12月16日(金)晴れ。
朝食は抜いた。昼は、「五島うどん」に、紅ショウガと玉ねぎのかき揚げ、三浦人参の天ぷらを作って「天ぷらうどん」。夜は、モランボンの「キムチ鍋のスープ」を使った鍋、イクラ、津軽漬け。お供は「三岳」。酔狂亭にて独酌。
昨日のブログで書いた「プラド美術館」に行った時の事の思い出をもう一つ。美術館のすぐ近くに扇子を売る露天が出ていた。そこのオヤジが、我々を目ざとく見つけ、手招きするので近くに行くと、「ジャパニーズか」と聞くので、「イエス」。その親父、おもむろにスペインの景色が描かれた扇子を広げて、片言の日本語でこうのたまった。「フジサンタカイヨ、コレヤスイヨ」これには、先生も私たちも馬鹿受けして大笑い。日本であれば、こんな駄洒落に誰も反応しないのだが、何といっても、ここはマドリッドである。片言の日本語を覚えてまで、扇子を売ろうというその商魂に我々一行は脱帽し、先生は、一本五百円程度の扇子を二〇本も買ってあげた。
その後、レストランや酒場に行く度に支配人やウエイターに、「フジサンタカイヨ、コレヤスイヨ」とプレゼントしていた。その扇子が、先生の駄洒落の道具ではなく、本来の機能を発揮して役に立ったのは「闘牛」を観に行った時の事。日差しが強くて、とても暑かった。その扇子が役に立ったのは言うまでもない。その旅から帰国した二か月後の10月20日、先生は、朝日新聞社の社長室で壮烈なる自決を遂げられた。来年は、その自決は事件から30年という節目の年となる。※マドリードの闘牛場の前で。私は41歳である。