せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

木材を活かすなら「神は細部に宿る」を実践。

2018年07月02日 | A02監理_東京都町田市R店改修工事



関東での仕事の更新が出来ていなかったので
久しぶりに綴ります。

写真の木材、さて、これは何でしょう?

製材所での一枚。
一見すると、ただのコの字の木枠です。

改修工事のために、設計した木枠の制作の様子。

信頼する東京の製材所さんが、品物の発送前に、
加工完成の写真を送ってくださったものです。

よ〜く、見てくださいね。
もう気がつかれましたね。

左右で厚みが違うことを。

「3Mの木枠に神を宿す」

というのは大げさかもしれませんが、
大いなる工夫がされています。

目的の背景をまずお知らせすると、

室内の改修相談で、
床から天井までの壁の小口が、左官仕上げのため、
ボロボロになっているところがありました。



また、塗り直しても、ぶつけたり
引っかいたりして、きっと傷がつくのだと思われます。

『木を使うチャーンス!』とばかりに、モクを提案。

もちろん、木も柔らかいので、傷は多少つきますよ。
欠ける事もあるかもしれません。

それでも、左官のように、ハゲて下地が見えて見苦しい。

ということには、なりません。

木が傷ついても、無垢材なら、
中も木なので、さほど気にならないのです。

ただ、天井高さが3Mで、反対には階段のささらもあり、
巾木などの取り合いを考えると、壁の厚みまちまちで
同じ厚みの枠では納まりません。



そこで、大変に面倒ではありますが、
左右厚みの違う枠の加工を製材所さんにお願いし、

細かい厚みの違いは、現場で加工をお願いし、

取り付けていただきました。


天井部はスッキリと、最初からまるであったように。


足元も、厚み処理をうまく行って、取ってつけたようにならない工夫。

「綺麗に出来てる!」と依頼主さま。

「良かった〜」と胸をなで下ろします。結構小心者です。

なぜなら、
「こんな施工はできない。取り合いは、左官工事でやってくれ」

と、一度は最初の施工者さんに断られているからです。

え〜、困ったなぁ。

図面に描くことは出来でも、施工ができないのでは
しょうがないのです。

出来るためにはどうするか、
何を譲るか、あとどこを工夫すれば良いのか、、、、
色々と協議したり、説得したり。

私も粘ります。木枠1本でも!!

その想いは、製材所さんも同じ。

ですので、1本からでもオーダーで加工してくださいます。

木のファンが増えてくれることを
願いつつ。。。こんなことを積み重ねている現場です。

依頼主さまは、幾度かの新築や改修を経験し、
「どうしても、気に入らなくて、やり直しが出る」

と、おっしゃっていました。

「あなたと出会ってから、手直しがなくて助かる」と。

すでに幾つかの細かな木の無垢材での改修をご依頼いただき
おかげで満足頂いているのも、

ディテールの検討をちゃんとやっているかどうか。
図面を描いているかどうか。

これに尽きると、最近特に思います。

そして、良材をきちんと手配してくださる製材所さんと
手抜かりなく施工してくださる職人さんの
ご協力のおかげです。

当初は、木材の乾燥が間に合わず、
ご希望の施工日に添えなくなりそうな
こともありました。

ですから、最近は、依頼主さまも、早めのご希望を連絡してくださるし
私は、一番最初に、製材所さんに木材のストック状況を確認してから
設計を引き受けるという流れを掴みました。

「神は細部に宿る」の言葉を、私に教えてくれたのは
建築家の巨匠 ミース・ファン・デル・ローエ です。

故人ですので、建築のVTRでしたが。
写真でその静謐な建築の美しさに息を飲み,

スペインにある彼の作品(パビリオン)に実際に立った時は、

それはそれは、さりげなくて。

『美しいデザインは、さりげなさなのだ!』

と、感銘を受けました。

さりげなさを、見えないところで緻密に計算し、
実践する。

そのことが、「神を宿すことなのだ」と、震えたものです。

巨匠にはそうそう追いつきませんが、
コツコツと実践することで、

『さりげなく、美しいもの』を創っていきたいですね。

そして、木を活かすなら『細部の手配も大事』でしょうか。

木は、生き物ですからね〜。

『木を生き物として扱え』という教訓も、いつも自分に課しています。

この木枠も、乾燥や湿度の変化で、伸び縮みが生まれます。
その部分もある程度、予測しておかないとなりません。

無垢の木を扱うとき、
工業製品にはない、厄介さと、面白さとの
隣り合わせの仕事を、これからも、楽しんで参ります!

