研究会が終り、菜緒ら3人を見送りに、先生と私が外へ出た時には、すでに日は大きく西に傾いていた。菜緒を真ん中にして、3人が賑やかに夕陽に向かって歩いていく。先生はその背中に「気をつけて帰るんだよ」と声をかけると「は~い」と楽しそうな声で返してくる。少しずつ3人の背中が小さくなる。先生が大きな声で「そこ、突き当たったら左な」と言う。彼女たちは素直に返事をしていたが、私は「ここへ来たということは、返る方向もわかってると思いますけど」と少し呆れ混じりに言った。「お前は可愛くないね。さあ、そろそろ家に入ろう」と私を促した。
この日の夕食後、私はのんびりとした雰囲気の中で、先生に駒落ちで指導してもらっていた。本当に今日は将棋漬けだ。
「お前が何故そこまで、菜緒ちゃんを強く意識していたのかよく分かったよ。痛いぐらいに」
「どうでしたか?菜緒と対局してみて」
「さおりも天才だと思うよ。ただ、菜緒ちゃんは女流の域を超えている。彼女なら男子プロの卵の中に混じっても、ひょっとしたら、ひょっとするんじゃないかな」
「四段になれるという事ですか?」
「ああ。可能性はあると思う。それくらい大きなものを感じる」
「私は諦めて2番手を目指すしかないんですかね」
自分でも冗談なのか、本気なのかよく分からなかった。
「俺がそうはさせない。さおりと菜緒ちゃんがライバルとして並び立つよう、おまえを強くするよ」
私は努めて笑みを浮かべていたのだが、いつの間にか涙がこぼれていた。
この日の夕食後、私はのんびりとした雰囲気の中で、先生に駒落ちで指導してもらっていた。本当に今日は将棋漬けだ。
「お前が何故そこまで、菜緒ちゃんを強く意識していたのかよく分かったよ。痛いぐらいに」
「どうでしたか?菜緒と対局してみて」
「さおりも天才だと思うよ。ただ、菜緒ちゃんは女流の域を超えている。彼女なら男子プロの卵の中に混じっても、ひょっとしたら、ひょっとするんじゃないかな」
「四段になれるという事ですか?」
「ああ。可能性はあると思う。それくらい大きなものを感じる」
「私は諦めて2番手を目指すしかないんですかね」
自分でも冗談なのか、本気なのかよく分からなかった。
「俺がそうはさせない。さおりと菜緒ちゃんがライバルとして並び立つよう、おまえを強くするよ」
私は努めて笑みを浮かべていたのだが、いつの間にか涙がこぼれていた。