4月中旬に左肺炎で入院していた88歳男性は、食欲不振が続いて入院が続いていた。
肺炎が良くなったと思ったころに、血便が続いた。腹部造影CTでS状結腸に虚血性腸炎を疑う所見があった。貧血の進行を見ていたが、元々貧血傾向(加齢の問題だろう)があるところからの減少なので、結局2日間輸血を行った。
CTの読影は消化器科医は虚血性腸炎ではといい、放射線科では大腸癌疑いというレポートだった。無処置での大腸内視鏡も考えたが、経過を見ることにした。
幸いに血便は治まったが、オレンジ色っぽい評価の難しい軟便が続いた。食事摂取も進まなかった。少量の食事摂取と点滴で軽快をみていた。
5月になって発熱があり、今度は右肺炎をきたした。さらに点滴をしていた左前腕の刺入部の発赤・腫脹も認めた。血液培養を提出すると、グラム陽性球菌が検出された。
今週午後5時過ぎに病棟の看護師さんが冷汗・血圧低下に気づいた。心電図をとると、胸部誘導V1-4でそれまでなかった右脚ブロック様の所見が出た。血液検査で確認すると、心原性酵素が上昇して急性心筋梗塞だった。午後の早いうちから発症していたかもしれない。
関東在住の息子さんに連絡して、受け入れてくれる病院があれば循環器内科に搬送したいと伝えた。地域の基幹病院に連絡すると、当直の先生が出て循環器内科と相談するという。その後連絡がきて、以前当院でPCIを行っているので、受けますと言ってもらえた。
ありがたく救急搬送した。慌てていたので既往歴を忘れていたが、基幹病院に急性心筋梗塞と脳梗塞で入院していた患者さんだった。先方の方が、伝えた名前と生年月日で、これまでの経過を画面で確認してくれたのだった。
その後血液培養からMRSAが検出されていた。ブドウ球菌肺炎は通常はないので、末梢静脈からの点滴による感染と判断された(末梢静脈カテーテル関連血流感染)。搬送翌日に結果が出て、FAXで報告したが、肺炎に対する抗菌薬は当然ながらMRSAには効果がないものだった(申し訳わけありません)。