せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

建築が洗練されるとは?

2009年07月30日 | 模型・実験・見学・講習・イベント

先の見学会で良かったこと。
建築が洗練されるとはどういうことかについて思考出来たこと。

もう一度空間を訪れたいと思ったのは、パビリオンだけだった。その理由を考えた。

そこのアイランドキッチンで、シェフが実際に調理した昼食が出され、舌包みを打ちながら、周りとの関係、使う人との関係を観察した。

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パビリオンの外観

周辺環境はけして良好ではないのに、四方ガラス張りのこの空間が、居心地がとても良い。

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内部空間、天井を見上げる

部屋の広さに対する天井の高さと、ガラスの開口部に対する木部の割合が嫌らしくなく、バランスが良い。

先の1棟目の明かり天井と劣らず、屋根からも光を入れているが、温かみの有るものになっている。

さすがである。洗練されているな。

このまま住まいでも良いのにと思う。

先の3棟との違いって何だろうと考える。

私なりの答えは、、、、
1)建物の周りからの見え方と、内部の見え方のバランスがとれている。
2)そこに身を置く人、使う人のことを十二分に考えて寸法、素材を選んでいる
3)そこそこの遊びが有るが、それは建築家の趣味的なものではなく、人への愛情から生まれたもの。

この建築家は、人の集まる広場を作りたがっている。もっと自由に!と話すのを聞いたことがある。

建築が洗練されるには・・・
結局は「人」「人」「人」を考えること。
そして「環境」と向き合うことではないか、

と若輩者の私なりに学びました。


終の住処って何?

2009年07月30日 | 模型・実験・見学・講習・イベント

先日、有名建築家による住まい&パビリオンの完成見学会に参加。

テーマは「終の住処(すみか)」をどう考えるかというもの。
個人の建て主がいる訳ではなく、民間資本の呼びかけによるもの。

住宅3棟は実験的なもので、建築的な「建物のつくり方」自体は、それぞれ個性がありユニークであった。

実際に、内部、外部空間に身を置いて感じたこと。
あ~、ここに「暮らし」はないな。

ざまざまなタイプを見て、気づきが有ったことを記しておきたい。

1棟目は、半透明の屋根を採用したディンクス向けと思われる住まい。
屋根から外の明かりが入ることで、ベッドルーム、リビングに明かりが移動するという。
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光屋根の天井の様子

そこに入った途端に落ち着かない。
外部の天気の変化が全て内部空間に取り込まれてしまう。常に中の光が変化し、(一秒も待ってくれない!)間仕切りや窓のない壁の住まいでは、視線をどこに持って行ったら良いのやら。

住まいとは、外部の自然(雨や突風や太陽の熱)から身を守り、外部変化の影響をなるべく受けないで心落ち着かせるところではなかったか?
(もちろん、朝陽を感じる、風を感じる、季節感を味わうという、じんわりとした変化は大事)そんなことを考えてしまった。
(うん、天井から大量の光を入れる仕組みは、鬱の患者に使われるという光療法の病室にはいいかも?!)

2棟目は、2M角程度の立方体に(狭い!)、寝室、客間、リビングなどの機能を分けて、配置したもの。
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樹木が需要な要素

空間一つ一つから見る樹木は、風景として面白い。
ここには、個人はあっても家族はないな。この狭い空間に大人二人では息が詰まるし、こどもとの関係はどう築けば良いのだろうか。そんな疑問が浮かぶ。
(うん、これは、個人でじっくり鑑賞するアートの展示空間にはいいかも?!)

3棟目は、プリミティブな素材(焼き杉、左官、暖炉)など多用し、ハシゴで上がる茶室もある住まい。18帖有るという居間は、天井が斜めのため、狭く感じる。
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金ぱくを張った茶室の入口

普段私の仕事では、狭い敷地で空間をより広く感じさせるよう苦慮するというのに、全く逆の発想。

バルコニーもなく、キッチンは隅に追いやられ、各室の出入りはにじり口になっている。(腰を屈めないと行き来出来ない)茶室のにじり口(←非日常の入るために設けられたもの)をモチーフにしたようだが、生活者には不便でしかない。
住まいって、居間で飲んで寛ぐだけの生活ではないはずなんだけどな・・・。
(うん、飲み屋ならこれもありかも?!)

