戻ってお茶でも淹れようか、須磨先輩もそろそろ姿を現すだろうし。

 踵を返して部室に戻ろうとすると、ポケットでスマホが震える。


 着信ありをクリックして……え!?


 足が震えた。


 田中さんのお婆ちゃんが危篤!!?



 
☆彡 主な登場人物とあれこれ
  • 小山内啓介       演劇部部長
  • 沢村千歳        車いすの一年生  
  • 沢村留美        千歳の姉
  • ミリー         交換留学生 渡辺家に下宿
  • 松井須磨        停学6年目の留年生 甲府の旧家にルーツがある
  • 瀬戸内美春       生徒会副会長
  • ミッキー・ドナルド   サンフランシスコの高校生
  • シンディ―       サンフランシスコの高校生
  • 生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長 谷口 織田信中 伊藤香里菜
  • 先生たち        姫ちゃん 八重桜(敷島) 松平(生徒会顧問) 朝倉美乃梨(須磨の元同級生) 大久保(生指部長)
  • 惣堀商店街       ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ) ケメコ(そうほり屋の娘)
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