なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

COVID-19の浸潤影

2021年04月10日 | Weblog

 4月7日水曜日に、新型コロナウイルス感染症の90歳女性を入院させてほしいと保健所から要請がきた。

 4月2日に咳と倦怠感を訴えて、当院からはちょっと離れた町の医院を受診した。その後発熱も出て、7日に再受診していた。新型コロナウイルスの抗原定性検査で陽性と出た。胸部X線で右肺炎を認めるという。

 抗原定性検査だけで(PCRなしで)決めていいのかと思った。コロナは両側肺炎になるので、右肺炎としたらコロナの肺炎らしくはない(片側性もあるが)。保健所としては、肺炎で入院が必要なので、抗原検査だけで決定としたそうだ。

 胸部CTで確認すると、右肺には浸潤影があった。左肺の下葉背側には、すりガラス陰影があり、これはコロナらしい陰影だった。

 画像からは、通常の肺炎+新型コロナの陰影のように見える。すりガラス陰影が広がってくると、すりガラスから浸潤影様にはなるが、左右差がありすぎる。通常の細菌性肺炎→新型コロナ感染、新型コロナ感染→通常の細菌性肺炎、新型コロナの肺炎そのもの、などが考えられる。

 検査結果は、白血球4600・CRP3.4でDダイマー2.7・血清フェリチン363・LDH254と、いかにも新型コロナらしい結果だった。通常の細菌性肺炎があるとすれば、もっとCRPは上昇するのではないか。

 入院時に38℃の発熱があった。酸素飽和度は94~96%(室内気)で有意な低下はなかった。通常の肺炎に対する抗菌薬で治療を開始した。

 発熱が続き、8日には酸素飽和度が88%(室内気)と低下して、酸素吸入(2L/分)を開始した。9日金曜日の検査ではCRP3.9と、細菌性肺炎としては上昇が軽度に留まっていた。他のコロナに特徴的な検査項目も微増していた。

 浸潤影自体もコロナの陰影なのかもしれない(琉球大学・藤田教授によれば器質化肺炎様の陰影)。抗菌薬にデキサメサゾンを併用して経過をみることにした。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

不随運動のような?

2021年04月09日 | Weblog

 昨日の昼に、救急隊から搬入要請がきた。市役所の総合福祉センターに来ていた40歳代前半の女性が、ぴくぴくと不随意運動をしているという。

 けいれんという言い方をしなかったのは、意識があって、発語もあるためか。もともと精神遅滞があるそうだ。精神科通院歴があり、てんかんの有無が気になった。

 来てみないとわからない。午後の早い時間に行政依頼のPCR検査がかなり入っていて、新型コロナの患者さんが入院する予定もあった。すぐ来てもらうことした。

 患者さんは開眼していて、右下肢がけいれん様の動きをしていた。話かけると、子供のような声で答える。内容の簡単な会話しかできないのかもしれない。

 そのうち右下肢の動きが止まって、今度は右上肢と左下肢のけいれん様の動きが始まった。神経学的に合わない。少なくともけいれんではない。不随意運動というより、意識的な動きのようだ。特に薬は使わないで、疲れるのを待っていると、動きは治まった。

 

 市役所の職員が2名ついてきていた。それまで収入をどうやって得ていたのかわからないが、今回市役所では生活保護の手続きを進めることになったそうだ。未払いでライフラインは全部?止まっているという。

 ご本人とお子さん2人に精神遅滞があり、お子さん1名は施設に入所している。もう一人の大きい方の子供から家庭内暴力を受けていて、一時的にでもいっしょにしておけないという話だった。(夫に当たる人はいないのだろう)

 てんかんではなく転換性障害のような症状だが、一通り検査することにした。頭部CTは異常がなく、血液検査では鉄欠乏性貧血があり、以前から指摘されていた。

 精神科病院からFAXが送られてきた。それは昨年10月に地域の基幹病院救急科を受診した際に、診療情報として送ったもののコピーだった。

 診断名は、精神遅滞・不眠症・鉄欠乏性貧血・子宮筋腫(これは他院の診断だろう)とあった。処方は鉄剤とエチゾラム(デパス)のみだった。抗てんかん薬や抗精神薬はなかった。

 動いてじっとしていないので、入院するとすれば抑制が必要になる。そもそも本人が入院は拒否していた。市役所職員にいずれ婦人科精査が必要なことを説明した。鉄剤とビタミン配合剤(B1とB12を含む)を処方した。

