せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

建築を通じて、まちづくりとまちおこしの真の意味を考える

2023年02月06日 | まちづくり


私の生まれ故郷でもある八代に、新しい建築ができました。
設計監理は、最近ご活躍の若手の方です。

施設的には、それほど大規模なものではありませんが、
地域の核となる建物です。

第25回くまもとアートポリス推進賞を受賞を受賞しています。
詳しくはこちら

熊本在住時に、この施設を訪れて
色々なことを考えてしまいました。

建築がどうのこうのというわけではなく、
そのプログラム自体についてです。

この施設が計画されたきっかけは、地域のお祭りが
ユネスコの無形登録文化遺産に登録されたことです。

国指定重要無形民俗文化財「八代妙見祭の神幸行事」
お祭りの詳細は、こちら、https://myouken.com

メインの妙見祭が、平成23年に国重要無形民俗文化財に指定。
平成28年1には、
全国32の祭りとともに「山・鉾・屋台行事」
としてユネスコ無形文化遺産に登録されました。

この地域の無形民俗文化財の保存継承,
交流促進の拠点の施設として計画されました。

建物には、地域の笠鉾が全て保管されています。
そして、交代で、展示されます。
劣化を防ぐために、ライトに当て続けないためだそうです。

また、入場料を払って、各傘鉾を見て欲しいという
運営側の意図もあるかもしれません。

その笠鉾の意匠は、まさに、地域それぞれで大変ユニークなものです。
私が訪問した際は、みかんが乗っている笠鉾でした。
ボランティアガイドさんによると、将軍家にも奉納した
みかんなのだとか。



その地域の、誇るもの、由緒のあるもの、大事にしているもの
などが最上段に飾られています。

本当に精密にできていて、個性的。
他のものは、写真やイラストでしか拝見できませんでしたが
感動ものです。

地域の方が、自分達の技術で修復を繰り返しながら
受け継いでこられたことが、手に取るようにわかります。

そこで、ふと感じてしまったのです。

これらは、地域の核として、
地域が大事に保管し続けてきたものではないかと。

そのお宝を、施設に預けてしまって
良いものなのだろうか。。。。と。

一堂に集められたということは、
地域の人が身近に感じられなくなるのではないかと。。。。

「保管庫に集めることを、反対する方も居られたんですけどね。。。」

私の表情を読み取られたのか、ガイドの方が
地域の方の本音を呟かれました。

自分の代で保管はできても、次の代、そしてまた次の代に
うまく引き継がれるのか、、、苦悩の末の決断なのでしょう。

実際に、お祭りの後継者問題、維持管理問題は、
昨今の少子高齢化で、日本中が抱える問題です。

しかしながら、今の大変さを、
こうした一時的な計画で凌いだとしても、
地域の持つプライドというポテンシャルは
下がらないでしょうか?

煌びやかな飾りを見て、
笠鉾の装飾を競うあうこと=地域の競争力を高めること
だったのではないかと、推察しました。

そのお宝が身近にあることで、
その地域への愛着と、誇り、そして共同の助け合い精神を育む土壌、
となっていたはずです。

そうでなければ、ここまで続きません。

お祭りの発生時期を尋ねると、実はよく分かっていないそうです。
今のスタイルは江戸時代に確立したようです。少しづつ変遷しながら。

しかし、妙見信仰自体は、かなり古いものです。

妙見菩薩は、仏教が中国に渡り、道教を集合したらしいのですが

『妙見は武運を守ると信じられ,平将門,加藤清正など武将はこれを守り神とした。』(ウィキペディアより)

とはいえ、

八代神社(妙見宮)は、福島県の相馬妙見、大阪府の能勢妙見と並んで、日本三大妙見と言われ、

「やつしろぷれす」によれば、
末社である、霊符神社は、


由緒が、
『「肥後国誌」には、「妙見山ノ内赤土山ノ上ニアリ」と記され、(省略)『鎮宅霊府縁起集説』には霊府金板を天平十二年(740)肥後国八代郡白木山神宮寺で版木にちりばめた、と記されており、ここから国中に流布され、、』たそうです。

