せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

一年点検_住み継がれることに感謝して

2018年04月02日 | A04監理_熊本県X邸古民家再生


先週末は、熊本の古民家再生の
お住まいの一年点検に伺いました。

と言っても、検査予定日の前日に、
私の不慮の事故で、延期になり

工務店さんのみに行っていただいて、
不具合があることろは、直していただいていました。

ですので、それ以外の箇所に関しての
実質は1年半点検でしょうか。

ハード面の今回の項目は、HPに掲載しました。
興味のある方はそちらも御覧ください。

http://www.mk-ds.jp/newworks/2018/03/post-39.html

このブログでは、お住まいの感想を綴ります。

奥様の話では、訪ねて来られた方が、
玄関を入って、古材のある
吹き抜けホールに目を見張られるとのこと。

再利用した、古建具も、
しみじみ「使って良かったわ〜」と言っていただけて

埃だらけの納戸から使えるものを
調査して、選定し、採寸して、保管して
足元に新材の袴を履かせて、
用いて良かった!と当時の苦労も吹き飛びます。

ご家族のお元気そうなお顔が拝見できて、
ほっとしながら、
初めてお会いした時のことなど思い出します。

その時は、住み継ぐのか、建て替えか、
とても悩まれていました。
初めて伺った時、ご家族のお顔も、
悩みの真っ最中といったところでした。

耐震、断熱、そしてバリアフリーが実現できるなら、
「本当は住み継たい、この家は気に入っている」と伺い、

その3点の実現に向けて、
工務店さんと一体となり、知恵を出し、汗をかき、完成し、
こうして、今、晴れ晴れとしたお顔で住んでおられることは
本当に嬉しいものです。

木製のオリジナル引き戸に網戸つき玄関周りは
訪ねる度に、褒めていただき恐縮します。



この部分は新設なので、設計図を描くのはたやすいのですが
現建物との高さ取り合い、梁との取り合い、屋根の納めなどは
大工さんとも何度も打ち合わせ
図面も3回ほど修正したでしょうか。。。



その辺りが、改修の手間がいるところですね。

施工の方にも手間をかけていただいた分、
満足していただけるものができたことは
こちらも、しみじみ良かったわ〜です。

前より若々しく見えるご夫妻のご様子に、
私もまた頑張っていこうと思えるのでした。

住み継いでいただくことに、感謝しながら
そして私もその一助となれたなら、嬉しいと
感謝の気持ちで、いっぱいの満月の夜の帰宅となりました。



追加工事に学ぶコト

2017年05月29日 | A04監理_熊本県X邸古民家再生



古民家再生の依頼主さまから、入居後「相談に乗って欲しい」のご連絡。
いくつか、追加工事の依頼でした。その工事が終わり、
日曜日は監理者として御在宅と伺って、確認に。

1)照明計画

現場にて減額した照明器具をやはり追加したいとのこと。

当初、ダイニングの照明計画は、
天井のダウンライト4つと、テーブル上のシーリングでした。

天井の段差や勾配は、再生なので、原型に合わせるしかなく
北側は、下がり天井なので、高さもなく
照度的にも、ダウンライトを中止しようか、という打合せになりました。

ダイニングの上は、
食事は温かみのある電球色で
新聞など読み物や書物をするときは、蛍光色でと、
切り替えられるシーリングを選定。

ですので、昼間の機能と
夜のリラックス空間の演出もバッチリの予定でした。

もちろん、そこは大変気に入っていただけたのですが、
壁が暗いのが気になるとのこと。

照度よりも、その「暗く感じる」という点が
現代的な暮らしでは気になられるご様子。

シーリングの高さを調整しに伺って様子は見ていたものの
やはり戻したいとのこと。結局2灯減額、を1灯戻すことに。


電気担当も、破格値でやってくださって。感謝!

