多選現職市長に替わり若手改革派として当選、世間の脚光を浴びましたが、任期途中、数々のスキャンダル疑惑でマスコミを賑わせました。それらの疑惑から派生した裁判の結果は中田氏の勝訴、しかしながら、政治的には大きなダメージを受けました。
本書は、その中田氏が、自らの身の潔白を示すために当時の実態を語った告白の書です。
紹介されているエピソードからは、地方政治のある側面からみた現実を垣間見ることができます。もちろん、本書での中田氏の主張の正否については、何の傍証・反証を持たない私には判断不可です。
ただ、少なくとも、なんらかの意図的な工作があったこと、また、それらを十分な検証なくして増幅させた一部マスコミの動きがあったことは事実だったのでしょう。
中田氏の批判の矛先は、矜持を無くしたマスコミにも向けられます。
(p86より引用) 常に動き続ける現実のなかで実務にあたっている人からすれば、マスコミは「お気楽な商売」なのだ。マスコミ人が持つ批判精神は否定しない。だが、実務にあたる人たちは日々、真剣な思考と判断を重ねているのだ。そうしたプロセスや生み出された結果に対する謙虚さをマスコミには持ってもらいたい。
さて、参考までにですが、本書で中田氏から、スキャンダル疑惑の発信源とされたベテラン議員からの反論はネット上でもチェックすることができますし、当の市議自身のブログでも取り上げているようです。こちらにもざっと目を通さなくてはフェアとはいえないのでしょうか・・・。それら以外にも、本書をめぐってはいろいろな意見が開陳されています。(たとえば「櫻井よしこ」さんのブログ)
何が真実なのかという点は、もちろん重要です。ただ、正直なところいい加減にして欲しいという感じも抱いてしまいます。そんな議論を延々としている場合ではないだろうと。(真実を主張しているであろう関係者には申し訳ないのですが・・・)
せめて、こういったスキャンダラスな案件の追及が、不透明な政治決断・行政執行の実態を顕かにし、それらを根絶やしにする生産的な契機となればと思います。
中田氏も、本書の中でこう語っています。
(p165より引用) いまさえよければ、自分さえよければ、という考えが日本をダメにしているのだと思う。いまは苦しくとも未来に対して責任を持って、発言や行動をするのが政治家だと思う。言うべきこと、やるべきことをやって嫌われるなら、それは仕方がないとつくづく思う。
中田氏が市長在任中に多くの旧弊を是正し、具体的な改革施策を推し進めたのは事実でしょう。最近の地方行政において勢いづいている「善悪二元論」的な政治手法も、その根底にある精神の正否により、単なる「手段選択」の問題なのか否かが判断・評価されるものだと思います。
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