十月尽(月)晴れのち曇り。
午前中から、連載させて頂いている「実話時報」への原稿に取り掛かる。呻吟しながら、午後にようやく脱稿した。自分の為でもあるのに、原稿のネタを考えるのにいつも苦労して、投げ出しそうになることがしばしばある。
先日、朝のテレビで、阿川佐和子さんと、芥川賞作家の綿矢りささんとの対談を見た。二十七歳で美人、そして芥川賞作家と彼女の全てに驚いたが、参考になったのは阿川さんの、書くことに行き詰まった時、どう克服したかということだった。
阿川さんは、例えば、「セロリ」について原稿用紙で十枚程度書けるのかと、考え、それを実践したという。もちろん書いたものが面白くなければ何の意味も無い。ナルホドと思ったが、今の私には、そんな体力も根気もない。もともと怠惰が洋服を着ているような人間なのだから、そんな努力をしようと思っても、絶対に続かないだろう。
決して、強がりなどではなく、三十代に十年刑務所にいたならば、もう少しましな文章を書けたと思っている。読むことと書くことしかすることのない独房で、志を持って十年を過ごしていたならば、もっと人間的にも成長していたのではないか。私は、そういった強制的に自由を束縛される環境でなければ、一つの目的を達成できない駄目な人間なのである。
年に一度、友人に連れて行ってもらっている一週間の「断食」も、そういった場所に行ってしまえば苦にならないのだ。といって今から刑務所に行く勇気も元気も無いので、もうこれ以上、水が出ないというまで雑巾を絞るように、少ない脳みそを絞って、物を書いて行く以外に方法はない。自己嫌悪と戦いながら、いつも酒に逃げる。
刑務所で思い出したが、見沢知廉氏のセミドキュメント「天皇ごっこ」の映画が公開されたが、その中で使用された私のインタビューの映像は、本編では、わずか二三分だが、監督に依頼して使用されなかった部分も含めて、私のインタビューの画像を全て頂いた。一度見たのだが、正直言って、照れ臭いので最後まで見ずにいたのだが、あらためて見てみると、何と一時間十分もある。
後半部分は、自分でも飽きてきてしまい、インタビューにもめんどくさそうに答えているのが、ありありと分かる。素人が、何の打ち合わせもなく一時間以上もインタビューに応じると言うのは、かなり体力を必要とする。その素材を幾人かの親しい方に送ったが、一時間以上も見るのでは気の毒かなと思った次第。
夜は、近所のオヤジ連中と、ラーメン屋の「たつ屋」で飲み会。軽くのつもりが、結局は、酔うまで飲んでしまった。お尻に出来たオデキが痛いので、家族に薬を塗ってくれと頼んだら、皆逃げていなくなった。冷たい連中だ。当分、何も買ってやらないことにした。