せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

早いもので、一年点検。ご家族の笑顔に接して

2021年10月18日 | くまもと型復興住宅03


ワクチン接種が進み、
みなさまの抗体獲得も進んできたタイミングで

熊本地震で被災した築124年の納屋の牛木(小屋梁)を、
リビングに配置したお宅の、一年点検に伺ってきました。
(上記写真は竣工時)

玄関の飾り棚は、季節感溢れる小物たちで、お出迎え。



引越し前の、仮住まい(お仕事場の事務所の寝泊まり)から
工事が始まって、どんどん、顔色が良くなっていったご両親です。

引越しの時のお喜びの時も、笑顔いっぱいでした。

一年過ごされてみて、お顔の表情がとっても
穏やかになられているのを拝見して
建て替えられて本当に良かったなと思いました。



仮住まい時には、体調を崩されて
緊急入院なんてこともありました。

着工直前に、間取りの変更も行いました。

トイレを寝室横に移動。構造計算も一部やり直しに


それでも、その時の決断が、
こうして快適な住まいになっていることを思うと、
一手間を惜しんではいけないと、改めて思います。

娘さんが、仮住まい時のご両親の生活の様子を
観察して、その年齢的変化を見逃さなかったことが
大きかったのです。

当初は、大工さんが見つからず、
なかなか着工できないという事態もありました。

一度は、再建も諦められていて、家電製品も全て新しくされるなど
仮住まいをすでに、ご両親は終の住処として考えておられました。

しかし、コンクリート建築の中で、どんどん体調を崩していく
ご両親を見かねた娘さんが、費用を捻出することを決断。

『やっぱり、木の家に住みたい。。。。』



結果的に、内部外部とも杉檜をふんだんに使いました。
(上記写真は竣工時)

心の中では、そう願っているご両親の内なる声を
代弁された結果です。

いつもは、施工者とともに尋ねる一年点検ですが
今回の点検は、設計監理者のみ行いました。

昨年の水害のあった地方の工務店さんだったからです。
もちろん、会社自体は無事。社員さんにも
大きな被害はなかったようですが

熊本地震の復興の次は、人吉球磨地方の水害復興と
お忙しいからです。

お電話でお話ししたところ、
図面を描いたり、現場に行ったりと
やはりお忙しいご様子でした。

不具合部分は、今回建具と木部の一部だけだったので
都合の良い時に、手直しに伺ってもらうことにしました。

木製の建具や、無垢の木を用いる場合
一年の気候変化で、反ったり、ゆがんだりもします。
いつものことです。

建主さんに事前に伺って、
訪問時には建具やさんもご一緒してもらうこともあります。

今回は、上記の理由から
後日の対応となりました。

感想を伺ったり、動線を拝見したりして
私自身の設計の気づきもありました。

具体的に、どんなことが、起きているか
HPに点検内容のレポートも載せました。

木の住まいに関心のある方、ご一読下さいませ。

いつもは、事前にアンケートを書いていただくのですが
コロナ禍で、ご両親の元へ帰省を見送られていた建主さまは
しばらく、住まうことができずにおられました。

これからは、しばらくは在熊。
これから、じっくりお住まいを味わっていただき、
おいおいアンケートも書いていただこうと思います。

美味しい手巻き寿司と、
おはぎをご馳走になりました。
ありがとうございました。
いつまでもお元気でいてほしいものです。


無垢の床は、這ってお掃除も気持ちよい!? 〜空間も上手く使って〜

2021年03月30日 | くまもと型復興住宅03


昨日の続きです。
半年点検で訪れたお宅の暮らしぶり、その2です。

1階はご家族の集うリビング兼用ダイニングです。
そして、親世帯の寝室に座敷、水周り。

2Fは、吹き抜けを介して通じる子の部屋。
里帰りの際の、お部屋ということになっていて

ここに寝泊まりしても、下階の高齢のご両親の
具合が分かる仕組みを、空間に盛り込んでいます。

そのちょっとした、2Fの吹き抜けのステージ風廊下、
通称、インナーバルコニーが
お孫さん達との読書スペースになっておりました。



おお〜。

この辺りの使い方は、想定外でした。

設計段階で、家具の配置やレイアウトも一緒に検討するのですが
伺っていなかった関東でお使いの家具を一部持ってこられ

置いてみたら、ちょうど良かったそうです。

あれまぁ。和の空間なのに、作りが洋風ミックスのおかげか
洋風の横椅子が、はまっている様には、私も驚きました。

こんな使い方、いいじゃないですか〜。



風通しも気持ち良く、
下階の気配も感じられ、
それでいて、寛げるそう。

お孫さん(甥っ子さん)方と、読書コーナーになっているそう。
子どもも、親の目の届かないところに、ちょいと居たいものです。

「きっと、ロフトに、登るわね〜」
とは、話していましたが、

案の定、腰掛けて読書。
なんだか、飾り物も増えている様子。


シーサーの置物。


お掃除も、なんと、お孫ちゃんが手伝ってくれるとか。



ユニークな写真を見せていただきました。

すのこベッドの下に入り込んでのお掃除。
かくれんぼ!?

