前の飼い犬ジーロくんが8月末に息を引き取った。
その4週間後には保護団体に犬を見に行った。
次には鼻面の黒い、立ち耳の犬が飼いたい。
マズルの黒い犬がなんともかわいいと思うけれど、
今まで飼った犬に鼻黒はいなかった。
複数の犬を飼いたいので、
他の犬とも一緒に過ごせる性格の犬が良い。
よその犬や人を咬んでしまうと困るので、
攻撃的でない、おとなしい性格の犬が良い。
私が一人で世話をしきれる程度の体格、
15㎏までくらいの中型犬が良い。
そういう意味では、仔犬は不都合だ。
どんな大きさに育つか、どんな性格になっていくか、
見極めが難しい。
成犬を選ぶことにした。
※
2ヶ月経って、だいぶ自分の名前に慣れてきたが、
呼んでもなかなか反応はしない。
臆病から、部屋の真ん中のマットに寝てばかりいて、
キッチンの私の席のほうへはまるで来ない。
まあ、慣れてくれば変わるだろう。
保護犬との付き合いには年単位の時間がかかることは
覚悟の上だ。
※
前の飼い犬ジーロくんには、きょうだいがいた。
初め、母犬と7匹のきょうだいをウチで預かった。
そのうちの仔犬2匹を飼うことにしたのだ。
それまでは成犬をもらうことばかりで、私は仔犬を飼ったことが無かった。
仔犬から育てることを、一度は経験したかった。
もう一匹はメス犬で、きょうだいの中でも一二を争うほど、気が強かった。
一方のジーロは、きょうだいの中でもビリかブービーかというほど、気弱で控え目だった。
そんな対照的な二匹を飼うことになったのだ。
わづか生後5ヶ月で、血飛沫をあげる大喧嘩をした。
それまでは二匹で一つの段ボール箱に入って重なり合って寝ていたのに、
喧嘩の日からは別々に寝るようになった。
かわいかった仔犬時代の終わりは早かった。
それからは、二年に一回くらい本気の喧嘩になった。
いつもいつもなんでもかんでも譲っているジーロの
堪忍袋の緒が切れた時に喧嘩になるのだ。
ジーロが引けば喧嘩にはならない。
ジーロがブチ切れると喧嘩になる。
喧嘩になれば、ジーロは負ける。
ブチ切れてしまっているから、無暗に攻撃する。
メス犬カバサは、首の回りの皮がダブダブで、
噛まれてもヘイチャラだった。
だから、ジーロが攻撃で疲れた頃にカバサが反撃して、
ジーロはフラフラになって負けてしまう。
生まれながらの防具がカバサの強さのもとだった。
日常は全てカバサの支配となった。
冬なら暖かい場所、夏なら涼しい場所は、カバサが優先的に寝た。
自分の餌やオヤツを食べ終わったら、ジーロの分を奪おうとした。
ボールを投げてやっても、取るのはカバサであり、
ジーロは周りで走るだけであった。
カバサの寝ている横をジーロが通ろうとすると、うなって脅された。
しばしば脱走した。
脱走したカバサを捕らえるのは難しかった。
私はカバサの脱走の悪夢に度々うなされた。
そういう恐怖支配の生活だったが、
11歳の誕生日の5日前に、カバサが世を去った。
心臓に問題が有ったのか呼吸が速くなり、最期は黄疸も出ていた。
体重10㎏台の小柄な中型犬にしては、早い死だった。
太く短い強烈な命だった。
2016年7月20日没。
※
容態の悪くなったカバサに、私はずっと付き添っていた。
私は犬の垂れ耳をめくって、言って聞かせた。
もし、私が飼い主で良いのなら、また会おう。
いつどこで生まれてもきっと見つけてやるから、
憶えておいで。
あんまり遠く、外国に生まれたりしたら難しい。
近いほうが見つかりやすいけれど、日本の中ならなんとかなるだろう。
憶えていたかったら、あの世で”忘却のスープ”を飲まなければいい。
でもあんたはがっついているから、飲んでしまうかもね。
どちらでもいい。
飲んでもいい飲まなくてもいい。
憶えていてもいい忘れてもいい。
また私に飼われたいと望んでもいい望まなくてもいい。
いづれにしろ、縁が有ったら、また会おう。
年を取って老衰して死ぬ者は、眠るように逝くという。