余談:
今夜は、決勝トーナメント日本の第1戦目。
日本中が夜更かしのことでしょうか。。

サッカーの試合運びも、勝利は緻密な計算と、
諦めない粘り強さにより、もたらされるものだと
思っています。

サムライブルーが、持ち味を最大限活かせますように!
今夜はこの辺で。

木を美しく見せる隠し技

2017年07月31日 | A02監理_東京都町田市R店改修工事

⇧柱の根元に、事前に加工がされているのがわかりますか?
ボルトの頭と、プレートを仕込むためです。


今回の改修工事のご要望は、
木でなるべくスッキリと間仕切りを作りたいとのこと。

「今ある天井側の梁から、吊る程度で出来ないか?」
とのお話でした。



ところが、間仕切りを設置したい位置は
天井側の梁とは、構造的な通り芯のズレがあるため、
持ち出してつけなくてはならず、
構造的には、振れ止め程度にしか効きません。

これから来るであろう地震のことや
出入りで吊り部材に荷重がかかり、たわむことを考えると

構造的な考えをクリアしないと提案できない
というのが設計者の考えです。

そこで、間仕切りを柱付きでご提案すると、

「将来、間仕切りの取り外し視野に入れで、
なるべく、既存の建物を傷めたくない。」

とのご要望で、一旦、見送られました。

パーティションの案もご提案したり、、、

それでも、使い勝手を考えると、、
やはり開け閉めできる間仕切りが良いとのこと。

結局、構造の心配ゆえに、

「柱を立てさせてほしい」
(設計者の都合ですが、、、責任とも言えます)

とお伝えすると、納得してくださり、施工に取りかかれました。

クライアントさんは以前、直接施工者に頼んで、
結局使えない空間になったという経験をお持ちなので、

建築士のいうことを聞いてくださるというのも
大きいですね。

時間も費用もかかりますが、、、。

実際出来上がってみて、とても良かったとご評価いただき、
ほっとしているところです。

プロに頼んでいただく意味は、どこにあるのかというと

やはり、小さな箇所でも、

1)人の生命の安全を脅かさない空間であること、
  こちらもブレてはいけないということ。

2)そして、緻密な計画。
  スッキリ見せたい=ディテールをちゃんと考える

3)現場にきちんと伝えて施工してもらう
  目的を共有すると、職人さんもアイデアを出してくださり
  
より、良いものになります。

⇧柱のピンは施工者の提案

⇧埋木で金物を見せないのは、監理者の指示

暑さの最中、丁寧な隠し技で対応くださった、
大工さんはじめ工務店さんには感謝です。

これからも、考えがブレることなく、
手を抜かずに、コツコツとご要望に対応できれば幸いです。

ディテールスケッチや裏側の出来上がった様子など
見てみたい方は、当事務所のHPも良かったらご訪問くださいね。
http://www.mk-ds.jp/newworks/2017/07/20177-r.html

接着剤なしの木製建具

2014年02月20日 | A02監理_東京都町田市R店改修工事

接着剤なしの木製建具なんて制作は難しいだろうな。。。

しかも縦張り!!

昨年、見学した伝統工法を用いた住まいで、素敵な柾目板の家具の扉を拝見して、おお===、ヒントがあるかもしれないと喜んだのもつかの間、

デティールがどうなっているかまで、チェックしたんですけど、
やっぱり接着剤が使われていました。当たり前なのかもしれません。

今回、部屋を使いながらの店舗の改修。

しかも!

アトピーの患者さんのカウンセリングルームとお聞きして、合板接着の建具(←特に臭います)を提案する訳には行きません!

無農薬野菜や合成保存料の入っていない食品のように、建築にも接着剤がないもの、健康に良いものを、当たり前に作りたい!

横板張りの落とし込み工法なら、過去にも接着剤なしで設計の経験があるので、ご提案しました。

「縦張りが良い」の回答。

そう、意匠的にもこだわりたい。

床から天井までその高さ、2.4M.
↓最初のスケッチ、意匠的にOKが出てから、図面を描きます。

140220_5
無垢の木でたわまないか?そらないか?

心配は尽きません。

しかし、この頂いたチャンスは活かしたい!

建具屋さんに、材木屋さんに、そして施工担当者にもご相談して、、、、

出来ました!!!(写真は施工途中)

素敵じゃありませんか?
↓木材は多摩産の認証材モミの木。

140220_3
って、現場に行くのは来月なので、施工報告の写真と依頼主様からのお褒めのお言葉からの判断なのですけれど。

無垢の建具、木は呼吸するので、使いながら、ガタツキ、そりなども出てくるかもしれません。

それ以上の価値をご提供出来れば幸いですね。

関係者のみなさま、そして、私にチャレンジの場を提供下さった依頼主様には本当に感謝しています。

建具のデザイン、納めを考えるのは大好き!

毎回違うことに挑戦したい私は、こういうお仕事が大好きです!

このご縁を活かして、どんどん、木製建具の設計依頼を引き受けたいと思います。

外回りも国産木材のスギで設計していますよ~。薬剤に頼らない腐らない材を用います。
これも別の建て主様からご依頼頂いた設計で、国産木材にこだわる私のポリシーを活かさせてもらいました。

これからは、更に、縦でも、横でも、外でも、どんとこ==いですね、笑。


*ブログへのプロジェクト掲載は依頼主様のお断りを得てから掲載しています。
ありがとうございます!!