嵐山の我が家の庭に、見慣れない花が咲いている。
彼岸花。
もうすぐお彼岸だ。彼岸花が咲いていても、なんら不思議なことはない。
我が家の庭に彼岸花が咲いているのを、初めて見た。
よく考えてみたら、この季節に家にいたことがない。
嵐山に引っ越して来てから二年と少し。この時期はいつも、北の大地を疾走している。
リハビリを兼ねて、近所を散歩した。
通りに沿って、たくさんほ彼岸花が咲いていた。
稲刈りの時期でもある。五月に植えた苗が、首を垂れながらたわわに実る。それを、コンバインが刈っていく。
少し分けてくれないかなぁ・・・などと思いながら、しばし作業に見惚れる。
帰って来て想ったのは。
病院では、入院患者の中で一番元気なんじゃないか?と想うほどに元気だったのだけれど・・・普通の世界に戻って来ると、自分の弱者振りを思い知らされる。
道を歩いていると・・・
車も怖いし、自転車も怖いし、人も怖いし、子供でさえ怖い。
ぶつかられたら、子供にさえ、僕はへし折られてしまいそうだ。
少しずつ少しずつ、慣れていくつもり。
今はまだ、自分の限界がさっぱりわからない。
何が出来て、何が出来ないのか。
何が痛くて、何が痛くないのか。
何をすべきで、何をすべきじゃないのか。
何をしたら平気で、何をしたら壊れるのか。
僕にはまだ、さっぱりわからない。
病院の生活に慣れるのには時間がかかった。
元居た世界の生活に慣れるのに、時間がかかるなんて、思いもしなかったけど・・・少し時間が必要な気がする。
とりあえず、ギターを弾きながら唄を歌った。半分の月。
ストロークで弾くのは、まだちょっと難しい。折れた骨に響く。
とりあえず、今日の僕は、そんな感じだ。