せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

本物の木なら再利用。少しの工夫で、空間は変わる 〜木の持つ温もりに癒されて〜

2020年10月26日 | 2020東京都M市店舗改修工事


横浜事務所に戻り、
関東の店舗の木質化改修工事現場の確認に伺いました。

完成してから、しばらく間が空いてしまいましたが
工事完了の報告を工事写真で頂いていたことと、
感染予防の観点から、ご遠慮もしていたのですが。。。

「ぜひ、確認に来てください」との
クライアントさんのお言葉で訪問。

これまで、打合せで幾度も伺っているので
まるで、「ただいま」という感じでした。

今回の改修テーマのは、

1)費用を最小限に抑える。
  コロナ禍の中、社会情勢がどう変わるかわからないためです。

2)再利用できる木部は、再利用する
  コスト削減と、エコ

3)高齢者対応をする。

しかし、実際に歩けない方が来るわけではないので、
よろけた時に、手掛かりにする程度の手すりで良いとのご要望。

そう、できるだけ、見た目重視とのことと。



施工者も費用を抑えるためには
大工さんで既製品を取り付けるような手すりなら可能
とのことで、
(連続手すりは、できる家具担当レベルの工事になり、
見積もりが一桁違ってました、汗)

やや、妥協もありましたが、
ヒノキの手すりを製材所直接購入で
とてもお安く、無垢材のものが手に入り、
感触は、最高でした。

オーダー金具も、白い珪藻土壁と色があって
可愛らしい。

木の腰板に、木の手すりは、色のコントラストがないので
視力に問題がある方や高齢の方にも、分かるだろうか?

と、少し心配もしたのですが
全然問題なく、腰板のモミの茶と、
ヒノキの白っぽい木目カラーは

十分に、違っておりました。これなら、
手すりの位置も問題なく分かります。

そんの、細かい点にホッとしつつ。

今回、クライアントさんが、撤去する下足入れの
扉がもったいないからと、再利用された
ちょっとした工夫をご紹介。



壁に傷が付いていたところを隠す意味合いがあったのですが
腰のラインに木板を貼り付けただけで、狭い空間が
ぐっと、癒し空間に近づきました。

最初訪問して、拝見した時は、狭さにちょっと躊躇したのですが
こうして、板を回したら、その狭さがむしろこもり部屋で
気兼ねなく、施述を受けられそうです。

これも、ちゃんと良い木板を使っていたからですね。
取っても、再利用。
「だってオーダーで5,000円もしたものなの」と。
確かに、高い取手ですよね。



でも、握りやすくする工夫。
堅木を用いた制作物となると、、、
精度の高い仕事なら、それくらいになりますね。

「高くないですよ」という言葉は、胸にしまって。
「再利用できてよかったですね」と、ご返事しました。

それに、気に入っておられるのが分かるので。

改修工事は、前任者のお仕事や、考えも継承しながら
それでも、今のクライアントさんのお仕事の内容やお考え
ご予算に寄り添わなくてはなりません。

ヒアリング内容は、新築並みになりますが、
改修工事の醍醐味は、限られた空間で、知恵を絞ることですね。

もう幾度目かの改修。
「今回、とてもうまくいったの!」
と、言っていただけて、本当に嬉しいですね。

新しい機械も入るかどうか、シュミレーションして
おいて本当に良かったですね。

ギリギリですが、良い感じに収まり、
窓から見える緑の借景も活かせました。



そして、経営は順調とのこと。
それが何よりです。

この度は、コロナ禍の中、
ご依頼、誠にありがとうございました!

これからも、
来店される方が気持ちよく
働くスタッッフも快適に、

そして、経営者ご自身が、空間を楽しんで
お仕事されることを、願っています。

ありがたや 無事故の現場、引き渡し 〜地域見守る氏神様に感謝して〜

2020年10月19日 | くまもと型復興住宅03


本日は、お日柄も良く、大安吉日に
無事、お住まいを引き渡すことができました。

この日を待ち続けてくださった、建主さま
丁寧な木のものづくりを
手がけてくださった工務店のみなさま

本当に、ありがとうございました!

