自分に見えなかったものが、菜緒に見えていた事で、私は頭の中は一杯になっていた。
「菜緒ちゃん、おじさんと一局指すか?」
「はい、よろしくお願いします」
「角落ちでどうかな?いつも、その生意気なお姉さんとも角落ちで指してるんだよ」
「私にもぜひ、教えてください」
菜緒は満面の笑顔で答える。
「菜緒ちゃんは、可愛いなあ」
先生はチラッとこちらに目をやった。確かに、菜緒は可愛い。私はあんなにうまく笑顔が作れない。それにしても、生意気なお姉さんとは誰だろう。
「じゃあ、そっちは平田君と桜井さんで指しなさい。さおりは見てなさい。お前が上から見るんじゃなくて、その二人から学ぶんだ」
奥さんが紅茶とケーキを運んできた。
「あなた、さおりちゃんにそんなに厳しくしなくても」
「これくらいでさおりは落ち込むようなタマじゃないから。心配するな。それより、後輩の将棋を見て、学ぶ姿勢も大切なんだ。さおりにはそうしたところが欠けている」
先生は菜緒とさっさと指し始めていた。
「俺は、さおりの親御さんから送ってもらったお茶でいいよ」
先生は盤上に視線を落として、奥さんにリクエストした。私は先生の物言いが少し頭にきていたが、言われていることは大体、当たっていた。それよりなにより、菜緒に負けないで欲しい思いの方が遥かに強かった。
「菜緒ちゃん、おじさんと一局指すか?」
「はい、よろしくお願いします」
「角落ちでどうかな?いつも、その生意気なお姉さんとも角落ちで指してるんだよ」
「私にもぜひ、教えてください」
菜緒は満面の笑顔で答える。
「菜緒ちゃんは、可愛いなあ」
先生はチラッとこちらに目をやった。確かに、菜緒は可愛い。私はあんなにうまく笑顔が作れない。それにしても、生意気なお姉さんとは誰だろう。
「じゃあ、そっちは平田君と桜井さんで指しなさい。さおりは見てなさい。お前が上から見るんじゃなくて、その二人から学ぶんだ」
奥さんが紅茶とケーキを運んできた。
「あなた、さおりちゃんにそんなに厳しくしなくても」
「これくらいでさおりは落ち込むようなタマじゃないから。心配するな。それより、後輩の将棋を見て、学ぶ姿勢も大切なんだ。さおりにはそうしたところが欠けている」
先生は菜緒とさっさと指し始めていた。
「俺は、さおりの親御さんから送ってもらったお茶でいいよ」
先生は盤上に視線を落として、奥さんにリクエストした。私は先生の物言いが少し頭にきていたが、言われていることは大体、当たっていた。それよりなにより、菜緒に負けないで欲しい思いの方が遥かに強かった。