せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

「小屈大申」の精神で行く!〜仲間に励まされて〜

2016年05月19日 | 森と樹と暮らしを繋ぐプロジェクト
木使いの仲間が、
私の絵本を会社の広報誌で紹介してくれている。




↑新星東部センターの瓦版

熊本地震の前に作られたもの。
会う約束もしていて果たせていなかった。

今日やっと、そのコピーを頂いた。ありがとう。
嬉しくて涙腺が緩んでしまいそうだった。

お互いに地震後どう過ごしたかの
報告をしあい。

被災して1階のない建物ばかりの
街をみたりすると、
やっぱりなんだか、ものづくりへの元気でないよね〜。
ため息もでるところ、気分転換の方法なども話しつつ。

私はというと 、いくら資材の価格が上がったとはいえ、
仕事の工事見積もりがあまりに高くて
がっくりきていたところに
お誘いいただき、仕事の愚痴も聞いてもらいながら

新しく挑戦する事業のことを少し話せた。

事業のことは、空白の1ヶ月。

事業計画書の作成も止まり、福岡での説明会にも欠席となり
補助金申請も見送ってしまった。

このタイミングで地震が起きて先に進むことが
止まってしまったことへの
意味を考えても堂々巡りするばかり。

自分のやりたいことがふやけてしまった地震後。

それでも、こうして仲間が励ましてくれることで
また、がんばろうって気になる。

「そろそろ家族を守るための元気から
周りを元気にするいつもの自分に戻ったら?」と言ってもらい、

そうだよ、チャレンジを忘れて停滞している
今の自分は自分らしくないなって思えてきた。
そして、彼が読んでいるという本からこの言葉をもらう。

「小屈大申」

「もし始めに不当な扱いを受けて悔しい思いをする小事があっても、
屈せずに乗り越えていけば、それが大事なる業績に伸展する。」

壬生寺の松浦俊海貫主さん紹介の言葉だそうだ。

そうだ!そうだ!

最初は小さなことからコツコツって、いつも自分に言い聞かせているじゃないか!

自分自身の中から沸き起こる小さな情熱のフツフツを大事にして
温めて、大きく育てていこう!

励ましに感謝して。


大地震後の「応急危険度判定」と「罹災証明」はリンクしない

2016年05月18日 | 熊本便り
熊本地震で、被災した方が待ち望まれるのが『罹災証明』。

災害により被災した住 宅の「被害の程度」を市町村が
証明するも ので、この証明書は、被災者生活再建支援金 の支給、
住宅の応急修理など様々な被災 者支援策を受ける際に必要 となるからです。

ところが、この『罹災証明』と『応急危険度判定』との関係性の誤解が
生じているようです。

罹災証明により支援の程度が変わってくるため、
支援を受けるためには、被害が大きい方が良いという認識になっているためです。

建築関係者でも、この二つの関係性がよく分からないようです。

ここで、違いをおさらいしておきましょう。

一般的な方に、より具体的に分かるように
補足やエピソードも含めて書きますので、要点だけ知りたい方は、
補足は、飛ばして下さい。

まず、『応急危険度判定』とは、
大地震が起きた場合に、人命を守るため、
倒壊しそうな建物に人が近づいて更に被害が生じないように、
『応急危険度判定士』(有資格者、主に建築士)が、
早急に建物の被害状況を判断するものです。

全国に10万人強(H27年3月末) 全国被災建築物応急危険度判定協議会
http://www.kenchiku-bosai.or.jp/oq/index.html

つまり、素人判断ではなく、
プロの目から見て被災した建物が危険か危険でないかの判断をするものです。

<補足>ーーーーーーーーーー
では、どうしたら判定士になれるかというと、

建築士または、それと同等の技術者(建築行政体験を有し認められた者)が、
講習を受けて登録するとなれます。

そのため「民間判定士」とも言われます。
専門的なボランティア活動と呼んでも良いかもしれません。

私が事務所登録している神奈川県の場合の判定士については

横浜市HPに簡単に記載されているので、詳しく知りたい方はこちら
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenchiku/kenbou/bousai/bousai/oukyu.html

