なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

急性冠症候群

2023年06月05日 | Weblog

 先週末、地域の基幹病院循環器内科から、紹介した患者さんの返事が来ていた。返事が遅れて大変失礼しました、とあったが、当方も紹介したことをすっかり忘れていた。

 発熱外来と併せて35名受診したので、内容はほとんど覚えていないが、この患者さんは特徴的な症状だったので思い出した。

 

 連休中の5月4日に日直をしている時に、80歳女性が午後0時前に救急外来を受診した。ふだんは市内の内科クリニックに高血圧症などで通院している。

 その日の午前6時40分ごろ、急に喉・胸部・両肩・上背部の痛みが出現していた。受診時には発症時より症状は軽減していたが、まだ続いているという。息苦しさはない。

 血圧144/58・脈拍数60/分・酸素飽和度98%(室内気)・体温36.5℃で、バイタルサインとしては問題がなかった。白湯(さゆ)を飲んだら良くなった気がするという、逆流性食道炎を思わせるような発言もあった。

 急性冠症候群疑いとなる。心電図をとると、ST上昇はなく、Ⅰ・aVL・V5-6 でST低下があった。部位的には、側壁の虚血を示唆する所見だった。(4月から時間外の検査は簡易検査だけになり、トロポニンは測定できない。)

 2016年に受診した際の心電図が残っていて、それでは今回のST低下は認めない。非ST上昇型心筋梗塞(NATEMI)のようだ。

 ACS疑いとして基幹病院に連絡すると、ちょうど循環器内科の先生が日直をされていた。送って下さいと言ってもらったので、家族の車で向かってもらった。

 冠動脈造影の結果は、左前下行枝に高度狭窄があり、右冠動脈は完全閉塞していたそうだ。左前下行枝が責任血管と判断して、薬剤溶出ステントを2本留置していた。

 

 心電図を見返したが、当方の力では陳旧性下壁梗塞とは読めない(専門医ならそう読むのかもしれない)。冠動脈造影の結果からはもう少しV1-4に所見が出てもいいと思う。

 まあ心電図が正確に読めなくても、急性冠症候群を疑ってすぐに紹介できればそれで十分だとは思う。

 

コメント
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