ライオンの詩 ~sing's word & diary 2

~永遠に生きるつもりで僕は生きる~by sing 1.26.2012

お見舞い金翼ライダー。最終回

2014-09-27 12:04:37 | Weblog


豊頃のノノサン宅にて。

ノノサンの家の壁には、写真がたーくさん貼ってある。

四ヶ月の間、ノノサンが家に招いたライダーや旅人たちの写真とか、家族の写真とか。

「これ、誰ですか?」と僕が聞く。

「えっ?どれ?・・・おれだよ!」と、ノノサンが答える。

「えっ?ノノサン?えっ?これノノサンなの?」

サラリーマン時代のノノサンの写真。

「あははは」と僕は笑う。

「ノノサン、ちょー若返ったじゃん!」と、失礼にも僕は笑う。


新潟の小さな町の病院の隣の公園の芝生の上で。

隣に座って陽射しを浴びるノノサンに僕は言う。

「ノノサン、また若返ったね」

「そうかなぁ?」とノノサンは照れる。


ノノサンは生きてるなぁ、と僕は想う。
生きてるから輝いてるんだなぁ、と僕は想う。

ノノサンは真面目に働いてきた人で、真面目に働いて来なかった僕とは、人生の歩み方がまるで違う。
ここまでの歩み方はまるで違うのに、今居る場所はそれほど違わない気がする。
なんとなく、同じ風景が見える場所にいる。

ノノサンみたいになりたいなぁ・・・と、僕は想う。
僕の知らない世界を、ノノサンは先に歩いてる。僕が進む未来を、ノノサンは今歩いてる。
ノノサンみたいになりたいなぁ・・・と、僕は想う。


「まだ三時間くらいは走れるな。これから長野まで行くから、そろそろ行くよ」

そう言って、ノノサンは腰を上げる。

タフだ。460キロ走って来て、これからまた200キロ近く走ろうというのだから。。。ないない。ないない。おれだったら、疲れ果ててここで寝る。

「また会おうね」

また会おうねっていう言葉が、僕は好きだ。
絶対に会おうねっていう意味の「また会おうね」っていう言葉が、僕は好きだ。

来年も、再来年も、僕が旅を続ける限り、ノノサンが旅を続ける限り、会える気がする。


土手の上から、ノノサンが手を振る。

「かっこいいなぁ、ノノサン」

手を振りながら、僕はつぶやく。


「お見舞い金翼ライダー」おわり。

ノノサン、ありがとう。

お見舞い金翼ライダー。7

2014-09-27 11:44:38 | Weblog


いつ死んじゃうかなんてわかんないから、生きているうちに、会いたい人や、まだ会っていない人に、たくさんたくさん会いたいなぁ・・・と想う。

今までも、そう想いながら来たわけだけど、死にかけちゃったりした僕は、一層、そんなことを強く想うようになったりするのかもしれないな。

大切なのは、この想いを、忘れないでいること。
そうすれば、いつか死んじゃうってことも、それほど怖くなくなる気がする。


ノノサン立ち会いのもと、カズヤくんと事故の実況見分を始めたりする。芝生に座って。

僕は事故の前から数時間後までの記憶を失っているから、知りたいことが山ほどある。

だから、「それで?それで?おれはどんな風に飛んでいったの?」とか、「それで?それで?おれはどんな風に転がってたの?」とか、「それで?それで?その時おれは意識があったの?」とかね。

僕の質問に、カズヤくんは出来得る限りの説明をしてくれる。それを、ノノサンが微笑みながら、頷きながら聞いている。

ポカポカとした日曜日の昼下がりの風景。

「よく生きてたなぁ」と、ノノサンが言う。

「うん、よく生きてた」と、僕が言う。

隣でカズヤくんが頷いている。

日曜日の昼下がり。

ポカポカと暖かい、新潟の小さな町の穏やかな秋の一日。



お見舞い金翼ライダー。6

2014-09-27 11:23:40 | Weblog
まぁまぁ元気に歩けるようになってきた頃のある日曜日。
移動したばかりの病室の入り口に、お土産を山ほど持ったノノサンが姿を表した。

一年振り。

豊頃の別宅の前で別れて以来。

あぁ、ノノサンだぁ。

ホントに来てくれたんだぁ。

福井から460キロ。

もちろん、金翼ライダーだから、ゴールドウィングを、駆って。

460キロったら、埼玉から京都を越えて、大阪近くまでたどり着ける距離だ。つまり、相当遠いってことなんだよ。
そんな遠路を・・・。涙が出るよ。

ノノサンが持って来てくれた紙袋の中に、目に付く一品が。

手品の小箱。

何これぇ?

するとノノサンは、タネも仕掛けもありません。と言って、手品を見せてくれる。

きゃはははは!と喜ぶと、ノノサンは「これを練習すれば、ちょっとはリハビリにもなるんじゃないかと思ってさ」と、手品セットを二つくれた。

僕は、きゃはははは!と喜んだ。

ノノサンが持って来てくれた紙袋の中には、病院の味気ない食事を補助してくれる逸品が満載で、それを物色しながらキャッキャと騒いでいるところに、カズヤくんとユキノちゃんが現れた。

お見舞い日和の日曜日だ。

病室が騒がしくなりすぎてもなんなので、僕のお気に入りの公園へと、みんなで出かけることにした。