先週木曜日(4月28日)にCOVID-19の86歳男性が感染病棟に入院した。住所は隣の市で、発熱で受診した市内の病院で新型コロナの抗原定性試験を受けて陽性と判明した。高齢で症状があることと、基礎に高血圧症・狭心症があり、保健所の指示で入院となった。
胸部CTで胸膜下に怪しいところはあったが、はっきりしない。喫煙歴があり、肺野に軽度に気腫性変化があるようだ。看護師さんからゼーゼーしています、と報告があった。
呼気終末にwheezeが聴取される。ふだんも動くと息切れがあったそうだ。要するにCOPDで喘鳴を伴う患者さん(ACO相当か)だった。
呼吸器疾患としての処方はなかった。気管支拡張薬で経過をみる予定だったが、入院後に39℃の高熱が出て、喘鳴も悪化した。
COVID-19のウイルス増殖期にステロイドは入れたくなかったが、やむなくデキサメサゾン点滴静注を行った。抗ウイルス薬はレムデシビル(ベクルリー)点滴静注を使用したので、抗ウイルス薬と併用ならば何とかなると思った。
ステロイドの効果で解熱して、喘鳴も軽快消失した。デキサメサゾンは初回は8mg(6.6mg)を使用して、2日目からは4mg(1.65mg×2)で3日間使用した。
酸素吸入は入院後に1L/分で開始して、そのまま1L/分で継続していた。5月2日には酸素吸入を中止した。うまく吸入できるか疑問だが、吸入ステロイド(ICS/LABA)を開始した。
COVID-19のウイルス増殖期にステロイドを投与すると、増殖を助長するので、かえって悪化する。はっきり発症1週間はステロイドを投与せず、8日目からと決めている病院もあった。発症10日以内でステロイドを使用する場合は、抗ウイルス薬と併用でステロイドを使用するともされている。
そうはいっても最初からステロイドを投与する必要があれば、それはやむを得ない。基礎疾患でステロイドが使用されている患者さんもいるわけだから。
この患者さんの妻もコロナ罹患と判明した。元気だが、発熱がある。保健所で入院を勧めたが、犬を飼っているので、入院したくないと言っているそうだ。地域の基幹病院で、外来アセスメントをすることになった。外来で抗ウイルス薬を処方してもらえば、在宅療養でもいけるのかもしれない。