熊本県には、約1,300名の応急危険度判定士がいます。
熊本県のHPはこちらhttp://www.pref.kumamoto.jp/kiji_1611.html

ーーーーーーーーーーーーーーー
<エピソード>ーーーーーーーーーー

基本的には、各県からの要請がなければ、
有資格者だからといって勝手に被災地に入ることはありません。
要請があって初めて動けるのです。
実際、有資格者の横浜のパートナーは、今のところ、要請がないと言っています。

今回の熊本地震で、混乱も招いているようで、
神奈川県建築士会から注意喚起が行われました。

「要請は国土交通省から都道府県に、そして都道府県から民間判定士に要請が来ます。
この要請は、現在、関東地方には民間判定士についてはありません。
現在のところの見通しでは、今後も民間判定士の要請はないとの県庁からの情報です。

個人の判断で判定活動のため、現地に赴くのは厳に謹んでいただくよう
重ねてお願いいたします。」


実際には、熊本県下および各行政の判定士が被災地入りしているようです。
神奈川県は県職員を派遣 http://www.pref.kanagawa.jp/prs/p1029406.html

当方が思うに、余震が続く中ので判定作業のため、判定士自身も身の危険があるわけです。
ですから、まずは公務についている人間を派遣するという国の方針があるのだろうと想像できます。

それから、交通費や宿泊の問題から、基本的には、
地域の判定士が地域を回るというのを目的にしているということもあります。

ーーーーーーーーーーーーーーー
次に『危険度の判定の区分』は、

赤紙「危険」被災建築物に立ち入ることが危険なもの
黄紙「要注意」被災建築物に立ち入る場合は十分注意するもの
緑紙「調査済」被災建築物が使用可能なもの

に分けられます。

具体的な判定方法は、こちら
神奈川県震災建築物応急危険度判定士の情報誌 「判定士だより」より転載


建物が全く使えなくなったということでもないので、
ここでもこの紙の色の違いが誤解を生じている印象です。

一部に大きな被害があり、余震が続く中には危険で入らない方が良いが
修繕すれば使えるという建物も中にはあります。
赤紙を貼られたからといって、もう住めないとガッカリせず
余震がおさまった後の、建築士などプロの見極めが必要です。

<エピソード>ーーーーー
判定士として熊本地震以前に、地震後被災地に入られた知り合いの建築士は、

「資産価値が下がるから、赤紙を貼らないでくれ」と言われたり
「建築士として仕事が欲しいから、被災地に来たのだろう」
と誤解を招いたこともあったそうです。

今回の熊本地震では、おおらかな県民性なのか、
認知度が広まっていたのかそのような話は私の周りでは聞きません。

むしろ両者の制度の違いを理解せずに、より支援を受けたいために
(それが人情というものですね)「赤紙にしてくれ」と言われた判定士もおられるとか。

う〜む。判定士としても、対応が難しいですね。

ーーーーーーーーーーーーーーー
では、『罹災証明』とは具体的にどのようなものかというと
災害対策基本法第90条の2 に基づき、当該市町村が発行するものです。

被災者生活再建支援金、義援金などの給付や
(独)住宅金融支援機構融資、災害援護資金 などの融 資 を受けたり、
税、保険料、公共料金等の減免・猶予 や
災害救助法に基づく応急仮設住宅、住宅の応急修理 などの現物支給 など
各種被災者支援策の給付に必要です。

段階的には、下記の3段階と

被害の程度 |全壊  |大規模 半壊   |半壊
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
損害 割合 |50%以上 |40%以上 50%未満 |20%以上 40%未満


「半壊に至らない」を含め、4段階に区分されます。

応急危険度判定と違い、調査は行政が行う為、技能を持つ人数も限られます。

現在、熊本には、こちらも国が人材を派遣していますが、時間がかかるわけです。
具体的な判断基準は、内閣府「災害に係る住家の被害認定の概要 」が分かりやすいです。
http://www.bousai.go.jp/taisaku/pdf/gaiyou.pdf