また、実際に神の化身と、亀蛇が出てくるのが、妙見神が渡来した竹原の津跡と言われています。

『「妙見実記」などによると、天武帝白鳳9年(680年)の秋、中国名州(寧波)から妙見神が目深検校、手長次郎、足早三郎の3人に姿を変え、亀蛇の背に載って海を渡り、この八代郡土北郷八千把村竹原の津に上陸し、約3年感仮座したと伝えられています。』


こうなってくると、仏教が伝来した飛鳥時代からの信仰があったと
分かります。

この長い年月を思うと、近代的な建物の中に、
その歴史を物語る地域のお宝であり、
信仰心(地域の繁栄を願う祈り)が、
閉じ込められてしまったような気になる
のは、私だけでしょうか。

なんだかモヤモヤした気持ち。

この地域のお祭りに参加したこともなく、
赤ん坊時代にしか過ごしていない地域で、

詳しく知らない部外者としての私ですが、
建築施設と、展示を見て感じてしまったのです。

そして、つい先日、このモヤモヤした気持ちを
伝統的建築や伝統文化に造詣が深い同業である
お仲間の一人に打ち明けたところ、、、

「それじゃ、地域の魂、抜かれちゃった感じだね。」

と言われて、ハッとしました。
そうなのです。私が、感じたモヤモヤを言葉にしてくれました。

寂しくないでしょうか。。。

私の懸念は、数年後、数十年後に、お祭りの価値や凄さ、意味などの
継承なく、イベントとしての観光の見せものとしての継承になりはしないか。。。

地域の誇りと地域への愛着は、失われていくのではないか。。。

という点にあります。

笠鉾というモノを保管しているようで、モノではない魂が宿っており
魂を保管している。

もし、これが、まちおこしやまちづくりの視点から、祭りや笠鉾を
見たならば、もっと地域の方々が触れられるような
そんな展示があったのではないかと、思えてくるのです。

その地域、地域に拠点を作るべきではないのか???

お祭りの際に、地域から出てくる鉾が、
一堂に介した施設から出てくるということは、
その地域の心意気を背負えるのだろうか。。。
ということです。

土地の問題など、もちろんあるのでしょうけれど。
今ある場所の整備に費用は回せなかったのかなぁ。。。

地域にないとなると、地域力で修復しようとはせずに、
行政などの後押しや補助金などの利用に
なってくるような気がしてなりません。

だって、自分達の宝物って感じではなくなりますからね。

これが、地方の祭りの現状なのか。。。

日本が、均一化、均質化して、どこも同じような都市になり
チェーン店が並ぶ街並みになり、お祭りは観光資源と化する。。。

それしか、解決方法はないのでしょうか。

お祭りの価値を、真の意味を失わずに、
少ない人数でも、開催できるお祭りへのシフト、
開催時期を隔年にして、負担を減らすなど、
(本当は、ハレの日は毎年欲しいところだけど)

さまざまな運営の工夫で、
これまでも、歴史の荒波を乗り越えてきたこの地域のお宝を
引き継いでいってもらえたらと願わずにはいられません。

そして、この展示を拝見して
地域活動を継続するのは、建築はなく、
より求心力のある「場」であるのではないか。。。

自分自身の建築のモノづくりの方向性も含めて、
改めて、そんなことを考えてしまった今回の施設訪問でした。

保管されている場所は、閉ざされており
木組の説明も読みにくい。 もうちょっと見たいですね。


おまけ
以下、建築やとして、ちょいと気になった箇所。

かわいらしいサインは気に入ったのですが、
みなさん、このサインどこか気になりませんか?

男子トイレ
女子トイレ


女子トイレと男子トイレ、
それぞれにベビーチェアがあることを示しています。

パパがベビーづれでも良いのでは?
っていうかママが、男子トイレに入るんかい!
と突っ込みましょう。人々に、先入観を与えて欲しくないですね。

建築雑誌などの写真は、木造の屋根の小屋組がアップで撮られ
カッコ良い木造施設に一瞬勘違いされるのですが、



遠景では、コンクリートと金属の屋根しか見えず、
もう少し景観への配慮も欲しかったなぁ。。。



実は、写真を拝見して、注目して、
現地を伺っただけに、ちょっと残念な気持ち。

建築って、やはり、実際に現地にいってみないと
分からないモノですね。

人のふり見て我がふり直せで、頑張ります!



