先生は私たち4人を近所のいきつけの蕎麦屋へ連れて行った。
「いらっしゃい」
「よお、ご主人、久しぶりだね」
「ああ先生、いつの間にかお嬢さんが随分、増えましたね」
先生と同世代の初老の店主とは、20年来の付き合いと聞かされている。先生と私はカウンター、菜緒たち3人はテーブル席に座り、メニュー表に見入っている。
「遠慮せず、好きなもの頼みなさい」
先生がテーブル席の3人に声をかけた。
「わかりました」
笑い声の混じった賑やかな声が返ってくる。
「さおりちゃん、凄いね。なんていったっけ」
「はい?」
「将棋の、ほら」
蕎麦屋の主人はもどかしそうだ。
「もしかしたら天女ですか?」
「そう、それだ。もうさおりちゃんじゃなくて天女さまだ」
「いえ、さおりでいいです」
私は、ボソッと言った。天女様といわれたのは初めてで、嬉しさよりも、恥ずかしい気持ちだった。
「じゃあ、俺は天ぷらさま。いつもの、えび二つ乗っかってる奴」
親父ギャグとしても出来がいいとは思えない。菜緒たちに聞かれたと思うと、これも恥ずかしい。それにそんな食い意地が張ってるから、おなかが食べる前から膨れているんだ。
私の気持ちは恥ずかしさから、呆れへと移行した。そして、さらに先生の「午後はお前と菜緒ちゃんで指せ」という言葉で緊張へと動いた。エビをほうばりながら、口にしたので滑舌は悪かったが、そこははっきりと聞き取れた。
「いらっしゃい」
「よお、ご主人、久しぶりだね」
「ああ先生、いつの間にかお嬢さんが随分、増えましたね」
先生と同世代の初老の店主とは、20年来の付き合いと聞かされている。先生と私はカウンター、菜緒たち3人はテーブル席に座り、メニュー表に見入っている。
「遠慮せず、好きなもの頼みなさい」
先生がテーブル席の3人に声をかけた。
「わかりました」
笑い声の混じった賑やかな声が返ってくる。
「さおりちゃん、凄いね。なんていったっけ」
「はい?」
「将棋の、ほら」
蕎麦屋の主人はもどかしそうだ。
「もしかしたら天女ですか?」
「そう、それだ。もうさおりちゃんじゃなくて天女さまだ」
「いえ、さおりでいいです」
私は、ボソッと言った。天女様といわれたのは初めてで、嬉しさよりも、恥ずかしい気持ちだった。
「じゃあ、俺は天ぷらさま。いつもの、えび二つ乗っかってる奴」
親父ギャグとしても出来がいいとは思えない。菜緒たちに聞かれたと思うと、これも恥ずかしい。それにそんな食い意地が張ってるから、おなかが食べる前から膨れているんだ。
私の気持ちは恥ずかしさから、呆れへと移行した。そして、さらに先生の「午後はお前と菜緒ちゃんで指せ」という言葉で緊張へと動いた。エビをほうばりながら、口にしたので滑舌は悪かったが、そこははっきりと聞き取れた。