こうしてみますと、両者はそもそも全く目的が違うということが分かると思います。
判定する人材も違います。

ですから、
建物には貼られたのは赤紙なのに、
罹災証明では「全壊」と認定されず、納得がいかないということが生じるわけです。

被災して、心身ともに疲れているところに、国の対応に振り回されているという
印象を持たれている方もおられると思います。専門家でもややこしいことです。

判定にはそれぞれ基準があるということ、そして制度の違いをよく理解して、
一喜一憂せず、淡々と受け止めつつ(余震で被害が増えたときなどは、
再調査も申請できます)、次につなげていただけると幸いです。

そして、必要な方に、できるだけの支援が届くことを願っています。

震災時のメディア報道の弊害を考える

2016年05月12日 | 熊本便り

↑昨日の地域誌の記事はビジョンが有って、不安だらけの市民にとっては、
その中でも嬉しい掲載記事。

熊本の復興にどれだけこういう視点が入るのかも
気になるところ。

今回の大地震を体験して
メディア報道の弊害も考えさせられました。

1) ヘリの音

阪神大震災の時、報道ヘリコプターの音で
助けを呼んでいる瓦礫の下の人の声が聞き取れず
命を失った方がいると聞きます。

今回熊本地震も、前震、本震とも、また余震の大きな揺れの直後から
ヘリの音が聞こえてきました。もちろん夜中でも。
報道だな。と、耳をすませました。状況確認も大事ですが、
人命救助の妨げにはなって欲しくないものです。

2) 報道の仕方01、ひどい状況ばかりでも困る

あまりに続く被害状況。繰り返される映像にお腹いっぱい。
見ているのが辛くなるほど。怖い体験も思い出してしまう。
特に子どもなど。

被災者が気を紛らわすような
安心感を与えるような報道もできないものかと考えさせられました。

また、被災していない地域でも「熊本」とひとくくりにされて、
購入している商品の配送が打ち切られるという事態もありました。
調査もせずにです。ということが起きるのも、メディアの影響大と思います。

この出来事は、被災地への無意識的な差別的行為を感じました。

これまで、福島の方が、福島出身というと白い目で見られ、
出身を隠すという報道を目にしていて、
実際に被災者側になってみて
その意味が痛いほどよくわかります。

3) 報道の仕方02、良い側面ばかりでも困る

回復している様子ばかりだと、誤解を招く。
良いニュースが出てくると、今度はそればかり。

関東方面から、回復している状況が目に入り熊本はもう安心と思った。
という意見や、

熊本駅でボランティアを受け付けていた窓口の方が、
連休明けてボランティアがガクッと減った。
まだまだ必要なのにと嘆く一面も。

やはり、継続した支援が望ましいですね。

メディアもバランス良く
まだまだなところ。
回復しつつあるところ、

それぞれを報道してもらえたら、
きっと支援する側のタイミングや内容も検討しやすいと思うのです。
どうか、そのような対応を望みます。

熊本地震の教訓とこれから

2016年05月11日 | 熊本便り


この度の熊本地震は、活断層に沿って起きていることが、
明らかになってきました。
地震後すぐに、各団体の専門家が訪れ調査されています。

建築研究所 熊本地震特設ページ
http://www.kenken.go.jp/japanese/contents/topics/2016/index.html
土木学会地震工学委員会 
http://committees.jsce.or.jp/eec2/node/76
建築学会 5/14に調査結果報告会
https://www.aij.or.jp/20160416eq-cp.html

被災者でもある私たち熊本市民も
日頃の生活や仕事街中の移動等で、どこが液状化している地域か
どこに地震の力が加わったか、道路の亀裂などで、
本能的に感じている部分を、専門家が裏付けているというところでしょうか。

