この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

プロットが破綻した傑作、『ダークナイト・ライジング』。

2012-08-01 22:03:53 | 新作映画
 クリストファー・ノーラン監督、クリスチャン・ベール主演、『ダークナイト・ライジング』、7/29、ワーナー・マイカル・シネマズ筑紫野にて鑑賞。2012年28本目。


 マーク・ウォルバーグ主演のアクション映画に『ミニミニ大作戦』という作品があり、この作品のアマゾンでのレビューを読むと、評価の低い人は判を押したように「タイトルがダサい!」と邦題を叩いています。
 自分に言わせれば、邦題なんて二の次、三の次で、この作品の欠点を一つ挙げるとすれば、それはプロットが破綻している、ということです。
 主人公チャーリーの指揮の下、六人の仲間で見事強奪した50億ドルの金塊を、エドワード・ノートン扮するスティーヴは、独り占めするためにチャーリーたちを裏切ります。
 なぜスティーヴは裏切ったのか?
 驚くべきことにスティーヴの裏切りには特にこれといった理由がないんです。
 50億ドルなんて大金は、六人で分けたって一生遊んで暮らせるだろうに、どうして仲間を裏切ってまで独り占めしようとするのか、まったくもってわけがわかりません。それも仲間を始末するためにチンピラまで雇って。彼らに払う報酬も安くはないでしょうにね。
 重要な登場人物の行動が、まったく意味不明、理解不能なのですから、これはもうプロットが破綻している、としかいいようがないです。

 しかし、プロットが破綻しているから、『ミニミニ大作戦』はまったく観る価値のない映画なのかというとそうではありません。
 個性的で魅力的なキャラクターたちやキレのあるカーアクションなど、自分は大好きな映画の一本です。

 さて、クリストファー・ノーラン監督が満を持して世に送り出した『バットマン』三部作最終章、『ダークナイト・ライジング』は、多くの映画ブロガーや映画批評家に指摘されているように、思いっきりプロットが破綻している作品だと思います。
 本作の何が問題なのか?
 それは本作の敵役であるベインが、結局何をしたいのか、何を考えているのか、本作を観てもさっぱりわからない、ということです。
 ゴッサムシティを支配したいのか、それとも破壊したいのか。
 またゴッサムシティに住む人々に革命をもたらしたいのか、それとも彼らを皆殺しにしたいのか。
 彼の行動が矛盾に満ちていて、観ている途中で最強の敵役であるはずの彼が、段々と馬鹿に見えてくるんですよね。
 ベインは警察を罠にはめて三千人の警官を地下道に生き埋めにするんですけど、そこまでするならいっそのこと毒ガスでも撒くか、強力な爆薬でも仕掛けて、三千人の警官を皆殺しにすればいいじゃんねぇって思っちゃいます。
 同じようなことは正面からの肉弾戦で一度はぶちのめしたバットマンにとどめを刺さなかったことにも言えます。
 どうしてあそこでバットマンにとどめを刺さないのか、、、正直よくわかりません。
 復活したバットマンに逆襲されたのであればなおさら。
 あそこでとどめを刺していれば、ねぇ。

 といった具合に、本作は決して重箱の隅とは言えない矛盾を孕んだ作品だと言えます。
 じゃあ、本作は観る価値のない作品なのか?
 もちろん、決してそんなことはありません。
 自分なんて冒頭のハイジャックシーンだけで、充分鳥肌が立ちましたよ。
 あのシーンがCGではないなんて!!
 それだけで、クリストファー・ノーラン、スゲーと思っちゃいましたもん。

 あまり内容に触れるのもなんなんですが(充分触れてるかもしれないけど)、どうしても触れなければいけないことがあります。
 それはラストシーンで、執事のアルフレッドがパリかどこかの街中で見たものについて。
 あれは単純にアルフレッドの罪悪感が見せた幻だと自分は解釈したのですが、現実だと思った人が案外いてビックリしました。
 あれが現実だとしたら、バットマンはあの切羽詰まった状況下で、どこかに一度着陸し、一度も試運転したことすらない自動操縦装置に命運を託し、さらに自分が無事戻ったことを心配しているであろうアルフレッドには一切知らせず、どこかの外国でねーちゃんとイチャイチャしてる、ってことになるんですよ?
 それは絶対ないって!!!!
 ノーランの前作『インセプション』でも同じような結末でしたよね。
 一見すると主人公のコプの望みがすべて叶ったハッピーエンドに思えるけれど、よくよく考えるとすべてはコプの見た幻だった、という結末でした。
 だから、どう考えても『ダークナイト・ライジング』でも結末の解釈は間違えようがないと思うのですが、、、あのラストを現実だと解釈した人の多さに、なるほど、人と人とは理解し合えないものなのだな、と思いました。
 
 
 お気に入り度は★★★★、お薦め度は★★★☆(★は五つで満点、☆は★の半分)です。

ps.あと、本作での核兵器の扱いのぞんざいさを問題視している人も多く見かけるけれど、自分は気にならなかったけどなぁ。
 アメリカ人だからぞんざいだ、っていうんじゃなくて、単にフィクションだからじゃないの?
 日本では、実写ではそこまで規模の大きい作品は作られないから、主にアニメでだけど、核兵器や原子力がすごく雑に扱われてきたけどね。
 言うまでもなく鉄腕アトムの動力は原子力だし、『聖戦士ダンパイン』では核兵器を搭載したジェット戦闘機が特攻するし、少し前の作品ではジャイアントロボの動力もやっぱり原子力だったしね。
 フィクションの世界でのぞんざいさが許せない人って、現実と創作の境目が見分けられないんじゃないかって思うよ。
コメント (22)
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