その夜、先生は上機嫌だった。
「さおりはワンランク、レベルが上がった。あんな演歌の歌詞のような将棋が指せるんだな」
「演歌の歌詞ですか?」
「うん。耐えて、しのんで、やがて大きな花が咲く」
「はあ。でも確かに耐えるのはきついです。勝てたとはいえ」
「だけどね、今日の早田戦で、さおりの将棋の幅が広がったのは間違いない」
「本当に身についたんですかね?」
私にはその自信がない。
「負けていたらともかく、勝ったという事実が大きいんだよ。忘れたつもりでも、脳が覚えてると思うよ」
「最終局はまた今日のような将棋を指すか、普段のように攻めるか、まだ迷ってます」
「まあな。どちらがいいかは俺にも分からん。自分自身で決めることだよ。でも、その迷いは無駄にならないと思うけどね。負けたら負けたで、また取り返せばいい。その代わり、もうしばらく、この家から通うことになるけどな」
「結局、そこに話を持っていくんですね」
私は不満だった。先生は私が負けることを望んでいるのだろうか?どちらにしても次の第5局で決着だ。
「さおりはワンランク、レベルが上がった。あんな演歌の歌詞のような将棋が指せるんだな」
「演歌の歌詞ですか?」
「うん。耐えて、しのんで、やがて大きな花が咲く」
「はあ。でも確かに耐えるのはきついです。勝てたとはいえ」
「だけどね、今日の早田戦で、さおりの将棋の幅が広がったのは間違いない」
「本当に身についたんですかね?」
私にはその自信がない。
「負けていたらともかく、勝ったという事実が大きいんだよ。忘れたつもりでも、脳が覚えてると思うよ」
「最終局はまた今日のような将棋を指すか、普段のように攻めるか、まだ迷ってます」
「まあな。どちらがいいかは俺にも分からん。自分自身で決めることだよ。でも、その迷いは無駄にならないと思うけどね。負けたら負けたで、また取り返せばいい。その代わり、もうしばらく、この家から通うことになるけどな」
「結局、そこに話を持っていくんですね」
私は不満だった。先生は私が負けることを望んでいるのだろうか?どちらにしても次の第5局で決着だ。