先週木曜日の当直の時に午後10時すぎに73歳男性が救急搬入された。前日に退院したばかりだった。
1か月前に左下葉背側の肺炎で入院していた。腎臓内科の先生(透析診療+一般内科)が担当して、抗菌薬投与で軽快していた。経口摂取が進まず、長い入院になったようだ。
やっと退院となったが、退院したその日は朝昼と食事摂取がほとんどできていなかった。発熱はなく、酸素飽和度の低下もなかったので予定通りの退院としたのだろう。
この患者さんは施設入所中なので、その施設に戻っていた。そこは精神遅滞の方たちが入所している施設だった。高齢になって認知症になった方たちの施設ではない。
救急隊は酸素6L/分で搬入したが、酸素飽和度が90%に満たなかった。酸素は10L/分に上げても、やっと90%前後だった。痰と唾液が多く、当直の看護師さんが頻回に吸引した。
胸部X線・CTで確認すると、肺炎像は前回と同じ左肺下葉背側だった。ただし右肺と左肺の上葉にも淡い陰影が散在している。発症して間もないので、この淡い初期の陰影が広がって来る可能性があった。
家族といっても、この患者さんは妻子がなく、責任者は隣町の兄夫婦になっていた。夜間は来院できないというので、電話で病状を説明した。前回入院時に病状悪化時DNRになっていたので、それも確認した。
来れるかどうかわからないと言っていたが、翌日に兄夫婦が来院した。実の兄は、患者さんと同様の痩せた小柄な方だった。不安そうな顔をしていたが、ほとんどしゃべらなかった。
そのかわりに、その妻(義理の姉)はよくしゃべった。患者さんは精神遅滞があり、簡単な肉体労働ならばできるので、頼み込んで入れてもらった。それでもいろいろと職場でうまくいかないことがあって、(兄夫婦が)苦労したという。60歳代からは認知症の要素も加わって、10年前に今の施設に入所となった。
今回も肺炎が治らないかもしれないことを説明した。おそらく退院前にすでに誤嚥していたので、実際は院内肺炎ということになる。前回よりは治りにくい。
また肺炎がうまく軽快すれば嚥下訓練を行うが、経口摂取は困難かもしれないと説明した。その際にどうするかということも伝えておいた。
高カロリー輸液などは希望しない、という。末梢の点滴だと1~2か月しかもたないかもというと、それでいいと言われた。全部妻が決めてしまい、実の兄である夫は何も言わなかった。
入院後、金土日曜と次第に解熱して、酸素飽和度も改善してきた。月曜日にはしっかり開眼している(発語はもともとほとんどない)。また嚥下訓練を行ってみることにした。