 結局市役所の方で急遽一時的に入所できる施設に依頼して、子供(10代後半くらいか)と離すことになった。

 

 昨日の保健所依頼の新型コロナウイルスPCR検査の結果、5名が陽性だった。一昨日は4名陽性だったが、当院の一日当たりの陽性者としては新記録を更新した。

 当院のコロナ病床は4床で、4名が入院して満床になっている。

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

硬膜下血腫、けいれん

2021年04月08日 | Weblog

 火曜日の夕方に、91歳女性がデイサービスに中に右上下肢のけいれん発作を来して受診した。

 ふだんは心房細動・心不全で内科外来に通院している。循環器科に通院していたが、閉科になってからは内科通院なっていた。

 左後頭葉の脳梗塞(脳塞栓症)の既往があり、2年前に同様の右上下肢のけいれんで入院したことがある。ジアゼパム静注からイーケプラ点滴静注でけいれんは治まった。イーケプラ内服(1000mg/日)で経過をみて再発はなかった。

 受診時に意識はふだんと変わらず、会話は可能だった。最初右上下肢が震えるという連絡が内科外来に入り、意識はあるというので、けいれんなの悪寒なのか振戦なのかわからなかった。(けいれんの既往と抗てんかん薬内服している患者さんという情報がなかった)

 車いすで受診したが、確かに右上下肢がけいれんしている。意識はあり、会話は可能だった。救急室に移動して、ストレッチャーに移した。

 生食で血管確保して、ジアゼパム5mgを静注した。少し治まったようだが、けいれんは続いていた。超高齢でジアゼパムを追加するのは躊躇われた。イーケプラはその日の朝も内服していて、中断はしていなかった。

 イーケプラ500mgを点滴静注して、けいれんの振幅が軽減したが、まだ続いていた。慢性腎臓病があり、1日量は1500mgまでになる。

 新規の脳血管障害を見るために、頭部CTを行った。左後頭葉の梗塞巣の部位に硬膜下血種があった。梗塞巣で軟弱な脳組織になっているためか、脳実質を圧迫している。頭痛・嘔気は訴えない。

 夕の内服分を点滴静注で入れることにして、イーケプラ500mg点滴静注を追加すると、けいれんは治まった。入院にして、イーケプラ点滴静注で経過をみることにした。硬膜下血種の経過をみて、脳外科紹介を考慮する。

 抗凝固薬は中止して経過をみるしかないので、それで血栓塞栓症が再発する可能性を家族に説明した。複雑性(意識障害)になったり、全般化しないのが、むしろ不思議な感じがした。

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

精神科へ紹介してよかった

2021年04月07日 | Weblog

 糖尿病で通院している68歳女性は、家族の希望で精神科病院に紹介していた。

 食欲不振・嘔気が続いて検査をしたが、これといった異常はなかった。夫が前立腺癌でがんセンターに紹介されたという事情もあった。もともと心気症傾向があったが、うつになっていた。

 当院に入院して、抗うつ薬はSSRIのセルトラリン25mgから開始して、50mgまで増量した。症状は軽快して、外来治療を続けていたが、心気的な訴えが多く、いつもは一人で来ている外来に娘さんが付いてきた。

 精神科病院に紹介していほしいという。市内には精神科病院があるが、主に認知症を診ていて、なかなか紹介しようとしても行きたがらないし、病院自体も受診の敷居が高い。

 希望されたのは、他の町にある病院だった。そこは当市役所の精神医療相談に医師を派遣していて、受け入れがいい病院だった。家族が車で連れていけるなら、専門医の方が好ましい。すぐに診療情報提供書を書いた。

 

 今日は予約外で受診した。頭全体がもや~と熱感があり、重苦しいという訴えだった。数年前から続いていて、アセトアミノフェン屯用を時々処方していた。(精神科病院でもSG顆粒屯用が出ていた)

 昨日アセトアミノフェンを飲もうとしたら、咳き込んでしまったという。それで飲むのが怖くなったが、頭重感が続くのでどうしたらいいかと、受診したのだった。

 最近表情が良くなっていたが、今日は表情が硬く、暗い雰囲気だった。それでも話を聞いているうちに、すこしずつ薄い笑顔は出てきた。(再来に最後に時間をかけて診ていた)

 最近の処方を見せてもらうと、セルトラリンは75mg/日に増量されていた。他にはアルプラゾラム2錠朝夕、ブロチゾラム0.25mg就寝前が出ていた。ちょっと苦戦している?。

 近々精神科病院も受診するので、相談するように伝えた。頭痛の時の薬がほしいというので、エチゾラム(デパス)0.5mg錠を屯用としてちょっとだけ出した。

 入院すると安静する方で、うつ病としての入院治療の可能性もあり、やはり紹介してよかった。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

リウマチ性多発筋痛症?

