本書は、戦略立案能力の肝である「インサイト」を身につけるためのBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)が培った具体的な方法を開陳したものです。
具体的な内容は、微に入り細を穿つというものではなく、かなり大胆に割り切って、「ユニークな戦略=定石+インサイト」という極めて単純な公式に絞り込んで紹介しています。
御立氏によると、「インサイト」とは、「戦略論の知識(定石)」と「勝てる戦略(ユニークな戦略)の構築能力」とのギャップを埋めるプラスアルファの能力のことをいいます。
実戦対応の一種のHow To本ではありますが、この本を読んで誰でも戦略的立案ができるかといえば、絶対に無理です。
How Toは実際に使えなくては意味がありませんし、使えるようになるためには、それこそ実戦での実践を重ねるしかありません。
さて、本書には、How Toの本線以外の周辺系の記述にも、いくつか気になるコメントがありました。
まずは、「思考のスピードアップ」に関する御立氏のコメントです。
(p41より引用) 新製品開発を考えてみても、全く新しいものをゼロからつくり上げるケースはほとんどない。世紀の大発明といわれるものでも、ほとんどがアレンジだ。何かをモデルにして磨き上げ、新しいアレンジを加えて精度の高いものに改良していくのが創造的作業の基本である。
つぎは、よく言われる「平均値の弊害」について。
この点は、常に意識して思い起こすように気をつけておかないと、ついついこの落とし穴に落ちてしまいます。
(p70より引用) 多くのデータは何らかの加工を通じて、平均化されている。平均化された情報は、必ずしも実態を表さない。良い仮説を出すためには、まず平均値情報をばらばらにし、個々のデータを鳥瞰することが第一歩となる。
最後は、御立氏が「知的シャドウボクシング」と呼んでいる訓練法です。
(p72より引用) 現場、すなわち観察事実とコンセプトをいったりきたりすることを、自分に強いる。このクセをつけることが、ユニークかつ筋の良い戦略をつくる能力につながっていくのだ。
この「コンセプトワーク」と「フィールドワーク」の交錯が、「本の中のThe BCG Way」を「現場で活きるThe BCG Way」に変えるのでしょう。
戦略「脳」を鍛える 価格:¥ 1,680(税込) 発売日:2003-11-14 |