無垢床だから、気持ちよいのでしょうね。



じいじ、ばあばの家に
愛着を持ってもらえるのが嬉しいですね。

・山で大切に育てられたスギ、ヒノキ。

・大工さんの手間暇かけた住まい。

・ご高齢のご両親の体調の変化に対応するべく
 お嬢さんが念入りにされた設計打合わせの賜物。

これからも、末長く、愛される空間でいて欲しいと
切に願います。

「長生き、せなんなぁ〜」と笑うお父様の発言には

「長生きが、出来そうだ」と喜びの意をみました。

地震後に、これまで我慢してきた
仮住まいでの暮らしの分まで
思う存分、毎日を楽しんでくださいね!

そして、どうぞ、
健康に気持ち良くお過ごしくださいますように。。。


ありがたや 無事故の現場、引き渡し 〜地域見守る氏神様に感謝して〜

2020年10月19日 | くまもと型復興住宅03


本日は、お日柄も良く、大安吉日に
無事、お住まいを引き渡すことができました。

この日を待ち続けてくださった、建主さま
丁寧な木のものづくりを
手がけてくださった工務店のみなさま

本当に、ありがとうございました!

建主様のご厚意による見学会も
無事に開催。見学してくださった方にも感謝です。



熊本地震から、実に4年半。
お待たせいたしました。

ご両親が、ご高齢ということもあり、
一度は、再建を見送られたご家族でした。

コンクリート造の仕事場の一角で
寝泊りをされ、

幸い水廻りがある施設でしたので
そこでの暮らしを、
地震直後からなさってきました。

だんだん、具合が悪くなるご両親を見かねて
やっぱり、木の家で実家を再建したい!と、

当時は、遠方に暮らされていた
お子さんの強い想いから
資金をやりくりされての、再建。

私も、精一杯、お手伝いしなくては!と
強い想いで取り組んできました。



木の持つ味わいの良さを最大限に引き出しつつも
コストバランスをどう取るか。。。

終の住処としての、バリアフリー。
高齢者対応。

限られた空間を最大限に、広く見せる工夫。




開放的な中にも、暮らしやすさを盛り込む。
そういった点を心がけてきました。

そして、それを実現くださった職方の技。



建築のものづくりは、
想い、アイデァ、技

この3つがうまくかみ合うこと。
それに見合った条件、を整えること。。。

それを、実感した現場でした。

そして、コロナ禍の中、
リモート監理の方法も、手探りできました。

このような状況でも、
お仕事をさせていただけていること
現場が無事故で完成したこと。

地鎮祭や上棟式でお世話になった神社に
お礼参りで、立ち寄りました。



境内に入るのは初めてでした。
立派な樹齢700年の大楠がお出迎え。



中では、新車の交通安全祈祷が
行われていました。



地域の方のお参りも途切れず。
由緒ある神社だけに、さすがです。

拝殿では、お礼を述べるとともに、
これからも、地域と、そして
建主様と、関わってくださった工務店の皆様の
安心安全な生活ができることを
祈願してまいりました。

どうぞ、これから、住んでいただいて、
末長く楽しく、快適に暮らして頂けたら幸いです。

追伸:竣工写真ができましたら、
HPにもアップしたいと存じます。


OPEN HOUSE のお知らせ

2020年10月14日 | くまもと型復興住宅03


熊本の杉檜を内部外部共にふんだんに用いた
くまもと型復興住宅が、完成いたしました!

つきましては、建主様のご厚意により
見学会を開催いたします。

以前の建物にあった、築100年以上の古材
美しい五木村の葉枯し材の梁を表しで活用した空間を、
ぜひ、ご覧ください。

2020年10月17日(土)、18日(日)
AM10時~12時まで。
(どうしても午後を希望の方には、別途ご案内します)

