なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

感受性があるのに発熱~薬剤熱

2022年05月12日 | Weblog

 5月7日に記載した透析を受けている70歳男性の続き。

 腎臓内科医は、血液培養2セットを採取して、抗菌薬(ゾシンPIPC/TAZ)を開始した。入院後は翌日から解熱していた。

 血液培養2セットからグラム陽性球菌が検出されたと言う報告がきた(菌名はまだ)。すぐに菌が生えているので血流感染と思わる。心臓エコー検査(経胸壁)では明らかな疣贅を認めなかった。

 

 経過は順調で、菌の検出待ちとなっていたが、入院4日目の週末からまた高熱が出没し始めた。バンコマイシンも併用した。

 この患者さんは2018年に心臓血管センターのある専門病院で大動脈弁置換術(生体弁)を受けていた。2019年に原因のわからない発熱で受診した。

 外来で担当してのは当方だった。血液培養2セットから菌が検出されて、感染性心内膜炎疑いで、手術した病院に紹介した。後に菌が同定されて、Streptococcus bovisだった。幸いに抗菌薬投与で軽快治癒した。

 

 今回は血液培養2セットからStaphylococcus aureus(MSSA)が検出された。腎臓内科医は感染性心内膜炎として、手術をした病院に連絡して、今日転院となった。心エコー検査再検で疣贅が見つかるだろうか。

 

 血液培養陽性例なので、昨日の院内AST会議で取り上げられた。今日大学病院から呼吸器外来に来ている感染症専門医に相談した。いったん解熱してからの高熱の出没はゾシンの薬剤熱でしょう、ということだった。

 正解は、再度高熱が出た時点でfever work upやり直しとなる。肺炎などの有無を画像で確認して(心エコー再検も)、再度血液培養2セット・尿培養を提出してから、抗菌薬を変更する。透析患者さんだし、MSSAなのでセフトリアキソンでどうでしょうか(投与量を調整してのセファゾリンも可)、と言われた。

 これまで経過から、見なし感染性心内膜炎として、(心臓血管)外科処置もできる病院で抗菌薬投与を行うのはいいことです、とも言われた。

 当院では透析のシャントからの感染が疑われる例はほとんどないが、今回はありえる。

 

コメント (1)
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