なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

老衰

2023年06月28日 | Weblog

 月曜日の午後2時ごろに救急当番をしていた腎臓内科の若い先生から連絡が来た。(大学病院から半年交代で派遣されている)

 救急搬入された患者さんのことで相談したいという。病状ではなく(すでに心肺停止)、「扱いについて」ということだった。老衰の扱いがよくわからないということらしい。

 施設に入所していて、市内の内科医院に通院していた。アルツハイマー型認知症と心不全となっていたが、るい痩著明だった。

 4月から食事摂取ができたり、できなかったりになって、しだいに体重が減少してきていた。医院の先生からはこのままだと近いうちに亡くなるかもしれないと説明されていた。先週からは食事摂取が難しくなり、液体の栄養剤が処方されたが、それも難しかった。

 夫と子供はすでに死去して、横浜在住の弟さんがキーパーソンだった。最近施設の面会禁止が解除になったので、面会に来ていたという。

 医院の先生から急変時はDNARと話がされていたので、腎臓内科の先生は心肺蘇生はしていかった。痩せた小柄な老女で、もし心臓マッサージをすると、かなりの肋骨が胸骨から離れて胸郭がべこべこになってしまうだろう。(’蘇生処置というより虐待のようになる)

 救急室に行って、これまでの経過は当方が施設職員から聞いた。老衰としていい経過だった。Autopsy imagingをすることになっていたので、不要な気もしたが実施してもらった。頭部CTで著明な脳委縮がある。胸腹部CTは特に異常なかった。

 死因としては老衰で経過約1か月でどうでしょうかと、伝えた。(その通りに死亡診断書に記載されていた)施設といっても小規模なグループホームなので、ご遺体を引き取るのは難しいという。弟さんも高齢なので、こちらに来るのはその息子さん(患者さんの甥)になるかもしれないそうだ。

 若い先生が弟さんに電話で経過を伝えるというので、病院の霊安室で1~2日はお預かりできる、と伝えてもらうことにした。

 

 その日の午後6時ごろ病院から帰る時に、救急室の隣にある時間外の受付で、きちんとした身なりの小柄な高齢男性が会計をしていた。(時間外の支払いはそこで行う)搬入された患者さんの弟さんかもしれない、と思ったが声はかけなかった。 

 90歳を越えて老衰で亡くなるというのは、幸せなことなのだと思う。診療所付きの施設だと、そのまま施設で看取ることもできるが、そうでないと病院に搬送になるのが、問題ではあるが。

 

 

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