建主様のご厚意による見学会も
無事に開催。見学してくださった方にも感謝です。



熊本地震から、実に4年半。
お待たせいたしました。

ご両親が、ご高齢ということもあり、
一度は、再建を見送られたご家族でした。

コンクリート造の仕事場の一角で
寝泊りをされ、

幸い水廻りがある施設でしたので
そこでの暮らしを、
地震直後からなさってきました。

だんだん、具合が悪くなるご両親を見かねて
やっぱり、木の家で実家を再建したい!と、

当時は、遠方に暮らされていた
お子さんの強い想いから
資金をやりくりされての、再建。

私も、精一杯、お手伝いしなくては!と
強い想いで取り組んできました。



木の持つ味わいの良さを最大限に引き出しつつも
コストバランスをどう取るか。。。

終の住処としての、バリアフリー。
高齢者対応。

限られた空間を最大限に、広く見せる工夫。




開放的な中にも、暮らしやすさを盛り込む。
そういった点を心がけてきました。

そして、それを実現くださった職方の技。



建築のものづくりは、
想い、アイデァ、技

この3つがうまくかみ合うこと。
それに見合った条件、を整えること。。。

それを、実感した現場でした。

そして、コロナ禍の中、
リモート監理の方法も、手探りできました。

このような状況でも、
お仕事をさせていただけていること
現場が無事故で完成したこと。

地鎮祭や上棟式でお世話になった神社に
お礼参りで、立ち寄りました。



境内に入るのは初めてでした。
立派な樹齢700年の大楠がお出迎え。



中では、新車の交通安全祈祷が
行われていました。



地域の方のお参りも途切れず。
由緒ある神社だけに、さすがです。

拝殿では、お礼を述べるとともに、
これからも、地域と、そして
建主様と、関わってくださった工務店の皆様の
安心安全な生活ができることを
祈願してまいりました。

どうぞ、これから、住んでいただいて、
末長く楽しく、快適に暮らして頂けたら幸いです。

追伸:竣工写真ができましたら、
HPにもアップしたいと存じます。


OPEN HOUSE のお知らせ

2020年10月14日 | くまもと型復興住宅03


熊本の杉檜を内部外部共にふんだんに用いた
くまもと型復興住宅が、完成いたしました!

つきましては、建主様のご厚意により
見学会を開催いたします。

以前の建物にあった、築100年以上の古材
美しい五木村の葉枯し材の梁を表しで活用した空間を、
ぜひ、ご覧ください。

2020年10月17日(土)、18日(日)
AM10時~12時まで。
(どうしても午後を希望の方には、別途ご案内します)

昨今の感染対策を鑑みて、受付は、
各日程とも10組まで、としたいと存じます。

また、事前予約制になります。

場所は、熊本市東区です。詳しい住所は
ご予約の方に、お伝えいたします。

お問い合わせ、申し込みは、
HPをご確認ください。


アーキレスキュー人吉球磨の活動に参加〜地域の暮らしを守るとは、住み手も、担い手も守ること〜

2020年10月05日 | 熊本便り


先週の熊本では、仕事の休みに人吉で、
建築士ボランティアに参加してきました。

写真は、水害被害を受けた国宝青井阿蘇神社。

前面道路には、昭和57年7月25日の
水害痕跡の看板があります。



暴れ川「球磨川」の水害被害に繰り返しあってきた
地域であることの証拠です。

それでも、地域の方は
「球磨川は、悪くなか」という声が
よく聞かれるそうです。(地域新聞、熊日の記事)

