なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

低活動型せん妄

2023年06月11日 | Weblog

 整形外科に多発性骨折で入院した 歳女性は糖尿病で治療していた。整形外科医から糖尿病の血糖コントロールを依頼された。

 DPP4阻害薬とSU薬少量(グリクラジド20mg)の内服に、BOTとして持効型インスリン(トレシーバ)が4単位になっていた。それ自体は特に大した問題ではない。問題は別にあった。

 入院後から食事摂取ができなかった、というかしなかった。嘔気を訴えたりもするので身体的な問題かと思われたが、そうではないようだ。

 整形外科医は、糖尿病ということでグルコースを含まないリンゲル液2本を点滴していた。4~5日以上そうなっていたので、グルコース入りの点滴に切り替えて、インスリンを混合とした(血糖測定によるインスリン皮下注の補正は継続)。

 

 ほとんど発語がなく、ぼんやりして周囲に無関心な様子だった。食欲不振とも合わせて、病棟の看護師さんは心因性の問題、うつ状態ととらえていたようだ。

 リハビリのオーダーもあったが、日中ぼんやりして、動かそうとするといやがるので理学療法士も手を出しかねていた。

 症状を訊くと、急に痛い痛いと訴えて、過呼吸になる。難聴もあって、耳元で大声で言わないと聞こえないという問題もあった。夜間に大声を出すというのではないが、頻回にナースコールを押して来るそうだ。看護師さんとしては不眠というより、頻回コールの困った患者さんという捉え方だった。

 看護師さんからの、抗精神薬を定期的に出してほしい、という依頼がきた。糖尿病があるので、リスペリドン0.5mgを夕に内服とした。

 これはうつ状態ではなく、「低活動性せん妄」のようだ。デジレル(トラゾドン)25mgとロゼレム(ラメルテオン)8mg1錠を夕に入れた。リスペリゾンは当面継続とした。

 今のところは、前よりはいいかな、というくらいだ。これまで「低活動性せん妄」としては認識していいなかった。下記の良書の記載を参考に治療を継続することにした。

 低活動性せん妄はうつ病と似たような症状がたくさんあるが、せん妄としての意識障害(変動)・見当識障害・注意障害もある。

 治療の目標は、「睡眠・覚醒リズムを確立すること」、すなわち「夜は深く寝て、日中はしっかり起こすこと」ということだ。

 

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