明るくなって良かったとご主人。
折り合いがついた感じでしょうか。。。

2)濡れ縁下の排水。

屋根排水がどうしても濡れ縁の部分に来てしまう事例。
縁台の下に流して、砂利敷きに浸透させるという計画。

その計画は、変わらないのですが、
なんと、土間コンクリートに「苔が生えてしまって」のご連絡。

確かに、南側とはいえ、陰になる部分。
延長することに。
外構工事担当者さん、サービス工事でやってくださり、感謝です!


3)それから、元井戸の近くの雨水浸透桝

実は砂利が陥没した!の連絡。

陥没状態は以前見ていましたが、埋めたと伺っていた井戸の場所も
雨水の浸透で、下がるとは!?

驚いたのを覚えています。

やはり、水のルートというのはあるものです。
井戸の場所と桝の位置関係と工事の注意点を学んだ次第です。


それにしても、、、、依頼主さまが綺麗に住んでくださっているのが
嬉しかったですね!
快適な生活ができてこその古民家再生。

現場も、設計も監理も大変ではありましたが
本当に良かったなぁとしみじみ思うのでした。

関わってくださっている皆様に感謝して!

古民家再生は、実は未来を創っている。

2016年09月19日 | A04監理_熊本県X邸古民家再生

↑玄関屋根は新しく。表札とポストは再利用。取り付ける前。
外部の手すりは先代が使っていたものを再設置。

古民家再生の設計監理に取り組むことは、
「古き良き日本の伝統を守ること。」

と、捉えられがちだが、
私は、それだけではない大きな意味があると思っている。

住み継がれてきた民家に出会う時、
その空間に身を置くと
ご先祖の、
建物だけではなく、
家族を想う気持ち
地域を想う気持ち
に触れる気がする。

子どもの時は、古いものはダサくてつまらないと
思っていたけれど、
いろいろな経験をし、
コンクリート造から、最先端の建築を見て、
公共施設から住まいまで設計して

その中で、人間の本質がある感じた木の住まい。
特に、日本伝統的な家屋に、それが顕著にあると思う。
だから、関わらせてもらう。

そして、古い住まいを活かせるものなら生かしたい
というお話を伺いながら、

この建物を、次世代に住み継がれる住まいに改修することは
建物を生かしながら、次の世代がここで暮らし、
家族を守り地域を守っていくための
「未来を創っているのかもしれない。」

そんな風に思えてくる。

「愛着」という言葉だけではない。

そこには、
個人の住みたいという思いだけではなく、
ご先祖を敬う気持ちから、
地域を活性化したいという気持ち、
誰かのために先祖から受け継いだものを
生かしたいという気持ち、

温かな、そして、大きな愛がそこにあると感じるのだった。

だから、設計も工事監理も新築より、手間も時間もかかり
見えない部分には不安も残しながら、

それでも、いえいえ、ご先祖様がきっと見守ってくださると
自分に言い聞かせ、取り組む。

今回、完成したX邸は、途中地震もあり、関わった皆が
戸惑い、不安や心配も抱えながら
乗り越えて、工事を進め、改修してきた住まいだ。

依頼主、施工者、設計者が三位一体となって
完成を迎えたとも言える。

本当にありがたいことである。

昨日は、そのご心配も絶えなかった依頼主さまが
お祝いの席に、私たちを呼んでくださった。

新しく入った仏壇に手を合わせながら、心の中で
ご入居の遅れたことをお詫びしながら、
工事を最後まで守ってくださったことに感謝のお礼を伝える。

会の最初にご主人のご挨拶で、
今日は、特別な記念日と重なり、先祖も喜んでいるだろうと伺う。
その導かれたような偶然に、小さく鳥肌も立ちながら、嬉しさを噛みしめる。