敷地の広さと資本に任せて好きなものを作るという趣味的な建築。終の住処って、これで良いのだろうか・・・。

どの建築も写真写りは良いし、メディアにも評価されているようだ。
いろいろと知恵を絞って、人と違うものを、世の中に示すことは建築づくりに必要。こういうプロジェクトに反対はしない。

でもね。(←あまり使いたくないが)
私は流されないぞ!メディアや業界向けに住まいは作るものじゃない。
住み手に向き合って、住み手の暮らしに向き合って考えていくものだよな。

と改めて、自分の価値観を浮き彫りにさせてもらった見学会には、感謝。
建築の良い悪いではなく、こういう刺激は、ありがたい。


今年の夏は長い夏

2009年07月24日 | 季節感のある暮らし

梅雨の戻りのような天気が続いている。

潤いの有る暮らしを心がけたいと、気に掛けている旧暦。

その解説本を紐解くと、「新旧暦の季節のずれ一覧」に、今年は5月に閏月が入り、昨年より夏が長くなるとある。

そして、このケースの事例説明で、著者は1998年の同じ閏5月を「単に夏が長いだけではなく、梅雨の時期がダブルで来ることから『長雨であり、冷暑混在の複雑な長い夏』と予想し、「いつ秋になったか分からないぼんやりとした秋」と予想」している。

まさに、今年は梅雨がダブルではないですか!当たっている!

これでいくと、きっと秋の入も何となくなんでしょうね。

また、紅葉が12月までずれ込むとも。

季節を予想出来るっていうのは、暮らし易さにつながる、と思う。

着るもの、食べ物、旅行の予定、体調管理など。

こういう季節は、長袖も半袖も両方売れるらしい。確かに朝晩は肌寒く、いまだに七分のブラウス等が重宝している。

旧暦ってやっぱり興味深いな。

参考:「旧暦は暮らしの羅針盤」小林弦彦著


京都嵐山で涼をとる

2009年07月22日 | ワーク・ライフ・バランス

先日の連休、建築学科の同窓会に参加。昨日まで休みを取りました。

関東組、関西組も集まりやすいようにと、京都での開催でした。

建築業界もけっして順風満帆とは行かない昨今。

会社が倒産した、転職した等の話も尽きず、それでも皆なんとか食いしばって、家庭、仕事を守ろうと一生懸命な様子にこちらも励まされました。

当時は男女仲の良かったクラス。カヌーにスキー、ドライブや建築巡りに飲み会と連れ立って遊んでいた仲間。あっという間に青春時代にワープ。

定年後という先生方も2次会は夜の11時までつきあって下さり、午後一番でのホテルでの会合に始まり、4次会はホテルの部屋で最後まで飲んでましたね。

建築関係は飲み会の機会も多いですが、男女問わず本当に皆よく飲むなぁと感心しながらも、とても楽しい時間でした。

次の日は、関東から関西へ引っ越した友人と京都観光。

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トロッコからの渓流の眺め、マイナスイオン一杯の空気に囲まれて

嵐山のトロッコ電車に乗り、京都の蒸し暑さをよそに、緑と渓流に涼をとり久しぶりのリフレッシュ休暇となりました。
 
関西人のおもてなしの心や、弱音を吐かないポジティブシンキングの人柄などに感心していると、関東出身の友人に聞きながら、そして学びながら、昼食には湯豆腐や湯葉を頂き、和室ではんなりとして。
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幻想的な竹林を散策、京都風情を味わう嵯峨野

声をかけてくれたり、つきあってくれる仲間と友人達に、本当に人付き合いの恵みを感じた旅行となりました


涼む照明の工夫

2009年07月19日 | 季節感のある暮らし

暑い日が続いて、帰宅した家が散らかっていると、もっと暑苦しくなりますよね。

だけど、忙しくて疲れていて片付けるのもおっくう。

そんな時は、散らかっているものを見えなくしちゃいましょう。

メイン照明を消して、スポットや間接照明にして、夕食時やその後のほっと一息時には視界に入って欲しくないモノ群の存在を無視しましょう。

↓カサブランカをたっぷり飾って。
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きれいなところだけに視線が注ぐようにして寛ぎ、片付けは朝元気なうちに(家族が寝てる間に)やってしまえば、ストレスも溜まりません。

リビングの一画が子どもコーナーになっているので、実は花台の周りおもちゃや絵本が散乱。(むしろガラクタのような紙の切れ端や折り紙のぐちゃっとなったものなどが積まれていて、片付けると子どもが怒るようなシロモノ)
その部分に陰をつくることで、さほど気にならなくなります。

↓上記の写真を引いてみると、散らかっている様子が分かります。
花台の右横の部分は、子どもが整理しきれていない本棚
陰になって存在が分からなくなって見苦しさが消えています

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夏の夜は、照明を工夫して心理的な涼しさと寛ぎを感じられるといいですね。