![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1c/50/5a4323d902ae9a426199af47c5e734e1.jpg)
東京に積もった重たい雪もようやく解けた日のこと。
ある公園のわきの道を車で通ったら、園内の竹が
何本も折れて倒れている。
しなやかな竹の葉にも、あの湿った雪は絡み付き
やわらかな茎を割いたのだろう。
竹で細工ものをこしらえるために、青竹を手に入れたいと
思っていた矢先のことだ。
仕事を終えて夜、私は鋸を持って車でそこへ向かった。
よく晴れて、しかし風は強く、冷え込みの厳しい夜だった。
工場の上には、冷たい空に月が冴えざえとした姿で現れていた。
公園の外周は道路、道を挟んで反対側は独り者の住むようなアパート、
並びは工場、園内外周の小道には少し距離がある。
時折ジョギングする人が通るものの、強い風のため、
のこぎりを引く音は周囲には届かない。
折れてしまった公園の竹、このままにしておいても整理して
捨てられるだけだろう。
悪いことをしているわけじゃないと思うけれど、
夜、暗い中で竹を切る人を怪しむ都会人もいるだろう。
人目にはつきたくなかったが、その心配は無かった。
折れている竹は、その小さな竹林の端の方だった。
根元から2~3mのところから、割けて折れ曲がって倒れている。
割けていないところから先を切って、車に積める長さにしていった。
いくらか切って、もうそろそろやめようかもう少し切ろうかと
思っていた頃、足元に何か有ってバランスを崩し、転んでしまった。
竹を斜に切った切り株なんか有ったら串刺しになっちゃうところだった
こわいわ~などと思いながら立ち上がろうとした。
その時、妙な光が目に入った。
竹林の外はすぐに道路で、都会のことだから街灯やら何やらあかりは
たくさんある。
だから竹林にいても、点々と電灯は見えていたのだが、
それとは何か違う。
よく見直した。
光は竹林の中にあるようだ。
遠くの電気の灯りと違って、どこかやわらかい光だ。
周囲を照らすほど強くはなく、ぽっとそこにともっている、という感じ。
何かひかれるものを感じ、私は立ってそちらへ近付いて行ってみた。
近付くにつれ分かったのは、それは一本の竹の根元が光っているのだ
ということ。
これはあれだ。あれじゃないか。
こんなこと話しても誰も信じてくれないだろうと思って、
私は夢中でポケットから携帯を出し、写真を撮った。
しかし、シャッターを切る「ピロ~ン♪」という電子音が鳴った途端。
光は無くなってしまった。
どの竹だったかも、もうわからない。
狐につままれたような、とはこの気持ちだろう。
車に乗って落ち着いてから、私は何度も携帯の画面を確認した。
撮れている。
夢でも幻でもなかったことは、確かだ。
※
毎月一日は法螺話を書いています。
夢でも幻でもなく、法螺です。
ある公園のわきの道を車で通ったら、園内の竹が
何本も折れて倒れている。
しなやかな竹の葉にも、あの湿った雪は絡み付き
やわらかな茎を割いたのだろう。
竹で細工ものをこしらえるために、青竹を手に入れたいと
思っていた矢先のことだ。
仕事を終えて夜、私は鋸を持って車でそこへ向かった。
よく晴れて、しかし風は強く、冷え込みの厳しい夜だった。
工場の上には、冷たい空に月が冴えざえとした姿で現れていた。
公園の外周は道路、道を挟んで反対側は独り者の住むようなアパート、
並びは工場、園内外周の小道には少し距離がある。
時折ジョギングする人が通るものの、強い風のため、
のこぎりを引く音は周囲には届かない。
折れてしまった公園の竹、このままにしておいても整理して
捨てられるだけだろう。
悪いことをしているわけじゃないと思うけれど、
夜、暗い中で竹を切る人を怪しむ都会人もいるだろう。
人目にはつきたくなかったが、その心配は無かった。
折れている竹は、その小さな竹林の端の方だった。
根元から2~3mのところから、割けて折れ曲がって倒れている。
割けていないところから先を切って、車に積める長さにしていった。
いくらか切って、もうそろそろやめようかもう少し切ろうかと
思っていた頃、足元に何か有ってバランスを崩し、転んでしまった。
竹を斜に切った切り株なんか有ったら串刺しになっちゃうところだった
こわいわ~などと思いながら立ち上がろうとした。
その時、妙な光が目に入った。
竹林の外はすぐに道路で、都会のことだから街灯やら何やらあかりは
たくさんある。
だから竹林にいても、点々と電灯は見えていたのだが、
それとは何か違う。
よく見直した。
光は竹林の中にあるようだ。
遠くの電気の灯りと違って、どこかやわらかい光だ。
周囲を照らすほど強くはなく、ぽっとそこにともっている、という感じ。
何かひかれるものを感じ、私は立ってそちらへ近付いて行ってみた。
近付くにつれ分かったのは、それは一本の竹の根元が光っているのだ
ということ。
これはあれだ。あれじゃないか。
こんなこと話しても誰も信じてくれないだろうと思って、
私は夢中でポケットから携帯を出し、写真を撮った。
しかし、シャッターを切る「ピロ~ン♪」という電子音が鳴った途端。
光は無くなってしまった。
どの竹だったかも、もうわからない。
狐につままれたような、とはこの気持ちだろう。
車に乗って落ち着いてから、私は何度も携帯の画面を確認した。
撮れている。
夢でも幻でもなかったことは、確かだ。
※
毎月一日は法螺話を書いています。
夢でも幻でもなく、法螺です。
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