東部幹線 自強2064次 [DR3100型車両] (花蓮)
太魯閣號で花蓮にやってきたけれど、太魯閣峽谷は行かない。もちろん行きたいけれど、有名な観光地の割には路線バスの本数は少ないという。太魯閣峽谷はまたの機会にして、鉄道の旅を続ける。太魯閣號と同じ月台の向かいに気動車が出発を待っている。階段の上り下りもなく、乗り継ぎ時間も5分となっている。ずいぶん接続がいい。おかげで花蓮の駅から出る暇もない。行き先は新左營。高雄市の台灣高鐵(新幹線)の駅、左營と同一の場所で乗換駅である。列車の顔つきは特急らしからぬが、座席はリクライニングシートである。後日調べたところ、メーカーは日本車輛製造であった。切符に書かれた席に行くと荷物が置いてある。おや、今度は無座(立席)の人か。すぐに荷物の主がやってきて、他の席に移動していった。気動車の自強號は花蓮を出発。臺東線の旅が始まった。
車票 自強2064次 花蓮→池上
東部幹線 自強2064 花蓮(11:45)→池上(13:37) 45DR3117
花蓮以南の臺東線は単線非電化である。電車の太魯閣號と比べ、ローカル特急はゆっくりと進んでゆく。大正15年全通の臺東線は軽便の軌間762mmだった。宮脇先生はナローゲージ時代の臺東線に乗車されているが、民國71年(1982)に他線区と同じ狭軌1067mmに改軌され、台北方面との直通運転が開始されている。列車は海沿いを離れ、中央山脈と海岸山脈との間の平野を走っている。10年以上前だろうか、テレビ番組で台湾の地勢を紹介していて、気になっていた所である。東西に山があり、伊那谷を行く飯田線の様でもある。お昼時で通路を挟んだ席の女性は花蓮を出る時からお弁当を食べていが、車内にもお弁当の売り子さんがまわってきた。しかしここで弁当を買って食う訳にはいかぬ。前の席の子供2人連れの女性がお弁当を買っている。そしてその女性が話し掛けてきた。例によって中国語が解らないのだが、前の2人掛けを大人1人と子供2人で利用していたのだが、それぞれ弁当を食べるので、おかんだけ自分の隣の席に座ってよいかという事のようだ。無論、構わんので席を勧める。しかし隣で食事をされると腹が減るね。ところが光復という駅で、自分の隣の席の切符を持った男性が乗ってきた。おかんは食べ掛けの弁当を持ったまま席を移っていった。そして隣に腰掛けた男性が弁当を開けている。お腹を空かせながら車窓を眺めている。いつの間にやら北回歸線(北緯23度26分)を通過して温帯から熱帯に入ったようだ。玉里という駅で停車。交換のため少し停車する。いい感じの小駅だが、意外と乗降客は多い。
田圃 (東竹-富里)
窓外には水田が広がる。米どころなのだろうが、その水田は7月も終りと言うのに、田植えを終えたばかりである。薄緑の水鏡に後の景色が映っている。日本なら5月頃の風景。この田植えを終えた水田は二期作目であろう。日本では二期作どころか減反政策で、車窓からの美田が台無しのところが多く見られる。富里を出発し、花蓮縣より臺東縣へ入ってきた。
田圃 (富里-池上)
相変わらず水田が見られる。池上米の産地である。今日の目的地、池上である。池上といっても、東急池上線の駅とは違う。ましてや、池上線♪がどんな歌かも知らん。花蓮からは2時間弱。隣の男性もここで降りる。
自強號で池上站到了
駅の裏にも田圃
臺東線 池上車站 (臺灣省臺東縣池上鄉福文村鐵花路)
切符に「池上站證明章」という青いハンコをもらい、記念に持ち帰る。日本だと「無効 上野」というハンコをもらえば持ち帰ることが出来る。駅の外に出ると、弁当を手に持って、駅舎を背景に記念撮影している人がいる。ここ池上は弁当で有名な場所なのだ。これまで弁当を買わずにいたのは、池上で弁当を買うためである。
駅前風景
池上便當の池上とあって、駅前には複数の弁当屋さんがある。なお、台湾では弁当に便當の文字を使う。飯包ともいう。どこの弁当屋に行くかは決めてある。
全美行 池上總店 (臺灣省臺東縣池上鄉中正路)
全美便當在此喔~
プラットフォームで立売している業者さんである。先ほどの新左營行の停車中にも販売していた。わざわざお店まで行かなくても買えるのだが、買うのは弁当だけではない。店内に冷えた台湾啤酒(ビール)がある。カウンターでこれ1本と便當をひとつ注文する。店内にはテーブルもあり、ここで食事をすることが出来る。鉄道ではなく、車やバイクで立ち寄る人もいるのだろう。お土産品も置いている。店内を見ているうちに便當が出来上がり、代金を支払う。100元札を出してお釣りはなかった。内訳は便當(70元)、啤酒(30元)と思われる。店を出ようとすると、扉の所にいた人が開けてくれる。随分サービスがいい。駅に戻り台東までの切符を買う。希望する列車をメモに書いて差し出す。何か窓口氏に尋ねられるが解らない。するとメモに「7月30日」と書いてきた。「對」と答えると通じたが、「對」は正しいという意味で、「是」(はい)と返答すべきだったか。便當、啤酒を手に月台に戻る。列車が来る前に便當を撮影する。
池上鐵路月台便當(70元)←と思う。
便當にはレトロなデザインの掛紙が。いよいよ開けます。
中身はこんな感じ! じゅるる♪
ご飯の上におかずがぎっしり。そして弁当箱は経木という正当派。お、列車が入ってきたようだ。弁当を仕舞う。樹林行の自強號との交換のため、6分間も停車するので慌てる事はない。月台叫賣(プラットフォームでの立売)にも貴重な時間である。
月台叫賣の売り子さん!
車票 自強1079次 池上→台東
知本行の自強號に乗る。切符の席に行くと通路側の席である。乗車時間は短いし、便當を食べるだけだからいいかと思ったが、窓側の席のじいさんが窓側の席を勧める。切符を確認すると、いいから座れという感じである。そして他の席に行ってしまった。親切なのか、昼間からビールを飲む日本人が鬱陶しいのか。まあいいや。有り難く窓側の席で便當と啤酒をいただく。列車で食べる弁当は格別である。3本の自強號に乗り、台東に到着した。台東といっても上野でもなければ、浅草でもない。昭和11年の時刻表によると、軽便だった台東線は花蓮港(旧花蓮・廃止)-台東(旧台東・廃止)間170.7キロに、急行でも5時間半程度を要している。
東部幹線 自強1079 池上(14:05)→台東(14:42) 40DR2802
自強號で台東站到了
東部幹線 自強1079次 [DR2800型車両] (台東)
この列車のメーカーは東急車輛製造。今朝から日立製作所→日本車輛製造→東急車輛製造の乗継だった。台東でほとんどの乗客が下車して終着駅のようである。 (つづく)
市街地と離れた場所にある駅の裏には山が迫る!
いずれも民國99年(2010)7月30日撮影