「すいませ~ん」
玄関に来る人がいるので、この声はと駆けつけると案の定、
隣の酒屋のおばちゃんが立っている。
「これ、膾、作ったから。
あとこっちは、柚子を砂糖で煮たの。
このままでもいいけど、お湯でといて飲んでもいいしね。」
膾は鮭のアラを使ったもので、毎年くれる。
いつからか忘れてしまったが、いつの間にかお隣の膾を
アテにして、ウチでは作らなくなっている。
自信のある時は「今年はうまくできたから」と笑顔で、
失敗したと思っている時は「食べてみて、足りなかったらお砂糖足して」
などと言う。
おばちゃんの料理の味の自信は、オニイちゃんが食べてどう言ったか
根拠になっているようだ。
オニイちゃんは酒屋の長男だ。
おばちゃんは秋田の出身だ。
息子たちはおばちゃんに似て色白の美男だ。
おばちゃんが息子を呼ぶと、最後の「ジ」はちょっと「ズ」に近い発音になる。
「セイジがね、いろんなところに飲みに行くけど、
お母さんの作ったものが一番うまい、って言うのよ」とノロケる。
これじゃ嫁は来まい。
でも確かにおばちゃんの作るものは旨い。
一年は膾で始まり、筍ご飯、茗荷ご飯、けんちん汁など、
季節ごとの料理をウチは期待して、すっかり養われている。
玄関に来る人がいるので、この声はと駆けつけると案の定、
隣の酒屋のおばちゃんが立っている。
「これ、膾、作ったから。
あとこっちは、柚子を砂糖で煮たの。
このままでもいいけど、お湯でといて飲んでもいいしね。」
膾は鮭のアラを使ったもので、毎年くれる。
いつからか忘れてしまったが、いつの間にかお隣の膾を
アテにして、ウチでは作らなくなっている。
自信のある時は「今年はうまくできたから」と笑顔で、
失敗したと思っている時は「食べてみて、足りなかったらお砂糖足して」
などと言う。
おばちゃんの料理の味の自信は、オニイちゃんが食べてどう言ったか
根拠になっているようだ。
オニイちゃんは酒屋の長男だ。
おばちゃんは秋田の出身だ。
息子たちはおばちゃんに似て色白の美男だ。
おばちゃんが息子を呼ぶと、最後の「ジ」はちょっと「ズ」に近い発音になる。
「セイジがね、いろんなところに飲みに行くけど、
お母さんの作ったものが一番うまい、って言うのよ」とノロケる。
これじゃ嫁は来まい。
でも確かにおばちゃんの作るものは旨い。
一年は膾で始まり、筍ご飯、茗荷ご飯、けんちん汁など、
季節ごとの料理をウチは期待して、すっかり養われている。
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