ぜひ、今後のまちづくり、建築づくり
そして復興プランの指針の参考になってほしいものです。

公的施設の耐震化の割合が60%〜でしかなかったと言われる熊本。
その弊害が、避難場所がなく車中泊を余儀なくされる。
学校の再開に時間が掛かるということを招いたと言っても過言ではないと、
建築士としては、胸が痛みます。

私自身も耐震診断をしても、改修には費用がかかるからと
そのまま住み続ける方がおられたり、
リフォームでも、最初に耐震化を図るべき、
その後、意匠的なものに取り組みましょうというアドバイスにも、
なかなか耳を貸してもらえなかった経験があります。

未体験では、想像しにくいのが地震被害。
それでも、この熊本地震を教訓に他県の方でも防災の備えと、
対策をより議論して実践してもらえたらというのが、体験した者の願いです。

この春、提案された熊本市の「立地適正化計画」
(持続可能な都市機能コンパクトシティを目指すもの)では、
活断層上の住宅リスクが明記されていなかったそうです。
実際の計画図を見ると、土砂災害、地滑り、津波などの災害は考慮されていました。

概要版はこちら
https://www.city.kumamoto.jp/common/UploadFileDsp.aspx?c_id=5&id=9398&sub_id=4&flid=80025

では、熊本市の活断層と地震ハザードマップとをみてみると、
「震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」の分布で、
より赤い(確率が高い)場所の被害が大きいです。
確率が低くても、実際には揺れが起きています。

このことを考えると、これは揺れが送る確率で見るというよりは、
被害が大きくなる可能性が高いという独自の見方をしたほうが良さそうだと思いました。

例えば、熊本市で被害の大きかった、東区、中央区、南区、
市外では、益城町は起きる確率の高い地域です。これを見ると、
熊本市の「立地適正化計画」で活断層を考慮したら、
都市計画自体が成り立たないことも分かります。行政を責められません。


↑震度6弱の確率と活断層位置

↑震度6強の確率

また、当方の熊本での居場所は、この確率はかなり低い地域です。
実際にゆれましたが、被害が少なく済んでいます。

横浜事務所は、、、大変危険区域です。

 ↑震度6強の確率

 ↑震度6弱の確率

横浜市自体が30年以内に78%の確率で大地震に見舞われると
言われていますから、十分に備えておかねばなりません。

水と食料と持ち出しリュックは準備していたものの、
次回、戻るときは改めて点検したいと思っています。

住所で検索できますから、ご自身のお住まいや仕事場が
どれだけリスクがあるか見ておくことをオススメします。

地震ハザードステーション2015年4月22日最新版
http://www.j-shis.bosai.go.jp/

発達障害と防災について

2016年05月10日 | 子ども・環境

先日、5月7日には「発達障害と生活環境を考える会」の
今年度の活動方針を決める定例会議に
熊本からスカイプで参加した。

久しぶりに有志のメンバーの顔を拝見し、
声を聞けたお陰で元気が出る。

専門的な立場で、情報過多にもなり、
建築の被害状況ばかりに目が行きがちで
心も疲弊してきていたところ、、、

人に寄り添う環境を考える視点で、仲間と話ができることは
前向きな気持ちになり、俄然やる気が出た。

この地震で受けた影響、自分自身の課題はなんなのだろうか。。。
そんなことをぼんやりと考えながら、

「発達障害と防災」をテーマに
何かできないものかと会議で提案させてもらった。

発達障害の方の避難生活の困難さを思うと
建築士として、その改善策を、医師や先生方など専門家メンバーにも
お力をお借りしながら、一般の方にも広く知ってもらうということと共に
環境づくり、居場所づくりが必須であることを提案していきたい。

内閣府の避難所の生活環境対策は下記に
http://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/index.html

発達障害情報・支援センター
http://www.rehab.go.jp/ddis/災害時の発達障害児・者支援について/

資料などはこちらに
http://www.rehab.go.jp/ddis/災害時の発達障害児・者支援について/災害時の支援に役立つ資料/

「自閉症の人のための防災・支援ハンドブック」(支援者向け)が大変に役立ちます。ぜひ、参考にして頂きたいです。