いつも聴いている茂木健一郎さんのpodcast番組に著者のトミヤマユキコさんがゲスト出演していて紹介された著作ですが、ピーター・バラカンさんのpodcast番組でも同じく取り上げられていました。
トミヤマユキコさんは、東北芸術工科大学芸術学部准教授として少女マンガ等のサブカルチャー関係の研究に取り組むととともに、マンガやフード関係のライターとして数々の著作も発表されています。
トミヤマさんが命名した「ネオ日本食」とは、「海外から持ち込まれたはずなのに、日本で独自の進化を遂げ、わたしたちの食文化にすっかり溶け込んでいる食べ物&飲み物」とのことですが、トミャマさんは本書にて、その「ネオ日本食」の歴史や魅力にとどまらず、「ネオ日本食」を産み出し提供し続けている “人” や “家族” にもスポットをあて、精力的な取材によりその魅力的な人柄、雰囲気を余すところなく描き出しています。
とても興味深いエピソードや蘊蓄が満載の内容ですが、それらの中から特に印象に残ったところを少々書き留めておきましょう。
まずは、目黒の「スパゲッティ ダン」。
先代から引き継いだ島崎弘さんとそのご家族が切り盛りする “たらこスパゲッティ” がお勧めの店です。
茹で立ての麺に手早くソースを絡める、この作業が「ネオ日本食」を産み出すとのこと。
(p50より引用) 何気ないことのようだが、麺が熱いうちにダッシュでソースを絡めるひと手間が大事なのだ。島崎さんに言わせれば「乗っけるだけなら誰でもできるからね。それはサボってるだけ」とのこと。ネオ日本食の多くは、誰でも作ろうと思えば作れる。だからこそ、何気ないひと手間がモノを言うのだと思う。
いやあ、確かにそのとおりですね。
そしてもうひとつ、本書で紹介された「ネオ日本食」の特徴を記しているところです。
(p93より引用) 多くのネオ日本食は、日本にいる作り手がときに知識も材料も足りない中でどうにか海外のものっぽい料理を作ろうとすることによってガラパゴス的なおいしさを生み出してきた。
なるほど、これも腹に落ちる説明ですね。
さて、本書で紹介された「ネオ日本食」、「ホットケーキ」「パフェ」「たらこスパゲティ」「ランチパック」「ホイス」「餃子」「カツレツ」「カレー」、どれも頗る魅力的です。
紹介されたお店、一軒でもいいので行ってみたいですね。