ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

襟裳岬(森進一)

2023-10-13 12:48:36 | 歌詞

北の街ではもう 悲しみを暖炉で

燃やしはじめてるらしい

理由(わけ)のわからないことで 悩んでいるうち

老いぼれてしまうから

黙りとおしたとしつきを

拾い集めて 温めあおう

襟裳の春は何もない春です

 

日々の暮らしは嫌でも やってくるけど

静かに笑ってしまおう

いじけることだけが 生きることだと

飼い慣らし過ぎたので

身構えながら話すなんて

ああ 臆病なんだよね

襟裳の春は何もない春です

 

寒い友だちが訪ねてきたよ

遠慮はいらないから 暖まってゆきなよ

 

作詞・岡本おさみ、作曲・吉田拓郎。1974年1月発売。

名曲中の名曲だと思います。フォークのカリスマである吉田拓郎の曲を、演歌の象徴的存在の森進一が歌ったことで、大きな化学反応が起きたとも言えるでしょう。

そして忘れてならないのは岡本おさみの歌詞です。こんな素晴らしい歌詞に出会うことはめったにありません。時代を超越した普遍的な言葉が並んでいるので、古くなることがありません。

「わけのわからないことで悩んでいるうち、老いぼれてしまうから」

この言葉が今書かれていても何ら違和感がありません。

 

「黙りとおしたとしつきを拾い集めて温めあおう」

無口な北国の人々の生活が浮かび上がります。

そして「襟裳の春は何もない春です」

この言葉で締めくくっています。地元の人々の反感を買ったのは有名な話ですが、それを恐れて説明のような言葉を並べてしまったら、歌詞が台無しになります。歌詞や詩もそうですけど、引き算でやっていかないとなりません。無駄を省けば誤解が生まれる。それを百も承知で岡本さんは書いています。

僕は「何もない春」を昔から変わらない春とか、この上ない春と解釈しています。街や人々の優しさすら、この一文から伝わってきます。

 

2番も3番もいいですね。ここに掲載しているのは3番の歌詞ですけど

「日々の暮らしは嫌でもやってくるけど、静かに笑ってしまおう」

静かにを入れることで哀愁が深まり、より格調が高くなりますね。

そして「襟裳の春は何もない春です」で締められています。

 

最後の「寒い友だちが訪ねてきたよ。遠慮はいらないから、暖まってゆきなよ」

寒い友だちも言葉を削っています。寒い道のりをはるばる歩いてきた友だちというイメージですか。それを「寒い友だち」の短い言葉で表現する岡本さんの高い技術が光ります。

襟裳岬は是非、後世に残ってもらいたい曲のひとつです。

 

 

 

コメント
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