なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

非代償性肝硬変の治療内容

2023年06月12日 | Weblog

 6月7日に記載した非代償性肝硬変の70歳男性は、地域の基幹病院消化器内科(肝臓外来)に通院している。担当している肝臓専門医から、「この度の御加療ありがとうございます」とこれまでの経過報告が来ていた。

 「非B非C肝硬変として加療している」とあり、アルコール性ではないらしい。特に記載はないが、自己免疫性(AIH)でも、原発性胆汁性胆管炎(PBC)でも、脂肪肝炎(NASH)からの肝硬変でもないのだろう。(少なくとも確定はできないということ)

 「これまで食道静脈瘤破裂などで何度か入院して、PSEやBRTOなどを行っていますが、門脈血栓症特発性細菌性腹膜炎難治性腹水肝腎症候群などを生じ、門脈圧亢進症の制御ができておらず、徐々に病状は厳しい状態」ということだった。DOACは門脈血栓症に対しての処方だった。

 PSEはpartial splenic embolization(部分脾動脈塞栓術)で、BRTOはballoon occluded retrograde obliteration(バルーン下逆行性経静脈的塞栓術)。PSEというのは知らなかった。

 

 肝臓専門医には、肝炎専門に診ている先生と、肝疾患に関するインターベンションも併せて行う先生といらっしゃるようだ。こちらの先生は後者で、大変な診療を担っているのだった。

 当院としては利尿薬静注(増量)で胸腹水を何とか減らして、先方の外来に戻せればいい。入院後は幸い胸腹水は軽快してきた。

 

 古い文献に肝性胸水の例が記載されていた。肝硬変患者で心肺疾患がないにも関わらず胸水を認めた場合に「肝性胸水」と定義される。非代償性肝硬変患者の4~10%に見られる。胸水貯留部位は右側が67~85%、左側と両側がそれぞれ17%。(ざっくりだと右側70%、左側と両側が15%)

 コメントいただいたように、肝性胸水は、「先天的に漸弱な横隔膜接合部が腹腔内圧上昇時に破綻して小孔が形成され、胸腔内の陰圧により、この小孔を介して腹水が胸腔内に移行する」、そうだ。

 患者さんが床に落ちたものを屈んで取った時や、灯油缶を運んだ時に(いずれも腹圧がかかった時)、急激に肝性胸水が生じた例が記載されていて、興味深かった。

 

コメント
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