これからの建築のあり方を問う02 〜万博や、再開発の日本の動向に疑問を持って〜

2022年12月21日 | まちづくり


東京年整備局のHPより

昨日は、東京神宮外苑の再開発についての
【緊急オンライン集会】
@衆議院会館みんなで考えよう!神宮外苑再開発問題
を視聴させてもらいました。

建築家の先輩から、
この再開発案には大きな問題があると
話を伺った時は、正直、当初はピンときませんでした。

都民ではない、蚊帳の外の私などが
関わることなのかどうか。。。一瞬のためらいもありました。

しかし、その中身を伺うと、唖然とすることばかり。

大きな物事が、市民(この場合、都民)抜きで
決められていく恐ろしさに、鳥肌が立ちました。

今現在は、様々な専門家が危惧を示し、懸念し
あってはならないことと、提言を繰り返しています。

その発起人は、なんと海外から日本に移住してきた方と
言うから、驚きです。
私自身も、署名活動には参加させてもらいました。

昨日の集会の中で語られた課題を整理してみます。

まず、大きな問題は、

1)実際に暮らす、生活する人々が置き去りにされていること

明治神宮の内苑に対しての外苑という歴史的な場所の再開発が
都民の意見を聞くこともなく、描かれていること。

この部分に関しては、
横浜市のIR誘致のパースを見たときの衝撃に似ています。

(IR誘致は白紙として、選挙をした当時の市長が、
当選した途端にパース提示した際、
すでに出来上がっていた案に、
騙されたと思った市民も多かったことです。
その後、市長のリコールが起きました。

ご存知の通り、次の選挙で、市長そのものが変わり、
現市長は、誘致を撤回しています。

パブリックコメントを求めたり、
環境アセスを検討したりというのは
実は、ほとんど形式的なもの。

反対意見を述べるチャンスや、疑問点を解決しようとする
動きはほとんどないものです。

そして、HPで「綺麗にまるで問題がないかのように」
回答が綴られています。

東京都都市整備局 神宮外苑の再開発についてのQ&A

問題となっている樹齢100年超の樹木伐採については
上手にかわしています。緑化率という%を使うことで。

私も、内部事情を知らなければ、
どこが問題なのか、気が付かなかったかもしれません。

次に、建築的な課題です。

2)持続可能な時代を推し進めなければならないことに、逆行する新築

建築の高層化、なんと190Mの高層ビルになります。
まだ、築40年のビルが、改修工事でのリニューアルで使うことよりも
容積率を上げ、高層ビルとし、賃料で工事費を生み出すという
現代版錬金術とも言える手法。

RC造の場合、新築床面積1m2作るのに、
なんとCO2が1.0t排出されるとの指摘も。


3)歴史的な文脈の分断、継承されない計画

この外苑の樹木が、大正時代に、寄付を募ったものであること。
全国の有志による植樹ボランティアの労働力による
志しの集った場所であったというのです。

私自身知らなかったことです。

この緑地を、樹齢100年を越す樹木も一部伐採してしまう
計画になっています。

4)樹木をモノ化して扱うことへの危惧。

ここの4列に及ぶ銀杏並木。
実に美しく、わたしも訪ねたことがあります。
再開発の計画では、当初一部伐採でした。
地域住民の反対により、
それを残る案に修正はされたものの、

ギリギリまで建物を建てた場合、
根の損傷、風通しの悪さ、日当たりの減少などにより
樹木へ多大な負担がかかるという警鐘を専門家がしています。

東京におられない方でも、
テレビドラマで度々登場する場所なので
多くの方が、目にされているはずです。

「神宮外苑、イチョウ並木」でググっていただけると、
あ〜この場所!っていうくらい画像が出てきます。

5)大事な話が、一部の企業や組織で進められていく

再開発を許可するのが東京都ということもあり
最初に、この開発を先輩建築家から教えてもらった際に、
見直しをするには、
議員さんに動いてもらうことはできないでしょうか?
 というお話を少ししました。当時、都議会に、後輩がいたからです。

ところが、今はなんと、政治家の方々が
超党派で動いておられるとのこと。
ある意味で心強く、そしてまた、その方たちは
クリーンなのかな???とも素人考えで思ったりして。

こんかいの集会では、議員の方からの発言もありました。
それによると、東京都の容積率緩和を伴う再開発は、
当初は難しいという判断だったのが
なぜか、急に許可されている。