若くして死ぬ者は、もがき苦しむという。
少し、早過ぎる死に不満だったのだろうか。
カバサは、息を引き取る直前に、
何度か鳴き声をあげた。
※
保護団体から鼻黒の犬を引き取ることになった。
「うみ」という名前で呼ばれていたのを、
「ウーゴ」と変えた。
広島の本部で保護されて、向こうの施設で育ち、
今年の夏になって東京に移送されて来た。
マズルが黒い。
立ち耳だが、右耳が垂れている。
「気の合わない犬に咬まれてケガしたんです」
ジーロもカバサに咬まれて耳に傷が有った。
「お口が出ることはありません」
つまり、咬み付くようなことは無い、と保護団体のスタッフは言っていた。
控え目に鳴き声を出すことは有るが、
この2ヶ月、吠えるのを聞いたことが無い。
4歳だという。
保護された時は生後3ヶ月くらいだった、という。
犬を飼い慣れた人なら分かると思うが、
仔犬の月齢は、見るとなんとなく分かるようになってくる。
行動の様子や、表情のあどけなさや、マズルの形や、体格の完成度から、
なんとなく分かる。
犬種による発達度の違いは有るのでなかなか難しいが、
おおよそのところは分かる。
保護された日付をスタッフに聞いてみた。
その日から3ヶ月引いたところを誕生日として考えようと思ったからだ。
「うみ」の資料にも、保護の日付が書いてあった。
2016年10月18日だという。
この時、生後3ヶ月だったのだから、産まれたのは7月18日頃ということになる。
※
少々の物音にもビクつくウーゴは、勝気なカバサの性格とは似ても似つかない。
7月20日に死んだカバサは、肉体を離れた解放感から飛ぶように走ったかもしれない。
そこで産褥にあるメス犬を見付けて、ポンとその腹の中の仔犬に飛び込んだのではないか。
今日も部屋の真ん中で寝ているウーゴを呼んでみた。
「カバサ」
ウーゴは飛び起きて、怖くて入れなかったはずの台所の私のもとに駆けて来た。
その4週間後には保護団体に犬を見に行った。
次には鼻面の黒い、立ち耳の犬が飼いたい。
マズルの黒い犬がなんともかわいいと思うけれど、
今まで飼った犬に鼻黒はいなかった。
複数の犬を飼いたいので、
他の犬とも一緒に過ごせる性格の犬が良い。
よその犬や人を咬んでしまうと困るので、
攻撃的でない、おとなしい性格の犬が良い。
私が一人で世話をしきれる程度の体格、
15㎏までくらいの中型犬が良い。
そういう意味では、仔犬は不都合だ。
どんな大きさに育つか、どんな性格になっていくか、
見極めが難しい。
成犬を選ぶことにした。
※
2ヶ月経って、だいぶ自分の名前に慣れてきたが、
呼んでもなかなか反応はしない。
臆病から、部屋の真ん中のマットに寝てばかりいて、
キッチンの私の席のほうへはまるで来ない。
まあ、慣れてくれば変わるだろう。
保護犬との付き合いには年単位の時間がかかることは
覚悟の上だ。
※
前の飼い犬ジーロくんには、きょうだいがいた。
初め、母犬と7匹のきょうだいをウチで預かった。
そのうちの仔犬2匹を飼うことにしたのだ。
それまでは成犬をもらうことばかりで、私は仔犬を飼ったことが無かった。
仔犬から育てることを、一度は経験したかった。
もう一匹はメス犬で、きょうだいの中でも一二を争うほど、気が強かった。
一方のジーロは、きょうだいの中でもビリかブービーかというほど、気弱で控え目だった。
そんな対照的な二匹を飼うことになったのだ。
わづか生後5ヶ月で、血飛沫をあげる大喧嘩をした。
それまでは二匹で一つの段ボール箱に入って重なり合って寝ていたのに、
喧嘩の日からは別々に寝るようになった。
かわいかった仔犬時代の終わりは早かった。
それからは、二年に一回くらい本気の喧嘩になった。
いつもいつもなんでもかんでも譲っているジーロの
堪忍袋の緒が切れた時に喧嘩になるのだ。
ジーロが引けば喧嘩にはならない。
ジーロがブチ切れると喧嘩になる。
喧嘩になれば、ジーロは負ける。