2021年04月06日 | Weblog

 先週土曜日の早朝に発熱・四肢痛の83歳男性が救急外来を受診していた。

 金曜日の当直は外科医で、朝(午前8時過ぎ)になってから連絡が来た。コロナの検査をした後に、検査したら肺炎があるという。入院にしてセフトリアキソンを開始したので、後は内科でみてくれ、ということだった。

 「当直の深夜~早朝の内科入院は連絡なしで入院にして、こんな治療でお願いします」とマニュアルを外来に置くことにした。これまでも常勤医はわかっているので、朝病院に来た段階で、「入れておいたよ」と言われていた。

 はっきりした記載がないと、いつ連絡するか、入院させていいのか迷うので明文化した。判断・対処に困る時は、すぐ連絡してもらってかまわない。

 

 病院に行って、病棟の患者さんを診に行った。認知症のない、しっかりした方だった。呼吸器症状はない。白血球7600・CRP11.1と炎症反応は中等度の上昇だった。

 胸部CTを見ると、両側肺の背側に淡い陰影があり、肺炎様にも見える。ただしうっ血というか、横臥した際に物理的に水分が背側に来ているようでもある。肺炎ではないのでは。

 

 四肢痛が気になって、詳しく訊いてみた。2月半ばに歩行がつらくなったそうだ。本人は両下腿が痛いと言うが、下腿に所見はなく圧痛もない。整形外科クリニックを受診して、脊柱管狭窄症といわれた。理学療法で通ったが、効果はなかった。

 3月30日に38℃の発熱があった。その後は37.2~37.5℃の発熱が続いていた。それまでできていた両下肢の挙上がつらくなった。

 かかりつけの内科クリニックに連絡すると、リモート診療で症状を訊いて、経口抗菌薬(セフカペン)とカロナール500mg錠を処方されたが、効果はなかった。

 両上肢を挙上しようるとすると、肩~両上腕が痛い。両上腕に軽度だが圧痛(把握痛)がある。下肢はやはり両下腿が痛いと訴えるが、下腿にはまったくがなかった。両大腿に把握痛はない。

 発熱が始まる前から、寝返りや(ふとんに寝ていて)起き上がりがひどくなったので、ベットを購入していた。

 

 症状からはリウマチ性多発筋痛症(PMR)を想定したが、合うところと合わないところがあり、確定し難い。

 入院時に血液培養2セットが提出されていた。培養結果が出るまで、あるいは切りよく5日か1週間は、セフトリアキソンを継続することにした。抗菌薬併用からいいかと思って、プレドニンも開始した。

 月曜の検査ではCRP6.2と低下していた。血沈85mm/時と高値で、Dダイマー2.8・血清フェリチン582(血清鉄は低下)と肺炎では出ないような検査値だった。

 

 上肢の挙上が良くなって、下肢の症状もとれたという。もう少し、抗菌薬とプレドニン併用で経過をみることにした。PMRはmimicがいろいろあるので難しい。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

骨髄腫腎myeloma kidney

2021年04月05日 | Weblog

 別の内科の先生が外来で診ていた78歳男性が一気に腎機能が悪化した。

 高血圧症・糖尿病で通院していて、血圧・血糖は安定していた。糖尿病はDPP4阻害薬(トラゼンタ5mg)とメトホルミン500mg/日で、HbA1cが6.0%前後だった。高血圧症はARB(アジルバ20mg)とCa拮抗薬(アムロジピン2.5mg)と標準的な処方だった。

 腎機能は1月が血清クレアチニン1.15mg/dl、2月が1.45mg/dlで、3月が3.12mg/dlと上昇した。高蛋白血症もあった。腎臓内科外来に来ている先生(大学病院から出張)に相談した。

 血清免疫電気泳動で多発性骨髄腫と診断された。血液内科への紹介を予定していたが、2週間後に血清クレアチニンが15.01mg/dlと一気に悪化した。

 急遽、入院で緊急透析用のカテーテルが挿入されて、血液透析が開始された。1週間で透析が軌道に乗ったところで、大学病院血液内科へ転院予定となり、担当医も一息ついたところだった。

 ところが、この週末に40℃の高熱が出てしまった。血液培養を採取して、抗菌薬を開始された。カテーテル関連血流感染症のようだ。転院延期になったが、汎血球減少症もあり、原疾患の治療を早期に開始する必要がある。解熱後は早急に大学病院にお願いしたい。

 

 「骨髄腫腎myeloma kidney」という言葉は有名だが、実際に見たのは初めてだ。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

椎間関節炎?