その前には、これもなぜか、地権者でもない事業者が
再開発の協議に加わっていたという資料が出てきた
ということでした。(10年以上前)

この辺りを紐解いていくと、もしかしたら
東京オリンピックの際のような、
いろいろなお金の流れも出てくるのかもしれません。

6)都市の緑地は増やしても、減らしてはならない。

東京都のサーモカメラによる気温分布のデータとともに、
グリーンアイランド、グリーンスポット、グリーンゾーン、
の必要性、重要性も、専門家より提示があり、

高層ビルの壁による夜間の熱の放出が
ヒートアイランドの原因の一つであること。

など、様々なことが、専門家からリレー方式でお話がありました。

****

私自身、このブログでは、政治的な話は書かないと決めていたのですが
今回、あえて投稿するのは、

東京都の話、、、、ですが、
きっと日本全国、同じだからと思うからです。

再開発の名の下、、、
置き去りにされていく暮らしと環境と人々。

署名活動に、参加した都民の方の声を語った中には、
「気になっていたけれど、何をしていいのかわからなかった。
署名ができて嬉しい」というものがあったそうです。
声を上げるチャンスも、見当たらないのです。

そこで、わたしも得た情報を発信することにしました。

実際に、168本のイチョウを全て調べたという
イコモスの石川幹子氏がおっしゃるには、

まずは、この銀杏並木を国の「名勝」として指定し、
保護していくという提案でした。

そのためには、4列のうち、二列は都のものだが、二列は明治神宮のものだそうです。ですので、事業主体でもある明治神宮の合意がないと出来ない、ぜひその動きであった欲しいとのことでした。

初詣に、明治神宮に行かれる多くの方々が、
ぜひ、銀杏並木を生きた形で
残せるかどうかは、神社にかかっているということを知って、
お詣り頂けたら幸いです。

長くなりました。

このような機会を提示してくださった
先輩建築家に感謝するとともに、
まだまだ、学んでいかなくてはと思っています。
そして、何ができるのかも考えて行動します。
  
慶應義塾のサイトにコラムがありました。
このブログで関心を持ってくださった方は、
直接、読んでいただければと思います。

演説館、石川幹子氏

以下、今回お話を伺った皆さんのお名前をご紹介しておきます。

【プログラム】
◉13:30~開会挨拶と現況報告
司会・進行/迫田朋子(ビデオニュース・ドットコム キャスター/元NHK解説委員) 
船田はじめ議員(神宮外苑の自然と歴史・文化を守る国会議員連盟 発起人代表)
西川直子(神宮外苑を守る有志ネット事務局)

◉13:50~ゲストスピーカー(リレー式に順不同)
◉石川幹子先生(日本イコモス理事・中央大学研究開発機構教授・東京大学名誉教授)
 /近代文化資産、危機に瀕するいちょう並木

◉大方潤一郎先生(都市計画 明治大学特任教授・東京大学名誉教授)
/再開発・都市計画の視点から
◉森山高至氏 (建築エコノミスト)/神宮外苑再開発の何が問題か(仮題)
◉三上岳彦先生(気候学・都市気候 東京都立大学名誉教授)/都市の樹木とヒートアイランド
◉ロッシェル・カップ氏(経営コンサルタント・オンライン署名発起人)/再開発と民主主義
◉糸長浩司先生(地球環境建築・日本建築学会脱炭素社会推進WG主査)/再開発・脱炭素の視点から
◉若山徹氏(新建築家技術者集団東京支部)/神宮外苑再開発と代替案

ビデオメッセージ
◉原科幸彦先生(環境アセスメント・環境計画政策 千葉商科大学学長)
◉藤井英二郎先生(環境植栽学 千葉大学名誉教授)