ブチ切れてしまっているから、無暗に攻撃する。
メス犬カバサは、首の回りの皮がダブダブで、
噛まれてもヘイチャラだった。
だから、ジーロが攻撃で疲れた頃にカバサが反撃して、
ジーロはフラフラになって負けてしまう。
生まれながらの防具がカバサの強さのもとだった。
日常は全てカバサの支配となった。
冬なら暖かい場所、夏なら涼しい場所は、カバサが優先的に寝た。
自分の餌やオヤツを食べ終わったら、ジーロの分を奪おうとした。
ボールを投げてやっても、取るのはカバサであり、
ジーロは周りで走るだけであった。
カバサの寝ている横をジーロが通ろうとすると、うなって脅された。
しばしば脱走した。
脱走したカバサを捕らえるのは難しかった。
私はカバサの脱走の悪夢に度々うなされた。
そういう恐怖支配の生活だったが、
11歳の誕生日の5日前に、カバサが世を去った。
心臓に問題が有ったのか呼吸が速くなり、最期は黄疸も出ていた。
体重10㎏台の小柄な中型犬にしては、早い死だった。
太く短い強烈な命だった。
2016年7月20日没。
※
容態の悪くなったカバサに、私はずっと付き添っていた。
私は犬の垂れ耳をめくって、言って聞かせた。
もし、私が飼い主で良いのなら、また会おう。
いつどこで生まれてもきっと見つけてやるから、
憶えておいで。
あんまり遠く、外国に生まれたりしたら難しい。
近いほうが見つかりやすいけれど、日本の中ならなんとかなるだろう。
憶えていたかったら、あの世で”忘却のスープ”を飲まなければいい。
でもあんたはがっついているから、飲んでしまうかもね。
どちらでもいい。
飲んでもいい飲まなくてもいい。
憶えていてもいい忘れてもいい。
また私に飼われたいと望んでもいい望まなくてもいい。
いづれにしろ、縁が有ったら、また会おう。
年を取って老衰して死ぬ者は、眠るように逝くという。
若くして死ぬ者は、もがき苦しむという。
少し、早過ぎる死に不満だったのだろうか。
カバサは、息を引き取る直前に、
何度か鳴き声をあげた。
※
保護団体から鼻黒の犬を引き取ることになった。
「うみ」という名前で呼ばれていたのを、
「ウーゴ」と変えた。
広島の本部で保護されて、向こうの施設で育ち、
今年の夏になって東京に移送されて来た。
マズルが黒い。
立ち耳だが、右耳が垂れている。
「気の合わない犬に咬まれてケガしたんです」
ジーロもカバサに咬まれて耳に傷が有った。
「お口が出ることはありません」
つまり、咬み付くようなことは無い、と保護団体のスタッフは言っていた。
控え目に鳴き声を出すことは有るが、
この2ヶ月、吠えるのを聞いたことが無い。
4歳だという。
保護された時は生後3ヶ月くらいだった、という。
犬を飼い慣れた人なら分かると思うが、
仔犬の月齢は、見るとなんとなく分かるようになってくる。
行動の様子や、表情のあどけなさや、マズルの形や、体格の完成度から、
なんとなく分かる。
犬種による発達度の違いは有るのでなかなか難しいが、
おおよそのところは分かる。
保護された日付をスタッフに聞いてみた。
その日から3ヶ月引いたところを誕生日として考えようと思ったからだ。
「うみ」の資料にも、保護の日付が書いてあった。
2016年10月18日だという。
この時、生後3ヶ月だったのだから、産まれたのは7月18日頃ということになる。
※
少々の物音にもビクつくウーゴは、勝気なカバサの性格とは似ても似つかない。
7月20日に死んだカバサは、肉体を離れた解放感から飛ぶように走ったかもしれない。
そこで産褥にあるメス犬を見付けて、ポンとその腹の中の仔犬に飛び込んだのではないか。
今日も部屋の真ん中で寝ているウーゴを呼んでみた。
「カバサ」
ウーゴは飛び起きて、怖くて入れなかったはずの台所の私のもとに駆けて来た。
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