過活動膀胱
「我慢しがたい急に起こる尿意切迫感があって、そのために起こる頻尿な状態」
半数以上は、トイレが間に合わなくて尿を漏らす切迫性尿失禁を合併している。
過活動膀胱は除外診断。過活動膀胱の症状に類似する症状をもつ器質的な疾患(細菌性膀胱、間質性膀胱炎、膀胱結石、膀胱癌)などを除外して、ほかに原因が考えられない」時に過活動膀胱と診断する。
1000万人以上が過活動膀胱に該当する。医療機関で診察を受けている人はせいぜい1~2割。女性の受診が少ない。男性は受診が比較的多い(前立腺肥大症の約50%は過活動膀胱を合併)。
診断のポイントは、尿意切迫感の有無。尿意切迫感は「我慢していてだんだん強くなる尿意とは異なる、病的な感覚」。特徴は「突然起こる」「予測困難」「実際に漏らしてしまうぐらい我慢できない」。(尿意があっても我慢できる人は過活動膀胱ではない)
症状の聞き取りから過活動膀胱は診断できる。過活動膀胱症状スコア(OABSS)を用いる。
エコーで残尿測定をしておく。残尿が50mlを超えれば有意な残尿がある。100mlを超えたら無視できない残尿がある。残尿が100ml以上ある場合には抗コリン薬の使用は控えた方がよい(尿閉になる)。
過活動膀胱の薬物治療
第一選択は抗コリン薬とβ3作動薬。
抗コリン薬
膀胱の収縮を止めることで排尿を止める。対象疾患は頻尿、尿失禁、過活動膀胱。7割は頻尿、尿失禁、過活動膀胱が改善。
副作用は、口内乾燥・便秘・認知機能への影響。口内乾燥の影響でアドヒアランスが悪い。1年にわたって抗コリン薬を飲み続けられる人は1割。すでに認知機能が低下している高齢者では、眠気・記憶力の低下・判断力の低下など認知機能の低下が加速する。緑内障では禁忌。
ベシケア5mg1錠分1、トビエース4mg1錠分1、ウリトスまたはステーブラ0.1mg2錠分2など。
β3作動薬
膀胱を弛緩させることで尿を溜められるようにして排尿を止める。対象疾患は過活動膀胱。
副作用は稀に頻脈が起こる。抗コリン薬と違って、口内乾燥と便秘が起こりにくい。理論的には認知機能へ影響しないと言われている。
ベタニス(ミラベグロン)50mg1錠分1、ベオーバ(ビべグロン)50mg1錠分1がある。
以上、「ねころんで読める排尿障害」高橋悟著(MCメディカ出版)による。非専門医としては、男性では前立腺肥大症があるので、排尿を改善するα1遮断薬に併用する。男性でも女性でも、抗コリン薬は使用せず、β3作動薬を使用する。
過活動膀胱症状スコア(overactive bladder symptom score:OABSS)
過活動膀胱の診断基準 尿意切迫感スコア(質問3)が2点以上かつOABSS合計スコアが3点以上
軽症:5点以下 中等症:6~11点 重症:12点以上