その他発言者
*「神宮外苑の自然と歴史・文化を守る国会議員連盟」国会議員
*都議会議員*区議会議員
*環境保護団体
*有志ネットメンバー他市民の方々


日本神話と自然災害〜生命と風景の哲学〜を読む

2019年10月13日 | まちづくり

↑いつもは、ぼんやりとした横浜みなとみらいのビル群の姿が、
くっきりと浮かぶ台風明け、夕方の空

台風19号が関東を通り過ぎ、一夜明けてのまっさらな晴天。

その後、夕方には、遠方のランドマークタワーの周りが
よく見通せるほどに、空のチリが飛びさった模様。

一方で、今はまだ、東北の方に移動し、川の氾濫など、
大変なことになっている状況がニュースで流れ、
他人事ではないと身震いいたします。

子どもの時に報道されていた故郷の風景が蘇ります。
熊本も洪水は本当に多い地域でした。

治水に関しては
熊本城築城の、加藤清正公の時代からの課題、
一部はその時代からの対策で、防がれている地域もあります。

今回、被害に遭われている方、救助を待っておられる方には
お手伝いできないことが、心苦しいです。

私自身は、自分の家族や身の回りを、守るということに
徹しました。

家の周りの飛びそうなものを取り入れたり、停電対策など、
台風による停電と、断水を熊本で経験している身にとっては
当たり前のことが、関東の義理両親は、経験がないらしく、

驚くかな、台風=停電というのが、
ついこの前まで、結びついていないのでした。

鉢植えなど、外に出しておいたら危ない、ということを伝えたり
「大丈夫だよ、お店は閉まらないよ〜」と宣うところに、ぴしゃりと
「備えあれば憂いなしだから、買い物を済ませておくように」
と、口うるさい鬼嫁とかしておりました。

実際に、スーパーの棚から、水、カンズメ、パンは
ほとんどなくなったようです。危ない、危ない。

お隣さんの物干しの屋根が吹き飛んでしまったのは
気の毒なことでした。早速、ウチに破片を取りに来られました。

おかげさまで、我が家は庭の方の植木の多少の被害はありましたが
大事には至らず、ホッとしています。

台風にじっとしておく間は、読書の時間と決めていたのですが
まさに、暴風、大雨の中、読んだのがこちらです。

先のブログでご紹介した「空間の履歴」という概念を打ち立てた
哲学者の本を、図書館で借りたり、購入したりしておりました。

まさに、テーマが、自然災害。
『生命と風景の哲学』の本は、東日本大震災後に書かれ
そこには、
日本神話こそ、危機管理と自然災害への備えを含ませる思想がある
と書かれていました。


ここで、あっ!と気づきがありました。

森と樹と暮らしを繋ぐプロジェクトをはじめて
山に入っていき、環境の課題を少しは勉強し、

目に見えないものを考えさせられるようになり、
日本の神の存在や古事記などにも興味が出てきて、

そして、建築とは関係ない分野だけど、
と神話や神道も調べるようになり

ここで、日本神話が自然対策、まちづくりに活かせると知り、

興味の延長に、やはり私の生業の分野に
戻ってくるというところで、
腑に落ちたのでした!

建築→木→山川海→神社→神道→古事記→日本の神
→神話→自然災害対策→まちづくり→建築

一周したのでした!!(笑)

なぜ、興味がわいたのか、その赴くままに
図書館で本を借りての隙間勉強や、人との意見交換が、
この地点に降りてくるためだったとは!?

遠回りだったかもしれないけれど、
この哲学者の考えに納得するのには、きっとこの道筋が
必要だったのでしょう。

お導きに感謝です。

いつも、何かしらモヤモヤとしたものがあると
手当たり次第に、興味の幅を広げてしまう癖があるのですが

学びが一周することで、自分の血=知となり、肉=体験
となるように感じます。

書籍によると、
災害対策は、日本の神、スサノオを辿ると見えてくるそうです。
伊勢系のアマテラスが祀られている神社は軒並みやられているけれど、
スサノオを祀った神社は災害を逃れたなど。。。