2021年04月04日 | Weblog

 先週の金曜日の当直帯で、急性腎盂腎炎の53歳女性が入院した。夕方内科クリニックを受診して、急性腎盂腎炎疑いとして当院に紹介された。

 金曜日の当直は眼科医で、尿培養と血液培養2セットの提出を依頼して、セフトリアキソンで治療を開始してもらった。土曜日は日直で病院に出ることなっていた。

 土日は発熱が続いて、月曜日に解熱した。血液検査の炎症反応上昇と尿所見は軽快していたが、尿培養で菌が検出されなかった。(血液培養は中間報告で陰性)

 入院時に肝機能障害があり、発熱と関連して胆嚢炎・胆管炎が疑われたが、画像では異常を認めなかった。再検では肝機能は改善していた。(総胆管結石が嵌頓して排石した可能性も考慮していた)

 水曜日に再度発熱があった。間違いなく腎盂腎炎とはいえない経過だったので、どういうことかと困惑した。月曜日から腰痛を訴えていた。脊柱正中ではなく、その右脇で腸骨の上だった。起き上がる時に痛いと言う。叩打痛もあった。

 木曜日に正常化していた白血球が再度上昇した(CRPはすぐに反応しないので、前回より低下)。以前に診た椎間関節の偽痛風を思い出して、腰椎MRIを撮影した。

 T2と脂肪抑制T2で椎間関節周囲に高信号があるようだ。放射線科の読影レポートは異常なしだったが、臨床的にもその部位に所見があり、炎症と判断された。

 

 木曜日の昼からNSAIDs(セレコキシブ)内服を開始すると、夕方から解熱して、金曜日には腰痛も軽減したという。効いているようだ。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新型コロナのワクチンで発熱

2021年04月03日 | Weblog

 火曜日に新型コロナウイルスの2回目のワクチンを受けた。

 1回目の時は注射部位が翌日から少し腫れて痛みが続いたが、3日で治まった。今回は翌水曜日の注射部位の腫れと痛みは1回目と同様だった。

 1回目と違うのは、水曜日の午後に倦怠感が強かった。月曜日からCOVID-19の急な入院や、保健所依頼のPCR検査が多かったことなどで疲れたのかと思っていた。

 午後5時を過ぎて、熱感があるのに気づき、体温を測定すると37.6℃あった。倦怠感も含めて、ワクチン接種の副反応だった。

 翌木曜日の朝は体温36.9℃で、平熱が36.6℃なので、まだ若干発熱があったことになる。倦怠感はほぼ感じないようになっていて、普通に勤務した。

 

 2回目のワクチン接種の方が副反応が2~3倍出ることになっている。当院では3月8日~3月19日が1回目のワクチン接種で、3月29日~4月9日が2回目のワクチン接種になる。

 発熱する人が多く、急性期病棟では看護師3名が発熱で休んだ。38℃以上の発熱も多い。まだわからないが、印象では30%以上(半数?)で発熱があるようだ。

 短時間の咽喉頭違和感(イライラした感覚)、蕁麻疹が出た人たちもいた。幸いに今のところ、アナフィラキシーショックはいない。

 

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

食欲がある高齢者は治る

2021年04月02日 | Weblog

 先週の月曜日の夕方に発熱外来を担当していた耳鼻科医から、肺炎の93歳女性の入院を依頼された。

 型通りに新型コロナウイルスの抗原定性検査とインフルエンザ迅速試験のセットを提出して、陰性確認後に、通常の画像検査・血液検査を提出していた。(肺炎がある場合は、抗原定性検査ではなく院内にあるPCR検査を提出している)

 患者さんは近くの施設に入所していた。簡単な会話はできるが、ベット上の生活で歩行はできない。介助で車いす移乗して、セッティングすれば食事摂取できるようだ。

 ちょうど施設の嘱託医(父親の後を継いだ、3代目の先生)が回診に来ていた日で、その日の午後から急に高熱が出て、呼吸促拍となっていた。その先生の紹介で当院受診となった。

