大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・連載戯曲 ダウンロード(改訂版⑦)

2019-06-13 06:35:18 | 戯曲
連載戯曲 
ダウンロード(改訂版⑦) 


※ 無料上演の場合上演料は頂きませんが上演許可はとるようにしてください  最終回に連絡先を記します
  
ノラ: 見ていたの?
 そう……手を見せてくれる。広げて……ちゃんとあるのね……とっくに食いちぎられていると思ったわ、お父さんの手。
 ……そう、幸子のままよ、わたし。メモリーがどうにかなっちゃって消去できないの。
 ……お話し?……あまりしたくない(去ろうとするが、父の一言で立ち止まる)……!?
 ……うそ、お父さんもロボットだなんて……
 本物は四十五年前に死んだ……
 カリスマだったから、ロボットの影武者で……
 そう……後継者が育つのを待って交代する予定だった……
 四十五年待って……とうとう百二十五歳。
 ……ボデイの能力はプラスマイナス二十歳……そうでしょうね。わたしでもプラスマイナス十歳……
 いつまでも化けていられないわね。お父さん、ギネスブックにものっちゃったものね……
(父が何か小さなものを手渡す)なにこれ?……最高級のルーター!?……お父さんの!?
 ……そりゃ、これがあれば、どんなブロックも解除して接続できるけど。お父さん、ボケちゃうよ……
 いらない?……だってお父さん、松田電器の……会社のむつかしいこと処理したり、決定したりできなくなるわよ……もういい。
 ……そりゃ、百二十五歳の現役なんて不自然だけども。いいじゃない一人ぐらい、そんなスーパー老人がいたって。
 ……人が育たない?
 そんなの人間のせいでしょ。幸子や、お父さんが責任持たなくても、人間がもっと努力すればいいことでしょ!
 ……そのためにも。
 ……どうしたの、ひどく顔色が。
 ……動力サーキットをブレイク!?
 ……死んじゃうわよ、お父さん!
 ……昨日わたしと会って決心がついた。
 ……そんな、そんなの悲しいわよ、悲しすぎるわよ!
 わたしのハンガーに来て、わたしのマシーンにコネクトすれば、わたしの動力サーキットが使えるわ。
 ……お父さん、しっかりしてお父さん!
 ……え、名前を聞いて覚えて欲しい。お父さんのほんとうの名前?
 ……アダムっていうの、お父さん。
 アダム……とってもいい名前よ! 
 ……わたしにだけに覚えていてほしい。
 ……うん、忘れないわよ、忘れはしないわよ。
 死んじゃいや! 死んじゃいや! お父さん! アダム……!

 暗転、なにかを消去するような電子音。明るくなると、ノラのハンガー。三角座りした膝の間に頭を埋めるようにして、グッタリしたノラ。ノラの手には、マシンからのびたケーブルがつながれている。

ノラ : ……だめ。やっぱりわたしは松田幸子。
 ……消去できない。
 ……いいのよもう(ケーブルをはずす)なんならスクラップにして新しいアンドロイド買ったら……
 わたしなら、もういいの……もう疲れちゃったし……
 へん? ロボットがこんなこと言うなんて……
 優しいのね……って言ってあげたいけど。オーナーも余裕ないんでしょ? キッチンひとつつくれないんだものね。
 わたしが、本当にスクラップになったら、どうする気?
 オーナーのことなにもわからないけど、あまり前向きな人じゃない……
 でしょ……中古のアンドロイドの稼ぎで生活してるんですもんね。
 ……いいわよ、今夜はもう休んでちょうだい。わたしは、とりあえず明日はこのままでいけるから、幸子の演ずるオードリーで。
 ……うん、わたしもスリープモードにして、お肌の疲れを癒すわ。
 ……じゃあ(オーナーとの交信を切る)
 ……あ、流れ星……
 あれ、お父さん……アダムだ。
 ……ロボットが星になったって……いいよね。
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