神話や神社に祀られている神の名を知らないと
ピンと来ないですよね。

神様の名前が多すぎますからね、日本は。

読書術で習った、「本の中心点をとる」から
読み始めたところなので

まだ、読み途中のため、書籍の内容はどこかで、
感想をまとめたいなと思います。

遅ればせながらの哲学デビューとも言えますが
少しは自分の考えに深みが出るかしら?
と期待しています。

そして、今、関わっている
「熊本県五木村の木を使ったまちおこし」
もダム問題と切り離せないので、
この学びが、実践に活かせると信じています。


建築の新陳代謝は、文化を残せるのか?! 〜町並みや建物を保存する意味とは?〜

2019年09月14日 | まちづくり


熊本市では、交通センターの新ビル
サクラマチ熊本のオープンに、バス無料、
藤崎宮の例祭での飾馬と、
中心部が、熱く盛り上がった連休初日です。

屋上庭園にはくまモンも。


そんな中、建築士会では、
ヘリテージマネージャー(地域歴史文化遺産保全活用推進員)
の講習会が行われ、

伝統的建物の熊本地震被害調査結果と
修復の進捗報告の講義がありました。

私が修復に関わらせて頂いた建物も
事例として、紹介して頂きました。
ありがとうございます。

多くの方々の支援があり、
調査研究がある中で、
解体されゆく熊本の歴史的建物。

城下町である新町古町の伝統家屋の調査結果では
年々、取り壊される数が増えているという報告でした。


残らない、故郷の風景もあり、
切なくもなるのでした。

新しい商業施設が完成する裏で、
市民が保存活動をしていた
貴重な公共のモダニズム建築が、

耐震に多きな問題なくとも、
壊されゆく建物。更地となり、駐車場となってしまいました。

まちの風景とは?景観とは?
何なのでしょうか。。。

建築に、政治、経済が絡むのは、
生業として良く理解しているつもりです。

しかし、時の自治体の長の判断で、
こうも町並みが変わっていくとは。。。

建築が新陳代謝していかなくては
私たちの生業も成り立ちません。

しかし、これまでの町の形成や時代を反映する建築を、
簡単に取り壊し、地域の文脈を断ち切ることは
暴力的ですらあると感じます。

その中で、文化としての建築の価値をどう見出し、
伝えていくのか、本当に難しいと感じています。

↓講師が学生時代に関わられた保存運動の紹介。
一部は保存されました。



今回の講義では、とても良いヒントを頂きました。

「なぜ、歴史的な町並みや建物を保存することが求められるのだろうか?」

という問いです。

「記憶の継承とは?」

建築の専門家ではなく、哲学者(桑子敏雄)が著書「空間の履歴」の中で
こう述べられているそうです。

「空間に蓄積されたものを踏まえながら暮らすことと
そんなことも知らずに暮らすことでは、何が違うのか。。。

それは、とんでもない違いを引き起こす」と。

少し、略させていただいて紹介すると、テキストには、

「それは、人が自分というものを理解する度合いに違いをもたらす

「自分の履歴は、どういう場かによって、人の履歴も変わってくる、、、」

「自己の内に、空間の意味が組み込まれないと、それだけ内容の乏しい人生になる

とあります。

『空間に目を向けること=じつは自分を大切にすること』

という結論です。

そうなのですよ!

私が抱えていたもやもやが、これでスッキリしました。

空間を環境と置き換えても良さそうですね。

つまり、突然変わる風景の町並みでは、
人は生きて来た履歴を断ち切られるのですね。

だから、保存を求める市民活動が
自然を湧き上がってくるのですね。

活動に参加する人たちは
自分をしっかりと見つめている人たちとも言えますね。

住まいは、暮らしを重視した空間で
潜在意識の中に、大きな影響を及ぼす空間は
本物の材料でありたいと

自分の想いや方向性を
建築のものづくりに落とし込んでいるつもりでいました。

それでも、活動や行動の自分自身の原動力は
何であるのか、漠然としていたのです。

それがこうして、自己を見つめることに等しいと、
言葉にしていただくと、スッキリします。

哲学者の役割って凄いですね。

つまり、建築は、人の履歴をも形作るということですね。
心して、取り組まねば。

その他にも

「新しい建物だけではなく、
歴史的な町並みや建物が適度に混在することが
都市の魅力を増す」

と、講師の先生には、締めくくっていただきました。

学生時代に、都市計画や建築計画を学んだ時に
そんなの当たり前と、思っていたことを

こうして社会との関わり=建築を学んでいない方
とのコミュニケーションには、解りやすい共通言語が必要
という部分で四苦八苦します。

その部分を共有することが、
哲学者の言葉で、得られたことは大きい収穫でした。

まだまだ、勉強不足ですね。早速著書を拝読します。

これからも、建築士に何が出来るか
仲間と共に学び、考え
技術を身につけ、行動して行きたいですね。

講師の先生方、
事務運営の皆様ありがとうございました。

カラーバリアフリーを学ぶ「多様性のある多様な社会を生かす」

2017年08月30日 | まちづくり


昨日は、バリアフリーアドバイザーの研修として
「カラーバリアフリー研修会」が開催され、参加してきました。

(H28年の障害者施設の事件後にできた
「ともに生きる社会、かながわ憲章」のチラシも配布されました)

