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事故に遭ってから数日。
ベッドに寝転んで、病室の天井ばかりを眺める日々。
なんで・・・今、自分は・・・ここにいるのか?
なんで・・・今頃は・・・北海道を・・・走っているはずなのに。
なんで・・・なんで・・・なんで。
たった一秒。一秒にも満たない時間でいい。ほんの瞬間、ずれていれば、僕は事故には遭わなかった。遭いっこなかった。
寸分も違わず、その瞬間にその場所に居てしまったがために、僕は事故に巻き込まれた。
僕の人生は変わった。
北海道行きのフェリーに揺られているはずの時間に、新潟の病院のICUに閉じ込められていた。
僕の人生は変わった。
斜里町辺りで、ジャガイモ堀りの仕事を見つけているであろうはずの時間に、全身麻酔で開胸手術を受けていた。
僕の人生は変わった。
息苦しい酸素マスクを口と鼻にはめられる。尿は、はめられた管から自動的に排出される。点滴のチューブから延々と注がれる必要不可欠な栄養分。
僕はただ力なく頷くだけの、髪の長い瞳の濁った人形だ。
自分がなぜこかにいるのかがわからない。わからないまま、生かされている、右目が血の色で濁った人形だ。
僕は悔しかった。とても。
なぜ、ここにいるのかはわからないが、居たかった場所に居られてはいない。予想外の場所だ。
僕は高速道路を時速80キロで走っていただけだ。イージーライダーよろしくのんびりと。
フェリーが出発する時間まで、だいぶ余裕があったはずだ。眠くもなかった。
赤城のサービスエリアでガソリンを入れた。ガソリンスタンドのおじさんにこう言われた。
「すごい荷物だね?」「北海道?」「あぁ、新潟港からね」「えっ、二ヶ月も?」「それじゃあ、この荷物じゃ少ないくらいだね」「気をつけてね!」
この会話が、あと二言多かったら、二言少なかったら、僕は事故に遭わなかったのかもしれない。
トイレによろうかな?まぁ、新潟に着いてからでいいか・・・。
トイレに寄っていれば、僕は事故に遭わなかったのかもしれない。
僕は、ずっと考えていたんだ。
どうして、僕が事故に巻き込まれてしまったのか。
僕は事故に遭わなければならなかったのか。
僕は、ずっと考えていたんだ。