MR拮抗薬(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)
高血圧治療ガイドライン2014年版では、アルドステロン拮抗薬と分類されていた。昇圧に重要なのはミネラルコルチコイド受容体の活性化であることから、2019年版から、MR拮抗薬(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)という名称になった。
アルドステロンの昇圧機序は、腎臓の遠位尿細管におけるNa再吸収促進による体液量の増加と血管に対する直接の収縮作用による。アルドステロンは、心臓・腎臓・脳に対して直接に臓器障害を引き起こす。
MR拮抗薬は降圧効果だけではなく、アルドステロンによる臓器障害を改善させる効果がある。
ACE阻害薬やARBを長期に投与すると、血中アルドステロン濃度が再び上昇し(アルドステロンブレイクスルー)臓器障害の改善が減弱する。MR拮抗薬はこのような病態でも、レセプターレベルでアルドステロンの作用に拮抗し臓器障害を改善する。MR拮抗薬の難治性高血圧に対する有用性はアルドステロンブレイクスルーに拮抗することが一因とされている。
スピロノラクトン(アルダクトンA)
1日50~100mg。重症心不全患者の予後を改善する(RALES試験)。性ホルモン受容体に結合して、男性の女性化乳房・勃起不全、女性の過多月経を発現する。
禁忌は無尿・急性腎障害・高K血症・アジソン病となっているのが、いかにも昔の薬らしい。高血圧症以外の適応が心性浮腫(うっ血性心不全)という表記なのも昔の薬らしい。
エプレレノン(セララ)
高血圧症では1日1回50mgで、100mgまで増量可能。心不全では1日1回25mgで、50mgまで増量可能。性ホルモン受容体と結合せず、女性ホルモン様作用を発現しない(副作用は少ない)。心筋梗塞後の左室機能不全・心不全患者の予後を改善する(EPHESUS試験)。スピロノラクトンに比し、降圧効果は弱い
禁忌は高K血症(血清K≧5.0mEq/L)・腎機能障害(Ccr<30)・重度肝機能障害。高血圧症では、微量アルブミン尿または蛋白尿を伴う糖尿病患者・中等症以上の腎機能障害(Ccr50mL/分未満)が禁忌になっている。臓器障害の改善が期待されているのに、この縛りは厳しすぎて投与しづらい。
エサキセレノン(ミネブロ)
1日1回2.5mgで、5mgまで増量可能。非ステロイド骨格を有する選択的MR拮抗薬で、MR選択性が1000倍以上高い。スピロノラクトンの女性ホルモン関連の副作用はない。適応症は高血圧症のみで、心不全の適応はない。
禁忌は高K血症(血清K≧5.0mEq/L)・腎機能障害(Ccr<30)。慎重投与ではあるが、中等度の腎機能障害Ccr≧30(<60)・アルブミン尿または蛋白尿を伴う糖尿病に投与できる。1日1.25mgから開始して4週以降を目安に1日2.5mgへ増量(最大5mg)。
ミネブロはミネラルコルチコイドレセプターブロッカーで、まんま。
フィネレノン(ケレンディア)
適応が2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(ただし末期腎不全又は透析施行中の患者を除く)で、高血圧症の適応はない。
個人的にはミネブロの処方に慣れようとしているところで、ケレンディアの使用経験はない。
以上は、「よくある副作用症例に学ぶ 降圧薬の使い方」(金芳堂)による。2024年はガイドライン改訂になるが(5年おき)、またこの本も対応して改訂されるのだろう。初版から購入しているおなじみの本だ。