これまで神奈川県のバリアフリーアドバイザーとして、
施設のバリアフリー化を進める提案を数施設で行ってきました。

色に関しては、具体的には、県の「サインマニュアル」があり、
http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/42143.pdf
これをベースにチェックすれば良いのですが、

実際、色弱の方はどのように見えているのかなどは、
感覚として分かりにくく
一度、ちゃんと学ぼうと思っていたので、良い機会でした。

講師の方、会場運営の県の方々には感謝です。

昨日の研修では、
1)当事者の方の実際の色の見え方の説明。
2)当事者に色選びしてもらっている動画。
3)なぜ、見えにくさが起こるのかの医学的根拠から、理論まで。

教えていただきました。
その中で、印象に残ったことを記録してきます。

Point-1
『色に絶対ではないということ』 
(「色とは、感覚である」の説明を受けて)

動物によっても見え方が違うというのは常識になってきましたが、
人間が3色型であるのに対し、鳥は4色型、魚は多色型と
我々より、より色を見分けているようです。

Point-2
『いつ、自分が周りが当事者になるかもしれない』

色弱になるのは、遺伝的なものもあるが、
視力に問題があったり、網膜の病気にかかるとなる。
糖尿病など。。。だそうです。

日本人の男性20人に一人。
世界では2億人、AB型の血液男性人口に等しいそう。

この説明を受けると、
珍しいようで、身近なことなのだと分かってきますね。

Point-3
『カラー化がもたらした弊害がある世の中』

印刷技術の発展とともに、サイン、紙面、書籍など
印刷物のカラー化が進み、実はそのことで混乱を増やしているようです。

学校の教科書、赤線が読めない方は、
漢字の書き順が赤でかかれていて分からないし、
色分けしたものを数えなさいの算数の問題では、数えられない。

折れ線グラフも、色分けだと読み分け出来ないなど。

モノクロ印刷であれば、配慮されていた線種も、
今は色分けされており、逆に区別がつきにくくなっているとのことでした。

当事務所のロゴも、白黒でよかった!
以前は、事務所テーマカラーなどというものも考えたのですが、
候補色は、色弱の方には見分けにくい色だったのが、今回分かり、
やめておいてよかった、と、妙なところで、ほっ。

さらに、帰宅後、子どもの教科書を見たら、赤文字だらけ。

赤は見えない人もいるので、
教科書の大事な部分は、文字サイズアップやアンダーラインが有効だそう。

今では、CUD(カラーユニバーサルデザインの略称)
のマークをつけた教科書もあるそうなのですが、
我が子の学校では、全員には採用されていないようで、やや残念。

というのも、弱者に対する配慮は、
一般の方にも分かりやすくする点で有効だからです。

最後に、今回の学びの最大のPointは、

−1)『伝えやすくする』ことは、『世の中の暮らしを楽しくする』

です。まちづくりも、建築の施設も。

分かりにくさ、使いにくさは、やはり、なくしていきたいものです。

私はまちを歩いていて、不連続なカラー配置をみると
「色の洪水に溺れそう」と常に思ってしまうのですが、
サイン、チラシ、服装、グッズ、食品パッケージ、建築内装、
もう、ゴチャゴチャですよね。

色のない世界は、味気ないのかもしれません。
しかし、人のものづくりは進化しているようで、
複雑化が招く、後退部分もあるのかもしれません。

「私の時は教科書がモノクロで問題はなかったのですけどね」と
当事者でもある講師から漏れた一言が、物語っています。

建築のものづくりだけではなく
事務所の、パンフや、Webサイト、図面の表現などにも
分かりにくさのないように、
意識して色を用いたいと改めて考えさせられました。

これからも、学び続ける建築士でありたいと思います。

そして、

−2)『多様な社会で、多様性を認めながら、多様性を生かす』

バリアフリーアドバイザーとしては、この視点をしっかり持って
取り組んでいきたいと気持ちを引き締めました。

研修開催を、ありがとうございました!!

<補足>
講師の方の所属する
NPO法人「カラーバリアフリー機構」はこちら
気になる方は、チェックしてみてくださいね。
http://www.cudo.jp/