白雲去来

蜷川正大の日々是口実

朝顔の思い出二つ。

2020-08-29 17:21:21 | 日記
8月18日(火)晴れ。

毎年、群青の会の大熊雄次さんから朝顔の鉢植えを送って頂く。朝、玄関に新聞を取りに行く時に、今日はどのくらい咲いているのか。と楽しみにしている。最初の頃に戴いたものは、花が終わると種が残っていて、それを翌年植えると花が咲いて、二度楽しめたのだが、最近の物は品種の改良?か、種が出来ない。それでも朝晩に水をやると、夏の終わりまで楽しめる。

朝顔には、忘れられない思い出が二つある。一つは昭和の時代、我々が惹起した事件で判決が下り、東京拘置所から網走へ押送されたのが入谷の朝顔市の時だった。ああ当分朝顔市などの喧騒とは縁がなくなると、珍しく感傷的になったものだ。

もう一つは、盟友でもあり、同志でもあった折本満さんのこと。彼が、今から四年前の九月にすい臓癌で亡くなられた。六十四歳だった。折本さんが、すい臓がんを患って入院手術した折に幾度か彼を見舞い、退院した時は、友人らと「激励会」を行い、何とか元気な体に戻ってほしいと願ったが、薬石の効なく、亡くなった。奥さんから、「余命二三ヶ月」ということを聞いた時は、ショックだった。最後に大熊雄次氏と一緒に、自宅に彼を見舞ったのは、亡くなられる一月ほど前の八月四日のこと。すっかり痩せてしまい、一回りも小さくなった姿を見て、不覚にも落涙しそうになった。

折本さんの寝ているベッドから見えるベランダに、やはり大熊氏が送った朝顔の鉢植えが置いてあった。奥さんが、折本が、毎朝目を覚ますと、「ああ今日は沢山咲いている。昨日は、一つだけだった」と、いつも楽しみに見ています。と話をした時に、彼の手を握って、声を上げて泣きたかった。このお見舞いから一月余りが過ぎた九月の二十日の正午過ぎに、折本さんの奥さんより電話が入り、午前中に折本さんが家族に見守られながら、眠るように息を引き取ったと、連絡を頂いた。折本さんは、亡くなられた日の朝も朝顔を見たのだろうか・・・。

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