水害と共にたくましく生きてきた地域でもあります。

実際は、どんなに怖かったか。。。
被災した友人の話を、様子を聞いていると、
とっさに避難できて、
命あって本当に良かったと思うのです。

今回、彼は、その経験から、
建築士ボランティア団体を立ち上げました。

水害ボランティアで活躍されている
関東風組の方もいらして、ご一緒しました。

むしろ、水害ボランティアは、彼らの方が経験済み。

私たちの方が、学ぶことも多いのです。

阪神大震災以降、立ち上がったグループだそうで
東日本大震災も、熊本地震でも、各地の水害被害でも
ずっとボランティア活動をされています。

水害の被害を、どう対処し、
そして住み続けられる家にしていくのか、、、

こうしたノウハウの蓄積が、
実は日本人の暮らしを救っているのだなと
しみじみと考えさせられる体験でした。

『人吉球磨アーキレスキュー』は、
建築士のボランティア団体で
熊本地震でも、一緒に相談に乗っていた仲間が立ち上げ、

現在は、熊本県建築士会の歴代青年部長など
友人の関係者の皆さんが、
毎週末、支援に来てくれています。


建築士としての、職能でのボランティアが
表は無料の住宅相談と、(実際は建築士は日当が出ます)
どう違うのか、、、

一般の方には分からないかもしれません。

無料相談窓口は、
あくまで相談があってからのアドバイスです。
来るのを待つ感じ。

私たちは、住み手が、もしかしたら
壁はがしのボランティアさんや、大工さんなどで
誤った方法になっていないかなども含めて、
訪問して、アドバイスを行うものなのです。

究極のお節介なのかもしれません。

どうして、そこまでするのかって?

やはり、地域の暮らしを守りたいからです。

修復工事を一度で済ませるためには
徹底した泥カビ除去と、消毒、乾燥が必要。

急いで壁をふさぐと、また梅雨時期に発生し、
結局工事が二度手間になるのです。

被災された上に、追い打ちをかけて
修復に、お金も時間もかかってしまうからです。

そして、その間、また快適な暮らしから
遠ざかってしまうからです。

実際に、そうとは知らずに、
すでに壁工事に入られていたお宅があり
計測すると、まだカビの発生しやすい湿気あり。



そして、断熱材が濡れているので、放っておくと
天井まで到達してしまうため、

今度工事に来た大工さんには
濡れている断熱材を除去してから、壁を施工するように
十分お願いするように、伝えました。

↓外壁の隙間から下地のカビの様子を確認中
発生していなくて、ほっ。



数件訪問していて、最後のお宅は、ちょうど
この程度の壁除去では、
天井までカビが生えるかもしれないと
不安になられていたお宅でした。

話を伺うと、ボードの幅に合わせて、
ボランティアの大工さんが、カットしたそうです。

もちろん、道具を持たない素人ではできないことなので
とても、ありがたいことなのですが

浸水ラインを越えてのカットでなければ、
下地は水を含んでいますし、
そのままでは、カビは上がっていきます。

やはり、ぎりぎり、効率の良いカットではなく、
ここは思い切って、浸水ラインよりも30センチ以上
裏まで、水分が上がった箇所より、50センチくらいは上を
カットしたいですね。

どうしても、施工のプロに言われると
住み手も、言われるままに、お願いしてしまいがちです。

被災地支援をしていて、
日本民家再生協会の先輩からは

地域の大工さんがクレーム対象にならないように
建築士が支援する意味合いもあると伺いました。

急いで工事をして欲しいと頼まれ、
良かれと思って工事をして
またカビが派生し、クレームになってしまうのだと。

熊本地震でも、建築士会の会長から
地域工務店が建てる家が残らないと
メーカーばかりになれば、地域の工務店がいなくなり
メンテナンスを頼む相手もいなくなると、

つまり、私たち建築士は、住み手の支援とともに
地域の作り手の支援も、
遠回しにしているのだということを
教わりました。

直接に関わらなくても
そうやって、互いに、真の意味での
助け合いがあるのだと、私は災害で学んでいます。

自助、共助、公助、、、

よく聞かれる言葉です。

それに加えて、職助、、

という言葉を付け加えたいですね。

建築士と施工者の関係だけではありません。

同業者が、同業者を助けることも
他県から、その産業への支援があることも、
これまで、見聞きして来ました。

公務員さんもそうですね。
すぐに他県から派遣されてきます。
(こちらは、仕事ですが)

そうやって災害列島日本を
これまで、乗り越えてきたのだと、

諸先輩方の知恵とネットワークと、行動力
感謝の気持ちが、益々強くなる今日この頃です。