とある、名前を聞いたことも無いような言語で、
いくつかの訳文付きの例文が示されている。
それを見て、法則を見付け出す。
そして、問題を解く。
問題は、日本語の文をそのナンチャラ語に訳しなさい、といったもので、
そんなのできっこないよー!と思っても、
案外できるもんなのが、言語学オリンピックの醍醐味なのだろう。
※
難易度低めの問題が、「お試し問題集」としてまとめられている。
https://iolingjapan.org/sample-problems/
まずはここから解いてみる。
最初はインドネシア語だ。
脳裏ではジャルジャルの漫才「国名わけっこ」のテンポ良い掛け合いが響く。
「インド!」「ネシア!」「イン!」「ドネシア!」
静かにしてくれ。私はこれから問題を解く。
6つのインドネシア語と日本語訳が提示されている。
jalan 道
berjalan 歩く
berkeringat 汗をかく
keringatan 汗びっしょり
nafas 息
duri とげ
ほほう。
「歩く」も「汗をかく」も「ber」から始まっている。
この「ber」って部分が動詞なんだろう。
「歩く」という語は、「ber + jalan」つまり「道を〇〇する」で、
「汗をかく」は「ber + keringat」だから、「keringat」のところが「汗」なんだろう。
そして、「keringatan」の意味が「汗びっしょり」ということは、
「an」が「びっしょり」とか「たくさん付いている」とかいう意味なのだろう。
さて。問題はまず「keringatを日本語訳しなさい」という。
へっへ。もう分かってるもんね。「汗」。
次の問題は、「息をする」「とげまみれ」をインドネシア語にしろという。
へっへ。「〇〇する」は「ber」だもんね。「bernafas」。
「まみれ」は「びっしょり」の部分だろう。
じゃあ「durian」か。
解答を見ると、全部正解で気持ちよくさせて貰えるのだが、さらに、
この「durian」「とげまみれ」は果物のドリアンのことだと解説してある。
うわああ。そうか!納得。
今後ドリアンを食べることが有ったら、「とげまみれ」だなと思うだろうけれど、
まずドリアンを食べてみたいとあんまり思わない。
噂によるとすごく臭いらしい。
そんなに臭いのなら「臭い実」とかいう名前が付いても良さそうだ。
しかし「とげまみれ」という名前であるということは、
この実に名付けた人たちは、ドリアンを剥いてみていないのである。
食ってみよう剥いたぜ「くっせええ!」
となっていない。
見た目で名前を付けている。
「とげまみれ」が有った、どうせ臭いから見るだけね。
ということが起きていたんじゃなかろうか。
などと思いめぐらす。
※
イタリア語の作問者は岡本沙紀さんとある。
テレビのクイズ番組「東大王」に出演していた人だな。
これも、解いていく中で既に知っている事と気持ち良く繋がる。
イタリア語 日本語訳
tira giù la leva レバーを下げて
tirami giù 私をこき下ろして
tira su la manica 袖をまくって
tira giù la manica 袖を下ろして
tiraci su 私たちを応援して
問題。「私を応援して」は?
※
トンガ語は数式がいくつか提示されている。
これだけで、数字の呼び名を導き出すことができる。
つまりこれは、言語学と言いながら実は覆面算なのだ。
この問題がトンガ語であるのには理由が有ると思う。
外国語を学習していて思うのは、
日本語の数字の表し方がわりとシンプルなことだ。
「52」は「五十二」、「1984」は「千九百八十四」など、
上の位から順番に、数・桁を言えば良い。
日本語に慣れていると、これが合理的であり、当たり前だと思うけれど、
言語によっては「52」を「十五二」と言ったり、
「80」を「四二十」と言ったりという言語も有る。なんのこっちゃ。
ついでに、28より大きい数は無いとか、3桁の数は無いとかいった文化も有るそうだ。
12進法が混ざる文化も有る。
トンガ語の数字の表し方はいたってシンプルである。
「117」なら「百十七」ではなく、「一一七」と言う。
桁?位?並んでんだから順番に言えばいいじゃーんてなもんである。
だから、覆面算にして解きやすい、というわけだ。
※
ワルピリ語で「Maliki ka parnkami.」は
「犬が走っている。」なんてのを解く。
地球上の一体どこやらとも知らぬ言語で、
「犬が走っている」という自分が毎朝のように見ている光景を表現して
なんだか不思議な気持ちになる。
過去問も解いてみようか。
お試し問題よりぐっと難しそうだ。
難易度で並べ替えたり絞り込んだりできる。お便利なり~
https://kotohazi.netlify.app/problems/
そう考えると、世界はなんとお楽しみに満ちていることか。
バベルの塔バンザイ