奥様の気持ち良さそうなお顔。
ご主人の晴れやかなお顔を拝見して
そして、次世代のご家族の笑顔にも触れて、

よかったなぁ〜

と、しみじみ噛み締めて帰宅した
満月の夜です。


古民家再生竣工引渡し_熊本地震を乗り越えて

2016年09月12日 | A04監理_熊本県X邸古民家再生


月曜日には、ブログを更新する!と宣言した先週。
一週間が早いですね。

通常であれば、このブログでも監理中の工事の進捗は
お伝えしてきたのですが、地震後、すっかり、更新が滞りました。

工事内容が変わって、地震後の対応が怒涛のように過ぎて行ったのです。

熊本の古民家再生は、監督さんとの二人三脚。
大工さんはじめ、左官屋さん、屋根屋さん、外構屋さん、
電気設備工事に、、と多くの方の汗の結果。

監理に伺った回数は、引渡日までに、実に45回でした。
これまでの住まいでは一番多い回数です。

通常でしたら、45ブログあるわけですが、、、
当日の監理報告や現場指示事項のまとめを優先し、
ブログ更新は後回しになった結果、
ブログ更新まで至らなかったです。ごめんなさい。

前置きが長くなりましたね。
それだけ、地震も含め大変な現場であったということです。

竣工引渡しの写真はこちら
http://www.mk-ds.jp/newworks/2016/09/x.html

工務店さんも困難を乗り越えて、
一つ、自信につながっていることと思います。

次々に修復する現場はあります。
待った無しです。

これからもプロジェクトのブログ更新は適宜になること、
お許し下さいませ。

倒壊せずにいてくれてありがとう!

2016年04月29日 | A04監理_熊本県X邸古民家再生


大きな地震があった場合に、
剛性の強い土壁や、外壁をまず崩落させ、

建物の骨格である軸組は粘り強さで、
倒壊を防ぎ、人命を守る。

それが、伝統構法の建物のメカニズムである。

まさに、そのことを
今回の地震で目の当たりにした。

震度7を観測した震源地から、9kmしか離れていない現場。

本震を受けた時は、
工務店、依頼主共に、「崩れているかもしれない」
と、思われたそうだ。

設計者自身は、
耐震補強の検討を重ね、ある程度施工も進んでいたので
自分も夜中の震度6弱に耐えながら、
自分を信じようと、念じていた。

しかし、なにせ施工途中、大丈夫という確信はなく
被害は出るだろうと、覚悟はしていた。

結果は、倒壊を免れており
その後の当方の被害状況確認では、
耐震補強してきたこところが、効いていたことが分かり
また、基礎とのつながりをもたせていないので
地震力がそれ以上、建物に入力されていない跡、
基礎と柱のズレが見られた。

今回の未改修部分や、古い瓦に被害はあったものの
倒壊させないという目的が達成しており
設計内容が間違っていなかったことに
本当に安堵したものだ。

もちろん、私だけの力ではない。
確かな施工があってのこと。

構造のアドバイスを大学の研究者にいただいたり
付き合いのある構造設計者の助言あってのこと。

手間暇をかけてもらった補強とやり直し。

未施工だった部分では、外壁崩落の被害もあったので
もう少し、工事が進んだタイミングだったら、、

と、思わずにもいられなかったが
それでも、これは奇跡かもしれないと
思うのだった。

川に近く地盤も決して良くない。

そこで、今ある基礎、築130年倒れなかった建物の
石積みの基礎をそのまま使ったのである。

そこなら、圧密沈下も十分に起きていると考えられ
地盤も安定しているとの判断。

ご先祖が残してくれた基礎に、構造の軸組に感謝である。

本当に、ありがとう!
倒れないでいてくれて!!
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詳しいレポートを、HPにアップしました。
興味のある方は、どうぞご覧ください。
http://www.mk-ds.jp/newworks/2016/04/post-37.html
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追伸:工務店の監督さんは、全震直後の現場に確認に行かれて。
到着したら、震度6強の揺れ。

投光器を当てて確認した揺れの様子は、
なんと左右50cmは上下階で差があったそう。

地震時に建物は、上階と下階で逆方向に揺れるのだが、
まさにその状態をご覧になったそうだ。

もうダメかと思ったけど、朝になったら戻っていた。
よく戻ったものだと感心したそうだ。

これも、ただ固めるだけの耐震ではない施工、
古民家の粘り強さを証明したとも言えるのかもしれない。

もちろん、もうこれ以上強い地震は来ないでね。
2回で十分です。