せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

もの選びも人ありき

2007年10月25日 | a07監理_滋賀県 東近江市M邸新築工事

住宅の中で毎日手に触れるもの、それは建具や家具の取手である。
金物や木製、時には革製もある。小さなパーツ、住まい全体で言えば部分的なものだがその選定やデザインには気を遣う。凝れば凝る程費用もかかるので、毎回同じデザインでほとんど選定しないというスタンスも世の中にはある。

071025設計事務所のスタイルが決まっていたり、設計者の好みが限定されている場合だ。私はもちろん、これは選ばないないなぁというものはあるが、毎回その住み手のイメージを大事にしている。もの選びも人ありきという考えである。今回の設計デザインテーマは、外身はシャープだけど、中身は温かくというスタイル。金物もシンプルでクールだけど、なんとなく柔らかさがあるという基準で選んでみた。
(写真:金物のショールームで色や手のなじみ具合を確認)


監理者検査

2007年10月24日 | a06監理_神奈川県 横浜市M邸改修工事

時には間違いも、、。
現場では様々な職種が関わり、設計通りに行かない部分が出たり、人がつくるものなので間違ったりうまくいかなかったり、画いたそのまま行くなんてことはまずほぼない。けれどその中でどんなふうに工夫してやりくりするか、あるいはより良くするかが監理の要と思っている。そして現場にもお施主さんにも負担のかからない方向を探っていく。
さて、今回の現場はリフォームなので出たとこ勝負の部分もややあったが、それ程問題もなく来ていた。ところが監理者検査で一点間違いを発見。カーテンの幅寸法が間違って制作されていた。フラットカーテンなのでこんなものと言えばお施主さんには分からないかもしれない。生活に支障はない。でも設計では1.3倍ヒダになっており見積金額も然り。ということは製作段階の間違い。今回の施工者さんは自ら直すと言って下さった。もし監理者のいない現場なら、、世の中にはそのままスルーする現場もあるかもしれない。今回のことは小さなことでもきちんと確認することは大事かもしれないと、改めて自分自身にも言い聞かせる出来事だった。


丁寧な現場

2007年10月23日 | a07監理_滋賀県 東近江市M邸新築工事

先週小雨で気温が下がった中、現場の内装工事のチェックに足を運ぶ。
現場監理とは、ともするとあら探し(手抜きがないか)間違い探し(図面通り出来ているか)になりがちだが、今回の現場は行く度に「ここまでやってくれるなんて」とちょっと感動する現場である。ものづくりが好きな職方が集まっているのか、お施主さんの人柄か、設計者が求める以上のことを丁寧にやってくれるのである。(そのためちょっと工期が遅れているのが難点ですが)設計者でなければ気がつかないような些細なことですが、今回はそれを少し紹介。現場って当たり前のように見えて実はなかなか出来ない部分って多いんですよ。
こういった丁寧な仕事に通じるための監理者の心得としては、見積が上がるので図面では表現を抑えていた部分や、設計の意図や想いを監督さんに語っておくこと。コミュニケーションがうまく行くと何だかその先まで理解してくれるようです。

Img_0011 バルコニーの腰板 直接手を触れるところでないので、角はRを付けなくても問題なし。でもここでは、きれいに丸く面取りされていました。(小さいお子さんがいるからと大工さんの配慮)


Img_0015 ダクト周りのシール、外壁の凹凸に合わせてしっかり密着。雨漏れ水漏れの原因は多くがシールの切れから。ここは必ずチェック。(今回シールしやすさを考えて角形のベントキャップを選んで良かった)


Img_0006 収納量アップ!設計では引戸があるため畳み下の収納は3カ所だったのに、現場では4カ所に(今回の設計は様々な適材適所の収納を取るための工夫が盛り沢山、口酸っぱく言っていたお陰も?)


家具の設計

2007年10月11日 | a06監理_神奈川県 横浜市M邸改修工事

リフォームの現場の造り付けの家具の設置が完了した。リビングのTV台とパソコンデスク。TV台にはDVDやVTRが入れられる仕切り付きの引出しと、リビングで遊ぶ子どものおもちゃ入れ用のカゴを入れるスペースなど市販の家具にはない工夫も凝らしてみた。パソコンデスクには、はさみやカッターなどちょっと危ないものが子どもの手の届かない所に置けるよう吊り棚も付いている。シンプルな家具だが、小さいお子さんがいてもリビングで気持ちよく過ごしたいというのが今回のテーマである。
071011家具の色合いは既存の建具や床の色等に合わせて検討。新築のように全く同じに出来ないので、その辺りは若干の苦労もあるが、何とか雰囲気をそろえることができたかなと思う。今後、選定した家具やカーテンが取り付くと、また全体の雰囲気が出来上がるだろう。それも楽しみである。


本物を見極める

2007年10月02日 | デザイン

「潜在自然植生」理論の生態学者「宮脇 昭氏」の言葉の中で私が感銘を受けたものに、「本物と繋がれ、本物を見極めよ」というものがある。また、「大事なのは、いかに本物であろうとするか、そして、いかに本当の師や仲間とつながっていくか」と説かれる。自分の仕事のスタイルに迷った時、判断に悩んだ時、この言葉に励まされる。先日、インテリアのコーディネート依頼のため、家具店を巡っていた時もこの言葉が浮かんできた。
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実は前々からとても気になっていた家具があった。国産のソファである。これまで家具選びを何度も経験して、ソファは外国産にかなわないという自身の考えが決まっていた。しかし、カタログで一目見た途端、このソファはもしかしたらこれまでの私の考えを覆してくれる物かもしれないと気になっていた。
和なテイストを残しつつ、洗練された現代的デザイン、そして本物の材料。

ところが、以前カタログで依頼主に提示して断られた苦い経験があった。カタログではすっきりしたデザインがかえってごつく見えてしまうのか、別の家具にしたいと言われ、仕方なくその方がご自身で家具店で見つけられた物を購入された。
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今回は実物を確かめ、座り心地を味わい、手触り、メンテ等の機能様々な要素を比較するうち、一押しの候補になった。予想以上の素晴らしさに私は前回もっと強く進めておけば良かったと深く後悔した。そして、今回は自信を持って依頼主に提案した。ところがである。またしても、別のソファがいいとおっしゃる。

依頼主がカタログ等の写真の印象でこちらが良いとおっしゃるソファは、私自身が実際に座った時、先のソファの座り心地との落差に愕然としたものであった。その時に先の「本物を見極めよ」という言葉を思い出していた。またしても断られて、私の視点や感性は間違っているのだろうかと落ち込んだ。しかし、自信があったので、ぜひ座り心地を比較するよう依頼主に懇願。

結果は、、
座り心地の良さにすぐに購入したい、他の物はもう見なかったとの連絡。
よかったなぁ。理解して頂けたことと、そして何より依頼主の手元に「本物」が届くこと。
これからも迷う時、本物であるかどうかで接していきたい。
(実際に家具が搬入されたら写真をアップ予定です)