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関東での仕事の更新が出来ていなかったので
久しぶりに綴ります。
写真の木材、さて、これは何でしょう?
製材所での一枚。
一見すると、ただのコの字の木枠です。
改修工事のために、設計した木枠の制作の様子。
信頼する東京の製材所さんが、品物の発送前に、
加工完成の写真を送ってくださったものです。
よ〜く、見てくださいね。
もう気がつかれましたね。
左右で厚みが違うことを。
「3Mの木枠に神を宿す」
というのは大げさかもしれませんが、
大いなる工夫がされています。
目的の背景をまずお知らせすると、
室内の改修相談で、
床から天井までの壁の小口が、左官仕上げのため、
ボロボロになっているところがありました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/68/80/a00ed30bb3fd36eb388d3ee69aac4000.jpg)
また、塗り直しても、ぶつけたり
引っかいたりして、きっと傷がつくのだと思われます。
『木を使うチャーンス!』とばかりに、モクを提案。
もちろん、木も柔らかいので、傷は多少つきますよ。
欠ける事もあるかもしれません。
それでも、左官のように、ハゲて下地が見えて見苦しい。
ということには、なりません。
木が傷ついても、無垢材なら、
中も木なので、さほど気にならないのです。
ただ、天井高さが3Mで、反対には階段のささらもあり、
巾木などの取り合いを考えると、壁の厚みまちまちで
同じ厚みの枠では納まりません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/18/fa/2719ce459cf65c8d3993cfd12613ebde.jpg)
そこで、大変に面倒ではありますが、
左右厚みの違う枠の加工を製材所さんにお願いし、
細かい厚みの違いは、現場で加工をお願いし、
取り付けていただきました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2e/e2/7777428531e7da25449a2c8cb63886df.jpg)
天井部はスッキリと、最初からまるであったように。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/15/8e/8540a67c55773fb5c9fcd4fcb2ade1fb.jpg)
足元も、厚み処理をうまく行って、取ってつけたようにならない工夫。
「綺麗に出来てる!」と依頼主さま。
「良かった〜」と胸をなで下ろします。結構小心者です。
なぜなら、
「こんな施工はできない。取り合いは、左官工事でやってくれ」
と、一度は最初の施工者さんに断られているからです。
え〜、困ったなぁ。
図面に描くことは出来でも、施工ができないのでは
しょうがないのです。
出来るためにはどうするか、
何を譲るか、あとどこを工夫すれば良いのか、、、、
色々と協議したり、説得したり。
私も粘ります。木枠1本でも!!
その想いは、製材所さんも同じ。
ですので、1本からでもオーダーで加工してくださいます。
木のファンが増えてくれることを
願いつつ。。。こんなことを積み重ねている現場です。
依頼主さまは、幾度かの新築や改修を経験し、
「どうしても、気に入らなくて、やり直しが出る」
と、おっしゃっていました。
「あなたと出会ってから、手直しがなくて助かる」と。
すでに幾つかの細かな木の無垢材での改修をご依頼いただき
おかげで満足頂いているのも、
ディテールの検討をちゃんとやっているかどうか。
図面を描いているかどうか。
これに尽きると、最近特に思います。
そして、良材をきちんと手配してくださる製材所さんと
手抜かりなく施工してくださる職人さんの
ご協力のおかげです。
当初は、木材の乾燥が間に合わず、
ご希望の施工日に添えなくなりそうな
こともありました。
ですから、最近は、依頼主さまも、早めのご希望を連絡してくださるし
私は、一番最初に、製材所さんに木材のストック状況を確認してから
設計を引き受けるという流れを掴みました。
「神は細部に宿る」の言葉を、私に教えてくれたのは
建築家の巨匠 ミース・ファン・デル・ローエ です。
故人ですので、建築のVTRでしたが。
写真でその静謐な建築の美しさに息を飲み,
スペインにある彼の作品(パビリオン)に実際に立った時は、
それはそれは、さりげなくて。
『美しいデザインは、さりげなさなのだ!』
と、感銘を受けました。
さりげなさを、見えないところで緻密に計算し、
実践する。
そのことが、「神を宿すことなのだ」と、震えたものです。
巨匠にはそうそう追いつきませんが、
コツコツと実践することで、
『さりげなく、美しいもの』を創っていきたいですね。
そして、木を活かすなら『細部の手配も大事』でしょうか。
木は、生き物ですからね〜。
『木を生き物として扱え』という教訓も、いつも自分に課しています。
この木枠も、乾燥や湿度の変化で、伸び縮みが生まれます。
その部分もある程度、予測しておかないとなりません。
無垢の木を扱うとき、
工業製品にはない、厄介さと、面白さとの
隣り合わせの仕事を、これからも、楽しんで参ります!
余談:
今夜は、決勝トーナメント日本の第1戦目。
日本中が夜更かしのことでしょうか。。
サッカーの試合運びも、勝利は緻密な計算と、
諦めない粘り強さにより、もたらされるものだと
思っています。
サムライブルーが、持ち味を最大限活かせますように!
今夜はこの辺で。