 胸部X線・CTで左肺野に広範に浸潤影を認めた。酸素吸入が開始されていて、肺に基礎疾患はないので、酸素2L/分で飽和度は保たれていた。

 白血球6100・CRP10.6と炎症反応の上昇を認めた。CRPの値からみて、数日経過しているはず、と推定された。状況的には誤嚥性肺炎だろうか。

 娘さんが来ていた(93歳の母親の娘なので、それなりの年齢)。姉妹も体調が悪く、困っていたところに母親も救急搬入となって、あわてていた(ご本人も精神科に通院しているそうだ)。

 今いまではないが、治療に反応せず悪化する可能性もあることを説明して、心肺停止時はDNRの方針で同意してもらった。(胸骨圧迫1回で複数の肋骨が胸骨から外れるだろう)

 入院後も発熱が続き、3日後の検査で、白血球9800・CRP20.4と悪化していた。酸素吸入量は同じで、増量はしていない。胸部X線(ポータブル)は入院時よりも少し含気がみられるかもしれない。

 抗菌薬は標準的なスルバシリン(ABPC/SBT)を使用していた。発熱の持続・炎症反応の増悪から抗菌薬の変更も考えたが、臨床的には悪くない気がする。

 誤嚥の可能性が高く、絶食にしてとろみ水少量は可としていたが、入院後に空腹をずっと訴えていた。次回検査まで、食事は出しにくいと思ったが、看護師さんから頻回に食事の要求が来ますといわれた。

 聴覚言語療法士に依頼して嚥下訓練をゼリーで開始したばかりだったが、嚥下調整食3を出して、むせる時は中止とした。

 案外むぜはなく、その後解熱してきた。1週間目の検査で、白血球6500・CRP5.6とぐっと改善した。胸部X線(ポータブル)でも明らかに改善していた。(1週間でこの浸潤影の改善は驚異的)

 抗菌薬10日投与で中止したが、7日で中止でもよかったのかもしれない(CRP2.0を確認して中止した)。また今回も「食欲のある高齢者は治る」が証明された。 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

不安な新年度スタート

2021年04月01日 | Weblog

 医局秘書(派遣)さんから、3月末で転勤した若い内科の先生宛の診療情報提供書を見てください、と言われた。

 患者さんは急性膵炎・総胆管結石疑いの30歳女性だった。昨年11月に地域の基幹病院の消化器内科に転送していた。

 10月24日から心窩部痛・背部痛があり、2か所の内科医院を受診していた。11月9日に腹痛が増悪して、動くのも大変になって当院内科を受診した。

 検査では、炎症反応の上昇(白血球13900・CRP0.4)、肝機能障害(AST 379・ALT 428・ALP 306・GTP 487・総ビリルビン4.7)、血清アミラーゼの上昇(2165)を認めた。(経過が長いわりにCRPの上昇が軽度だった)

 腹部単純CTで膵臓の腫脹・周囲浸出液貯留、胆嚢内結石、総胆管拡張を認めた。総胆管結石は指摘し難いが、肝機能上昇・総胆管拡張・飲酒歴なし、からは総胆管結石による急性膵炎発症と判断される。

 転送後は緊急でERCPが行われて、総胆管結石を摘出していた。大量輸液・蛋白分解酵素阻害薬(ガベキサート・ウリナスタチン併用)・抗菌薬投与が行われた。

 処置の翌々日に腹部所見の悪化・炎症反応の悪化があり、腹部造影CT再検で膵2区域の造影不良を認めて、浸出液も腎臓下極以遠へ及んだそうだ。

 若年者の重症急性膵炎として、大学病院消化器内科に転送となっていた。幸いにも大学病院転院後は症状軽快して、約2週間で退院になった。(特別な治療はしていない、と言うか膵炎には特別な治療もない)

 その後大学病院の外来に通院して、12月に当地域の基幹病院に回された。外来経過良好でこの3月で終診になりました、という報告だった。

 当院で対応したのは2時間くらいで、診断をして転送しただけなので、そんな経過になっていたとは想定外だった。

 

 内科の若い先生は、今日転勤先の病院に出勤したはずだ。今度の病院は当院よりもさらに小規模な病院で、やはりその地域の基幹病院からの療養転院を引き受けるような病院だった。自治医科大学の9年間の義務年限もけっこう大変だ。

 

 4月1日新年度がスタートした。当方は何も変わらないが、今年度の当院内科の体制は昨年度よりさらに手薄になる。事情は分からないが、院長先生はなぜか名誉院長扱いになり(定年ではない、権限をはずされた?)、院長不在状態になった。

 財政面でも運営面でも不安なスタートだった。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする