雨のち曇り

[あらすじ] 10年あまり乗った愛車エスクード、先週ついに引退。

乗りなれた車を手放すのはさみしいものだ。
今年の夏、２頭飼っている犬のうち１頭が世を去った。
エスクードに乗り始めたのは、犬を飼い始めた時期と重なる。
車と犬と共にあった11年を思う。

「金曜日に祖師谷のお友達の家にみんなで集まるから、連れて行って」と、
老母は廃車のことをすぐに忘れて言ってくる。
近隣の友人Ｍに頼んで、車を借りる。

エスクードは私が山へ行くために、林道もへいちゃらで入れるように選んだ車で、
老母には乗り込みにくい。
その点、おばあちゃんの介護に明け暮れた友人Ｍの選んだ車は車高が低い。
車に生き方は表れる。

借りた車に乗って、カーラジオをつけると、ＡＭのＮＨＫに合わせてあった。
友人ＭにはＮＨＫ教育を聞く趣味があるようだ。
私も嫌いでない。
つけた途端アナウンサーの声が「ウェイン・ショーター」と言った。

ＡＭのＮＨＫ教育でもおしゃれなジャズを流すもんだな、と思った刹那、
♪タ～～ラﾘﾗﾘﾗタ～ﾘラ～♪
と、胡弓のメロディー、コテコテの中国音楽。
なんでじゃ！
何を聞き間違ったのやら。

何を聞き間違ったのかちゃんと知りたくなって、
帰宅してから番組表を調べてみたが、その時間は「中国語放送」
ということしかわからなかった。
そこで、以前の職場の同僚だった台湾出身のオバさんに話をしてみたが、
なんだかよくわからないまま、
「須山ちゃんひさしぶり、元気ー？」と喜ばれてうやむやになった。

そういえばと思い出して、メーカー勤務の友人に聞いてみた。
たしか上海工場にしょっちゅう出張していたはずだ。
すると、中国語で「雨のち曇り」のことを
「ウェーインシャオター」と言うのだそうだ。
「ター」のところは、「タハー」というような感じで、息をともなう発音だ。
ラジオをつけた瞬間、どこかの天気予報を放送して、
次の番組に切り替わる音楽が掛かったのだろう、ということだった。

納得。