昨今の感染対策を鑑みて、受付は、
各日程とも10組まで、としたいと存じます。

また、事前予約制になります。

場所は、熊本市東区です。詳しい住所は
ご予約の方に、お伝えいたします。

お問い合わせ、申し込みは、
HPをご確認ください。


ありがたや 大工さんの手業に助けられて、耐風強度はやはり必要。

2020年09月07日 | くまもと型復興住宅03
熊本-羽田間のフライト、窓から夕焼けを見る

本日は、二十四節気の「白露」
大雨の後は、すっかり涼しくなった夜です。

地球の気候変動が続いていても、
やはり季節は巡るものです。

これからの朝晩は、冷え始めます。
節目、節目に、体調管理に気をつけたいですね。

そして、今朝、台風10号 が過ぎ去り、
ホッとしています。

まだ、停電や避難生活の最中にある方、
被害を受けられた方には、
お見舞い申し上げます。

今回、(も!?)台風の前のフライトで
横浜に無事に戻りました。本当にありがたいことです。

こちらでは、子どもがテスト週間。

お弁当のない日で、日中は、昼ごはんを用意したりと
母親としての務めもあり、無事に帰って来られたことには
感謝しかありません。

そして、またもや、
被害に遭っている熊本を去ることに、
後ろ髪引かれつつも、

現場への養生を工務店さんに、
実家での台風対策を両親には、
口すっぱく、伝えて、帰宅しました。

本日は、帰る直前の熊本の
現場の様子をお伝えします。

水害のあった地域の職人さん方ですが
暑い中、毎日現場に来てくれています。
直後には、建主さんのご理解もあり、
工事を一週間ほど休みました。

その後も、家具や建具担当の方のご親族の不幸など、
被災と、夏の暑さが加わり、健康面での心配な事もあり
無理のない工事をお願いしていることもあり
実際の進捗は、やはり大幅に遅れています。
そこで、1月竣工を伸ばすことにしました。

怪我でもあってはいけないですしね。

ただ、延期になるとその分、経費はかかるので、
工務店さんの利益を考えると、
本当は、予定通りの竣工が望ましいのですけれど。

建設現場は、天候に左右されて
本当に悩ましいですね。

それにしても、今回は、大工さんの手仕事の頑張りが
本当に逞しいです。

インナー窓ならぬ、インナートップライトがあるのですが
工事契約の前に、どう納めるか
工務店の社長さんと打ち合わせました。



私のスケッチを、「何とか出来そうです。」
と言ってもらえて、実現する箇所です。

まぁ、設計図面にないことも起きます。

上部の窓のチェーンを降りしているところは、
木枠に穴を開けて通すという神業。



本当、お手数をおかけいたします!
いろいろと、図面通りにいかない箇所は、
現地での判断。

大工さんができることと、私が希望することと
うまくマッチングできたら、幸い。

その瞬間が監理の醍醐味ですね。

いよいよ、設備機器も取り付き始めています。
キッチン、今回は、本当にシンプルな既製品。



MK design studioにしては、
珍しく、既製品のキッチン採用です。

リビングからのカウンターや食器棚の家具は
造作で作ります。コスト配分のバランスでしょうか。

システムキッチンと造作キッチンを比べると
金額はさほど変わりません。

しかし、打合わせる内容が多すぎて、
(食器や家電のサイズ測定もします)
どこまで、台所に立つ方がこだわるかで
設計するか、判断しています。

既製品でも、OKなキッチンが見つかれば
それで良しとし。

サイズや使い勝手が、いろいろな癖のある方や
ご要望のある方には、造作で提案しています。

* * * * *

それにしても、今回の台風10号の
 最大瞬間風速の予想には
驚きました。80m/s かも!?

え〜、そんな設計基準ございません。

熊本で、36m~38m/sが基準です。

それを、昨年の佐賀で起きた
最大瞬間風速40m〜42mのニュースより

今回、構造壁の設計内容を変更し、
台風対策を強化したのですが
全然、追いつかないではないですか!

もちろん、瞬間風速なので、
すぐにダメということでは
ないのですが、被害は受けますね。

実際には、沖縄では70m/sというケースが
あったようですが、
熊本では、そこまで、風速が増さずに済んだようです。

今回、サッシのガラスも、大きなところは、
飛散防止フィルム(ガラスが割れても飛び散らない)
を設置する設計です。

現場では、工務店さんから防犯フィルムを提案され
防犯ガラスの使用です。

シャッターや雨戸での対応が良いのではないかって?
そう、その点も建主さまとは打合せました。

火災の時の避難など考えると、、、
シャッターは、出られるとはいえ、
中の様子もわからず、ご近所の助けも得られにくいとの
判断で、採用を見送ってます。

少しでも、耐風圧の設計を見直しておいて良かった
つくづく思いました。

今のところ、私の周りでは
被害の報告は入ってきていませんが
 (数名の方に安否確認させてもらいました)

今後被害状況など確認しながら
また、設計者としてできることを
探りたいと思います。