犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

ゲゲゲの調布発信
犬のこと、人の心身のこと、音楽や自作のいろいろなものについて

樹海の町

2021年05月01日 | 毎月馬鹿
富士山麓の青木ヶ原樹海では、方位磁石が正しい向きを指さないので
方向を見失い、遭難するという。
戻れなくなることが分かっていて、あえて樹海に入る人も
後を絶たないそうだ。

磁気を持って粘り気の強い溶岩が流れてきて
ゆっくりになったところで先の部分が冷えて固まり、
後から来たものがまるで布団を三つ折りに畳む時のように重なる。
その時には既に布団は磁気を帯びている。
三つ折りになると、真ん中の部分は逆方向の磁気を持っていることになる。
単純化すると、そういうことが起こっているのだというような
説明を読んだことが有る。

樹海が取り立てて言われるのだから、
これは富士山という規模の火山が在ってこその現象なのだろう。
そうそうしばしば有ることではない。

お思いだろうが、そうでもない。

実は、私の住んでいる町にも同様の現象が起きている。



私の住んでいる深大寺南町は、30年あまり前まではもっと大きな
深大寺町という町であった。
地番改正だかなんだかで、国中で町の統廃合が行われ、
古い地名が消えていった。

深大寺町はしかし、たしかに不便であった。
東京郊外にしちゃたいへん広い町だが丁目番地が無く
1000だか2000だかまで番地が有った。

農地が多かったところ宅地化が進み、
番号の振り方が家々の有り方とそぐわなくなってきていた。

深大寺町だったところは、深大寺北町、深大寺元町、深大寺東町、深大寺南町
の四つに分けられた。
むむ。
まあ、たしかに、深大寺町の北の端は北町だし、東端は東町になっているし、
南端は南町に含まれている。
深大寺町が深大寺町である所以たる深大寺の在る所は深大寺元町で、
これも納得が行く。



同じ南町に住む友人Tちゃんの叔父さんが初めて来る時に、
間違って東町の同じ丁目番地の所へ行ってしまったそうだ。
不注意とも思えるけれど、取り違え憶え違え見間違えなど簡単に起こる。
同じ町名を冠に四つも町の名前を作るのは、
混乱を招くだけではないだろうか。

Tちゃんの話を聞いて私も思い出すことが有る。
数年前に、知人の年配男性が私の家を訪ねて来るのに、
やはり間違って深大寺東町の同じ丁目番地の所に行ってしまった。
「着いたらラブホテルでさー。
おかしいと思ったんだけどカーナビ見ても間違い無いし。
こりゃあ、す~さん俺のことを誘ってんのかな、って思った。」
どあほう



ベテランの郵便配達のおじさんに聞いてみた。
私が子どもの頃からずーっとここいらの郵便配達をしている。
立派な髭をたくわえているのがとても印象的だ。

「そうそう。宛先に配達に行ってみても、無いのよね、
で、試しに東町の同じ番地に行ってみると、宛先の名前の家が有るんだよ。
昔はそれで配達してきちゃったんだけど、今はそれはできないね。
もし同姓同名の他人だったらダメだし。
だから[あて所に尋ねあたりません]ってハンコ押すことになるね。
あと、仕分けの段階ではじかれる場合も有るよ。
確かに深大寺町は他と比べて多いかもなあ。」

でしょ?



深大寺北町、深大寺東町、深大寺南町が有って
深大寺西町がなぜ無いのかと思われるかもしれない。

これは、分かる。
調布市には、市の西の端っこに西町という町が有るのだ。
これと紛らわしいので深大寺西町というのは設けなかったのであろう。

だったら紛らわしい町名は紛らわしいと分かっていそうなもんなのに。



というわけで、市に進言してみた。
深大寺北町ではなく山野(さんや)、
深大寺東町ではなく野ヶ谷(のがや)、
深大寺南町ではなく絵堂(えどう)と
古い字名を使ったらどうか。
と。
深大寺元町は深大寺町で良かろう。

古くせえのはウケが悪いかもしれないので、それぞれ
深大寺北町ではなく北野台、
深大寺東町ではなく上ノ原、
深大寺南町は柏野と
小学校の名前を町名に用いる案も考えた。考えてないか。

市役所に行っても相手にされないかタライ回しにされるだけだろうと思ったので、
市長宛てに投書した。
思いがけないことに、後日返事が来た。
本人が書いたとまでは思わないけれど、こんなことに対応するとは思ってもいなかった。



現行町名は、位置関係もなんとなく納得いかない。
私の住んでいる南町よりも西側の方にも東町は広がっている。
そして、よく調べると、北町よりも東町のほうが北まで伸びている。

北町と東町と南町と元町は、ある交差点で十字に句切られている。
そこで、北町よりも北に南町は無く、南町より南に北町は無い。
これだけは整理して言える。

ただなんとなく納得は行かない。

庭仕事をしていたら、通りがかった年配の男性が立ち止まる。
自転車から降りて、なにか様子がおかしいと思ったら、
「う、あ、あのー、ここは何町ですか?」
という。
南町ですよ。
「東町はどっちですか?」

東はあっちです。
と、私は北を指差した。

彼は生きて還れるだろうか。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 夾竹桃戦争 | トップ | 方角を知る »

コメントを投稿

毎月馬鹿」カテゴリの最新記事